けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

微博から読み解くFCレーダ照射事件

2013-02-11 23:35:27 | 政治
本当か嘘かは知らないが、以前、ソ連のクーデターでゴルバチョフ大統領が行方不明になった時、当時のソ連の大使館に勤務いていた佐藤優氏がかの国のありとあらゆる地方新聞を読み漁り、ゴルバチョフ大統領が生存し且つ何処に潜んでいるかを言い当てて日本の外務省本省に連絡を入れたという。今で言えば、新聞に加えてTwitterも合わせて読み漁り、何が起きているのかを解析することが重要なのだろう。

当然、素人には中国語の新聞や微博(ウエィボー)など読める訳もないが、尖閣国有化時の反日デモが吹き荒れたとき、中国の新聞はかなり過激なものが多かったが、もっとも国民の本音を反映する微博にはこの反日デモを批判的にとらえ、良識ある反応が結構多かったと聞いている。しかも、それに関連した有識者(大抵は現or元中国人)の解説では、「マスコミは政府の意向を汲んで過激に反応するが、あれが中国国民の本音だと思うと違いますよ・・・」ということだった。それは「なるほど」と思わせるものであり、短絡的な人であれば話は別だが、論理的な思考ができる人ならば、愛国無罪と叫べば略奪行為も許されるという風潮に対し、ナショナリズム的なバイアスがある程度はかかっても「流石にそれはないだろう!」という結論に辿り着くのは容易に予想できる。

だから、このFCレーダー照射の件に関して中国国内ではどの様な記述が多いのかが気になり、色々と調べてみた。結論としてあまり信憑性がある記述は見つからなかったが、反日デモの様に中国政府やマスコミの主張に懐疑的な記述というのは今回は極端に少ないのではないかと感じた。今後の情報次第で私の現時点での感触が間違っている可能性も大いにあるが、何となくその違いは納得できるような気がする。

まず国営メディアなどでは、意図的か無知なだけかは知らないが、攻撃用の射撃レーダと航海用の探査用レーダーの区別がつかなくなっていて、「船舶がレーダーを使うなんて当たり前だ!」、「日本の自衛隊からもレーダ波を多数受信している」とFCレーダーの使用を正当化しているものが多い。もう少し良識のある人であれば、軍隊であれば当然ながら他国軍から常識を逸脱した威嚇を受けたとすれば反撃することは許されて当然であり、段階を踏んで最終的に砲撃を加えるにしても、その前段にFCレーダーの照射という手順が当然あって然るべきという論調になる。勿論、ここまでのロジックは間違っていない。問題は、その威嚇の内容が国際的にも深刻な挑発と見なされてしかるべきものなのか、両者がギリギリのところで毅然としながらも抑えた行動の結果なのか、の解釈なのである。

尖閣をはじめ領空、領海などを巡ってこれだけ緊迫化した状況にあるのだから、それぞれが艦船や航空機などでギリギリの駆け引きがなされて当然である。その暗黙の微妙なバランスの平衡点の様なものに対し、反日教育を受け続け、日本のことを「小日本」と侮蔑を込めて言うのが常態化した人々からすれば、両国の微妙なバランス自体が耐え難いもので、許し難い深刻な威嚇・挑発であると考えるのは予想に難くない。この様な前提の上で、日本が中国の領土を侵害するために挑発を仕掛け、それに対する正当な防衛手段としてFCレーダーを照射するとなれば、流石に微博でも「おい、おい!」と待ったをかけるのはハードルが高いのかも知れない。

多分、中国の報道機関も元軍関係者などを中心に取材をするのであろうが、彼らが意図しているかいないかは不明であるが、結果的には中国国民がこの様な誤解をすることにマスコミが積極的に加担したことになっている。この意味で、良識ある中国国民がブレーキとして機能することはあまり期待できないのかも知れない。ただ、ではこれが中国政府の意図するところかと言えば、少なくとも中国外務省の報道官などの発言の中には(単にレーダー照射を否定するだけに留まらず、仮に照射したとしても)FCレーダーの照射を正当化するような発言はないから、世界的に見れば現在の状況はFCレーダーの照射を正当化できる状況にはないことは自覚しているようである。

なお、日本の報道では中国の外務省報道官が「(レーダー照射を)報道で知った」とか「照射した事実はない」との回答まで3日もかかったと回答した背景に、「日本の防衛相も1週間近くかけて詳細に解析したのだから、中国も詳細に調べたという形跡として3日間が必要であったのではないか?」と解説するところが幾つかあるが、中国の微博ではこれがすこぶる評判が悪いらしい。1日ぐらいならまだ調査に時間を要するという可能性もあり得るが、中国というお国柄を考えればそれ以上の時間を要する理由は理解に苦しみ、外務省(及び政府)の醜態の様に映ったようである。これは、極めて妥当な感覚だろうから、中国政府が「たかだか小日本相手に手をこまねいている」と国民が感じるような対応を選択的に行うのは考えにくい。だからこそ、あれだけ時間をかけざるを得ない何かがそこにあったというのが事実だろう。

ちなみに話は変わるが、前回のブログでも書いたが小野寺防衛相が「日本の抗議以降、中国の公船の侵入が起きていない」と発言したことに対し、中国からのメッセージと書いたが、今日になって中国の海洋監視船が尖閣周辺の海域を航行しているとアピールしだした。小野寺防衛相が「メッセージは受け取った」と発言し、中国の自粛の必要性がなくなったことに対するものだろう。「だったら、小野寺さんはそんなこと言わなければ良いのに」という見方もあるが、物理的な信号の解析能力のみならず、政治的なメッセージの解析能力もあることを見せつけるのは有益であろう。

なお、以下はあまり重要ではないが、現在、民主党のホームページでは野田前首相がレーダー照射の報告を受けながら公表を避けたとの報道を否定する声明が掲載されている。小野寺防衛相は、何処まで報告が上がっていたのか、何処まで検知出来ていたのかの情報も機密情報であり、防衛省レベルで把握していたか否かも回答できないとしていた。その前には何処からか岡田前副総理などが関与したとの報道もあったが、小野寺防衛相の模範解答をテレビで見て慌てたのかも知れない。

軍事力も大事だが、外交力、政治力、解析力も重要である。何処まで先を見通して先手を打つか。その結果に対する解析と更なる対応の能力が、政権の能力のバロメーターである。民主党政権は悪夢の3年3か月だったが、それが反面教師となって数々の反省の上に立って現在の安倍政権があるのかも知れない。見方によっては、民主党政権にも存在意義があったのかも知れない。

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