けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

軍部が調子付いて暴走することを読めなかった習主席

2013-11-26 23:59:43 | 政治
防空識別圏の問題がその後も大きな問題化している。ここでは新聞ではあまり分かり難いと思われる点も含めて、もう少しく見ていきたい。

まず、先日のブログでも述べたように、一般的に防空識別圏が複数の国で重複することは珍しくはない。論理的には日本の様な島国では重複して当然と考える方が正しい。実際、韓国も台湾も、防空識別圏の重複を指摘して中国に異を唱えた。ただ、韓国と台湾では微妙にその意味することが異なる。韓国に関しては、防空識別圏の重複はあったが、韓国領土の上空に防空識別圏が設定されてはいなかった。ただ、韓国と中国は領土とは異なる暗礁である離於島(中国名・蘇岩礁)関する権利を争っており、この暗礁の上空には防空識別圏が設定されている。ただ、この暗礁は干潮時でも海面下4.6mの海中にあり、排他的経済水域としてこの地域を争っているだけである。だからその意味では、この問題は両国間の重大な懸案とはなりえない問題である。一方で台湾は、自国の領土と主張する尖閣諸島上空に防空識別圏が設定されたから領土を侵害されたことになり、立場的には日本と同じである。なお、台湾も防空識別圏を設定しているが、日本、アメリカとの外交上の問題化を避けるために自国領のはずの尖閣上空は防空識別圏には設定していない。この辺は、アメリカが沖縄を占領している時代の防空識別圏との重複を回避し、その後もその状態を維持したものと予想される。

ここで中国外務省の主張によると、韓国との間の防空識別圏に関する問題は外交的に解決可能との認識だそうだ。しかし、実際にはそう簡単ではない。何故なら、韓国は中国に対してこの空域を飛行する場合に中国に通告しないとしているが、韓国と台湾や東南アジア、オーストラリアなどとの間の飛行機がこの防空識別圏を何処かで通過するならば、これらは全て「申告のない国籍不明機」としてスクランブルの対象になりうる。中国が韓国の飛行機に攻撃を仕掛けることはないが、飛行機のパイロットからすれば他国の空軍機が毎回スクランブルをかけてくるとなると、それなりに精神的なプレッシャーが大きい。短期的にはどうか知らないが、必ず何処かで問題化するだろう。

さて、この様な中で「日本も防空識別圏を設定しているのに、何故、中国が防空識別圏を設定して問題なのか?」という疑問の声も聞かれるが、これは中国が宣言している防空識別圏に関する対応が世界標準からかけ離れた異常な行動であるからである。先日のブログでも紹介したように、領土・領空に対して防空識別圏は相当広く設定されているから、つまりそれは公海上の空域である。公海上の領空の飛行の自由は国際的に認められているから、中国への飛行計画の通告の有無にかかわらず、中国軍機は中国領空への侵犯が懸念される場合に進路変更を求める以外には、通行を邪魔する行動をとることは許されない。しかし、中国政府は「防空識別圏を飛行する航空機が中国軍機の指示に従わない場合は武力による緊急措置を取る」と明文化して表明しているから、世界的な認識は「公海上の飛行の自由を侵害する国際法に反する強引な主張」ということになっている。さらに、一般的には飛行計画などを提出する義務はなく、例えば防衛相は事項計画は航空会社からではなく、国土交通省から情報を取得している。日本発着以外の飛行機に関しては定かではないが、常識的には近隣諸国の国土交通省(国によって名称は異なるだろうが)間で情報の提供を相互に行えば、やはり防衛省は日本の国土交通省にアクセスすることで概ね情報を取得できる。だから、航空会社が直接飛行計画を提出しなくても、少なくとも中国空軍も飛行計画情報の収集は可能なはずである。

だから、この様な国際ルールがあるがために、アメリカは「われわれは識別圏を飛行する際、(中国に)飛行計画を提出せず、無線周波数などを認識させることもしない。米軍機は(中国が求める)措置を一切取ることなく飛行できる」と宣言している。当初は日本の航空会社(JALとANA)は中国に飛行計画を提出したが、政府からの飛行計画提出中止要求がなされた結果、両者とも27日から提出を取りやめることになった。結局、「みんなで渡れば怖くない」作戦とでも言うべき状況で、関係諸国が中国の要求を黙殺しても、少なくとも中国の領空を飛行しない限りは中国も無茶な行動は出来ないはずである。

ところで、今回の中国の行動は中国にとって「吉」と出たのか「凶」とでたのかどちらだろう?それを読み解くに当たり、下記の記事を少し見て頂きたい。

産経ニュース2013年11月26日「『不審機にはミサイル攻撃も』中国の軍事専門家

何てことはない、中国の軍事専門家が「外国機の圏内侵入に対しては、中国軍の防空ミサイル網が警戒態勢を取ると警告」したのである。また更に、は中国空軍の報道官は「中国人民解放軍は防空識別圏をコントロールする能力がある。安全を保障するため脅威に応じて適切な措置を取る」と述べたという。先にも触れた通り、防空識別圏といえど単なる公海上だから管轄圏など国際的には存在しない。しかし、これに対して中国国内では「実弾で攻撃すべし」などの声が高まり、専門家ですら上述の国際法無視の論調を公言する。

しかし、これらを世界中の人々は見ているのである。このニュースを耳にした人々は、全て、中国の横暴さを思い知ることになる。そして、明らかに戦前の日本を超えるような覇権主義にひた走っていることを目の当たりにする。一方で、新疆ウイグルやモンゴルなどの人権弾圧も激しい上に、PM2.5問題などで中国にビジネス拠点を置くリスクも急上昇中である。あの経団連ですら呆れるぐらいだから相当なものである。これは尖閣漁船衝突事件の後のレアアース禁輸措置で受けた中国のダメージを遥かに凌ぎ、様々な形で中国のバブル崩壊のリスクも高まることになる。
また、下記の記事は笑ってしまう。

産経ニュース2013年11月26日「韓国が防空識別圏拡張を協議へ

どうやら中国はパンドラの箱を開けてしまったようである。友好国と位置付けてしまった韓国ですら、対中国での防空識別圏の拡張議論に発展する。当然、中国の防空識別圏との重複範囲は広がる。中国外務省が考える話し合い解決は益々簡単には行きそうにない。

また今回の事態により、これまでは建前上は日本の集団的自衛権の議論では北朝鮮からのミサイルを想定して「アメリカ軍が攻撃を受けたら・・・」との議論だったかも知れないが、今後は「中国も含めてアメリカ軍が攻撃を受けたら・・・」との議論にすり替わることになる。この時、韓国は益々、立場的に苦しくなることだろう。何故なら、中国とアメリカを両天秤にかけたのは、絶対に何があっても中国とアメリカは戦争には至らないという前提があったからだと思うが、その前提が崩れるのである。アメリカからすれば、相手が北朝鮮であれば「アメリカ、一国で対処可能」と考え日本の手段的自衛権は無くても我慢できたが、相手が中国であれば日本の集団的自衛権は何物にも代えられない必須の条件となる。それを韓国がNoと言えば、アメリカの韓国に対する対応は更に厳しくなるのは目に見えている。つまり、韓国と組んで日本を歴史問題で攻撃しようという中国の魂胆は、結果的に破たんの方向に向かうきっかけを作ってしまった訳である。朴大統領からすれば、日本との対話の場を設ける良い言い訳にも使えるかも知れない。急遽、日韓首脳会談開催などというニュースを見ることになる可能性も否定できない。

今回の事態の背景には、習近平国家主席的には「日本も設定している防空識別圏を中国も設定する」という、世界が拒否できない主張を掲げて尖閣棚上げ論に日本を誘い込む作戦だったのだろうが、最後のところで軍部が暴走し、「どうせ防空識別圏を設定するなら、(通常の防空識別圏ではなく)日本の自衛隊機を防空識別圏に入り込めない様に脅しをかけてやれ!尖閣には近づかせないぞ!」と羽目を外し、結果的に習主席の意図しない方向に話が流れてしまったのではないかと思われる。しかし、今となっては後の祭りで、今更軍部に撤退(つまり、公海上の飛行の自由を認めるように、方針転換を公表させる)を指示すれば急速に支持基盤を失う可能性もある。この様な足元の乱れを見透かされれば、今の中国では新たな権力闘争に発展する可能性も否定できない。さらに、伝家の宝刀を抜いたら竹光だったことがばれてしまい、この結果、国内の不満を反日で逸らすことも難しくなる。新疆ウイグルやチベットなどを力で抑え込んだように、これからの中国国内は更に強権的になる可能性は高い。時限爆弾のカウントは益々進むことになる。

この様に、言うまでもなく今回の中国は「一人負け」状態である。さらに、バブルの崩壊を恐れるなら中国はこれ以上の強硬措置は取れないはずである。上げた拳をさりげなく引込めるのも得意な様であるが、日本政府は中国が拳を降ろしても言うべきことはしっかり言い、次回も同様の暴走が起きない様にしっかりと釘を刺すべきである。ここで、仏心を出してはいけないのである。

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