中国によるFCレーダー照射問題が面白い展開になっている。中国国防省が全面的に否定し、原因は日本側が中国艦船を執拗に追い回すという挑発が問題の原因だと非難した。中国の政府系新聞では、軍関係者と同様に些細なことを大げさに騒ぎ立てていると非難し、これまた日本の責任としている。外務省の報道官は、日本は情報操作で中国を貶めるような行動をとらず、小細工をやめ、対話で問題を解決するという道を模索すべきと語った。
ここで思い出して欲しい。一昨年の3月、中国国家海洋局所属と見られるヘリが中国の東シナ海において、海上自衛隊の護衛艦に対して最短で90mの距離まで接近したという事件があった。今回のレーダー照射の距離は、艦船と艦船の距離だから単純に比較はできないが3�の距離であった。当然、視認できる距離であるが、衝突コース上になければ違和感はあるが最近の日本と中国との小競り合いの中では異常な距離ではない。しかし、90mというのは多分感覚としては目と鼻の先であり、現実的にはあり得ない接近距離である。更にこの1月にも、中国軍が(対日本だけでなく)米軍機を執拗に追い回し挑発するという問題が話題になった。情報が定かではないが、報道の記述からすれば航空機の後方(必ずしも真後ろとは限らない)から追尾するのであるから、意図的に挑発しているのは明らかである。
また、中国の解放軍のどこかの少将は、日本側が尖閣周辺の日本の領空に接近した中国の航空機に曳光弾を使用することを検討すると発言したとかしていないとこの報道に対し、「これは宣戦布告の1発だ!曳光弾を撃たれたら、中国は別の種類の砲弾で日本に反撃せよ!」と発言していた。この曳光弾というのは、国際法的にも領空侵犯への適切な対処法として、無線や併走などで退去の指示を出し、それでも退去しない航空機に対して併走した前方、すなわち必ず曳光弾が当たらない方向に対して発射するという手順が取られるらしい。つまり、警官が空か地面か、相手と全く異なる方向に威嚇の発砲をするようなもので、現時点では危害を加える意図がないことを明示的に示す行為である。発砲の有無の差はあるが、相手にとっての緊張の度合いで言えば明らかにFCレーダーの照射の方が深刻である。実際、イラク戦争ではレーダーを照射された米軍はレーダー基地を爆撃したし、ベトナム戦争時の米軍の交戦規程ではFCレーダ照射に対抗して攻撃することが認められていたという。だから、これが些細なことだと言うのであれば、曳光弾の使用などさらに些細なことになる。
また、日本が情報戦を仕掛けるという話も2003年に改正された「中国人民解放軍政治工作条例」に「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」の実施を明確に規定している。この世論戦を仕掛けようと推奨している中国は、これまでも様々な形で世論戦を仕掛けてきており、これら全ては中国にブーメランのように返ってくる。ここでの問題は、推定無罪を勝ち取る戦いではなく、中国のマーケットからの外国資本の流出にどの様な影響を与えるかの議論だから、明らかに中国は語れば語るだけドツボにはまりつつある。中国国内向けにはこれで良いのだろうが、この結果国際社会の監視の目が厳しくなり、尖閣に対して中国が強硬な手段を取れば、それを全世界が非難する土壌が出来つつある。この状況では中国は益々無茶な行動を取り難くなるから、日本は現状の冷静な対応を続ければ良い。
なお、素人ながらの感想として、FCレーダー照射の証拠は、部分的にではあるが公開出来るのではないかと思っている。中国国防省の主張の監視用のレーダとFCレーダーは周波数が異なるし、360度を回転しながら照射し続ける監視用レーダーと一定方向に狙いを定めて照射するレーダーは明らかに異なる。多分、アレーアンテナなどで到来方向を明確に推定し、その方向に存在する船舶が日本の艦船の監視用レーダのデータ、航空機による監視、衛星写真などの情報を総合して中国のフリーゲート艦しかないこと、波形が中国軍のFCレーダーの波形と同一であることなど、様々な情報を総合した結果なのだろうが、それらのごく一部の切り出しとして、受信した信号の周波数や受信レベル、時間情報によりレーダー受信が分単位で継続的であったことを限定的に示せば、それ以上の情報は伏せても欧米のメディアは納得するだろう。さらに、米軍に対しては全てのデータを開示して解析を行ってもらい、米軍からも「FCレーダの照射と確認できた」と発言してもらえば良いのである。軍事機密ではあるが、やり方は幾らでもあるはずだ。
なお、森本前防衛相曰く、今回の行動は艦長よりも上のレベルでの指示だということだそうだ。実は、このFCレーダー以外にも、(FCレーダーの照射なしに)軍艦の砲身をワザと向けてみたり、海中では中国の潜水艦が日本の潜水艦に500m程度の距離まで接近してワザと魚雷装てんし、魚雷発射口を開けて注水音を聞かせて日本の潜水艦を威嚇するなど、相当なレベルの威嚇行為を続けているのだという。これら一連の行為は一貫性があり、日本の正当防衛の原則を知った上で、軍の上層部が指示している可能性が高いということである。しかし、あれだけ慌てて中国が全否定していることからも、事の深刻さを習政権は理解しているということが伺い知れる。これらを総合すれば、それだけ深刻な事態を外務省の報道官が知らなかったと言うとおり、習政権内部では状況を把握しておらず、軍の掌握が全く出来ていないことは明らかである。
今後、軍と習政権の綱引きは続くだろうし、隙を見せまくることが予想される。日本は着実に中国の失点を世界に公表し、相対的にこれまでの失点を挽回すべきである。丹羽大使の車の国旗を奪い取られた事件や反日暴動など、過去を振り返って追求しても良い。攻め時ではあるが、抑えながらも効果的な攻撃を戦略的に進めて欲しい。
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ここで思い出して欲しい。一昨年の3月、中国国家海洋局所属と見られるヘリが中国の東シナ海において、海上自衛隊の護衛艦に対して最短で90mの距離まで接近したという事件があった。今回のレーダー照射の距離は、艦船と艦船の距離だから単純に比較はできないが3�の距離であった。当然、視認できる距離であるが、衝突コース上になければ違和感はあるが最近の日本と中国との小競り合いの中では異常な距離ではない。しかし、90mというのは多分感覚としては目と鼻の先であり、現実的にはあり得ない接近距離である。更にこの1月にも、中国軍が(対日本だけでなく)米軍機を執拗に追い回し挑発するという問題が話題になった。情報が定かではないが、報道の記述からすれば航空機の後方(必ずしも真後ろとは限らない)から追尾するのであるから、意図的に挑発しているのは明らかである。
また、中国の解放軍のどこかの少将は、日本側が尖閣周辺の日本の領空に接近した中国の航空機に曳光弾を使用することを検討すると発言したとかしていないとこの報道に対し、「これは宣戦布告の1発だ!曳光弾を撃たれたら、中国は別の種類の砲弾で日本に反撃せよ!」と発言していた。この曳光弾というのは、国際法的にも領空侵犯への適切な対処法として、無線や併走などで退去の指示を出し、それでも退去しない航空機に対して併走した前方、すなわち必ず曳光弾が当たらない方向に対して発射するという手順が取られるらしい。つまり、警官が空か地面か、相手と全く異なる方向に威嚇の発砲をするようなもので、現時点では危害を加える意図がないことを明示的に示す行為である。発砲の有無の差はあるが、相手にとっての緊張の度合いで言えば明らかにFCレーダーの照射の方が深刻である。実際、イラク戦争ではレーダーを照射された米軍はレーダー基地を爆撃したし、ベトナム戦争時の米軍の交戦規程ではFCレーダ照射に対抗して攻撃することが認められていたという。だから、これが些細なことだと言うのであれば、曳光弾の使用などさらに些細なことになる。
また、日本が情報戦を仕掛けるという話も2003年に改正された「中国人民解放軍政治工作条例」に「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」の実施を明確に規定している。この世論戦を仕掛けようと推奨している中国は、これまでも様々な形で世論戦を仕掛けてきており、これら全ては中国にブーメランのように返ってくる。ここでの問題は、推定無罪を勝ち取る戦いではなく、中国のマーケットからの外国資本の流出にどの様な影響を与えるかの議論だから、明らかに中国は語れば語るだけドツボにはまりつつある。中国国内向けにはこれで良いのだろうが、この結果国際社会の監視の目が厳しくなり、尖閣に対して中国が強硬な手段を取れば、それを全世界が非難する土壌が出来つつある。この状況では中国は益々無茶な行動を取り難くなるから、日本は現状の冷静な対応を続ければ良い。
なお、素人ながらの感想として、FCレーダー照射の証拠は、部分的にではあるが公開出来るのではないかと思っている。中国国防省の主張の監視用のレーダとFCレーダーは周波数が異なるし、360度を回転しながら照射し続ける監視用レーダーと一定方向に狙いを定めて照射するレーダーは明らかに異なる。多分、アレーアンテナなどで到来方向を明確に推定し、その方向に存在する船舶が日本の艦船の監視用レーダのデータ、航空機による監視、衛星写真などの情報を総合して中国のフリーゲート艦しかないこと、波形が中国軍のFCレーダーの波形と同一であることなど、様々な情報を総合した結果なのだろうが、それらのごく一部の切り出しとして、受信した信号の周波数や受信レベル、時間情報によりレーダー受信が分単位で継続的であったことを限定的に示せば、それ以上の情報は伏せても欧米のメディアは納得するだろう。さらに、米軍に対しては全てのデータを開示して解析を行ってもらい、米軍からも「FCレーダの照射と確認できた」と発言してもらえば良いのである。軍事機密ではあるが、やり方は幾らでもあるはずだ。
なお、森本前防衛相曰く、今回の行動は艦長よりも上のレベルでの指示だということだそうだ。実は、このFCレーダー以外にも、(FCレーダーの照射なしに)軍艦の砲身をワザと向けてみたり、海中では中国の潜水艦が日本の潜水艦に500m程度の距離まで接近してワザと魚雷装てんし、魚雷発射口を開けて注水音を聞かせて日本の潜水艦を威嚇するなど、相当なレベルの威嚇行為を続けているのだという。これら一連の行為は一貫性があり、日本の正当防衛の原則を知った上で、軍の上層部が指示している可能性が高いということである。しかし、あれだけ慌てて中国が全否定していることからも、事の深刻さを習政権は理解しているということが伺い知れる。これらを総合すれば、それだけ深刻な事態を外務省の報道官が知らなかったと言うとおり、習政権内部では状況を把握しておらず、軍の掌握が全く出来ていないことは明らかである。
今後、軍と習政権の綱引きは続くだろうし、隙を見せまくることが予想される。日本は着実に中国の失点を世界に公表し、相対的にこれまでの失点を挽回すべきである。丹羽大使の車の国旗を奪い取られた事件や反日暴動など、過去を振り返って追求しても良い。攻め時ではあるが、抑えながらも効果的な攻撃を戦略的に進めて欲しい。
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