けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

本当は誰が正しいのか?(モルシ大統領を釈放してもう一度選挙をやらせてみよ!)

2013-07-05 23:58:35 | 政治
エジプトで反モルシ大統領派のデモが続き、ついにエジプト軍最高評議会議長を兼ねるシシ国防相が大統領の排除と憲法の停止を宣言し、事実上のクーデターが起きた。素人の私にしては非常に分かり難く、様々な解説を聞いているのだがどちらが正しいのかがイマイチ良く分からない。自分なりに理解を整理したのでメモ代わりにまとめてみた。

まず、トルコ・イスタンブールのデモなどでもそうだが、通常は民衆によるデモに対して政権側が頑なな態度を示し続け、デモがますますヒートアップする場合、日本の報道では大抵は「民衆が正しい」と評価する。だから、最初は私もその様な理解が正しいのかと思っていたが、そこがイマイチ確信が持てない。その様な違和感を感じる理由は単純であり、これはアラブの春により打倒された前ムバラク政権から自由を勝ち取り、正当な民主的な手続きで選出されたモルシ大統領が、軍事的な背景を持つ軍部により排除されたのだから、これは明らかにクーデターと見なすべきであり、その様な視点で見れば明らかにモルシ大統領派に政権の正統性があるように見える。しかし、これまた頭を悩ませるのは、このクーデターは通常の血で血を洗うイメージのものとは大分異なり、一部に血は流された事実はあるようだが、一見、ソフトな路線で政権交代を目指しているように見える。実際、シシ国防相がモルシ大統領の排除を宣言した記者会見場には、野党系指導者であり元IAEA事務総長のエルバラダイ氏やエジプト最高宗教機関アルアズハルの長であるアフマド・アルタイーブ師、エジプトのコプト教の教皇タワドロス2世などが出席し、軍部が一方的に行ったクーデターではなく、もっとソフトな路線のクーデターであることを演出している。しかし、実質的にクーデターであることには違いはないのでアメリカのオバマ大統領なども懸念を表明しているが、しかし、アメリカの国内法では民主的な手続きで選ばれた政権を軍事的クーデターで排除した国に対する支援を禁じているようで、公式の発言の中では非常に微妙な言い回しとしてクーデターと断定した表現にはなっていないという。これには理由があり、イスラム勢力が支配的な中東において、親米国家を残したいアメリカが定常的にエジプト軍に対して支援を続けており、ここで支援を打ち切るとエジプトの反米化の流れを作りかねないから、どうにかして支援を続けたいアメリカとしては苦肉の策ともいえる微妙なハンドリングを行っている。

と、この時点で様々な思惑が絡み合っているのが分かってくる。もともと前ムバラク大統領は軍人であり、親米で親イスラエル的な立場であったのでアメリカは支援をしていたのだが、アラブの春の結果としてできた政権はイスラム原理主義者のムスリム同胞団を背景としており、その意味ではアメリカをはじめとするキリスト教諸国にとってはあまり好ましからざる政権であるともとれる。ただ、イスラム原理主義と聞くと過激な爆弾テロなどのイメージを持ちがちだが、実際にはかなり穏健なイスラム原理主義団体で、過激で急進的というよりはそれなりに話せば分かるという存在のようだ。その様なこともあり、イギリスなどでは純粋に軍部による民主主義的手続きで選出された政権を排除する動きはクーデターであり、その様な行動は決して認められないと宣言している。国連事務総長なども同様の懸念を示している。

と、ますます訳が分からなくなってくるのだが、今日のTBSの「ひるおび」にはエジプト出身のタレント、フィーフィーさんという方が出演し、熱く実情を訴えていた。私にはこの説明が一番心に「ストンと落ちる」説明だった。あくまでも本当のことは分からないので、この人の説明も同然バイアスがかかっていてもおかしくないのだが、理路整然としていて説得力はあった。この後は、ここでの話を整理しておこうと思う。

このフィーフィーさんという方は、私は単なる日本語が流暢な面白おかしい変な外国人のキャラでテレビで見かけることが多いのだが、どうも母親が国際政治学者だそうで、それなりに自国の政治については思いが強いようである。その彼女がポイントとして挙げたのは、先のアラブの春で迎えた新政権とは、国民投票的な選挙で大統領こそ新たに選ばれることになったが、軍部を筆頭にその他の政権を構成する勢力はムバラク政権時代から継続的に政権の座に居座っており、政治の刷新が行われた訳ではないという。だからこそ、イスラム原理主義者の大統領が率いるエジプト軍にアメリカが安心して援助を続けることができたのだろう。その軍部というものは、日本の発想であればエジプト軍のみに息がかかっているイメージであるのだが、様々な産業界を牛耳るところまで軍が行っているという。このエジプトは中東の一国でもあるから、輸出するほどの産出量はないけれども、国内を賄う程度の石油の算出はあるのだという。この石油産出を仕切っている会社は実効的には国営であり、もっと突っ込んで言えば軍部の息がかかった企業だと言える。その他にも様々な業種においても軍部の影響力は強く、その頂点に立つのがクーデターの首謀者という位置づけになるシシ国防相ということになる。この国営企業の石油会社による石油の国内への供給であるが、何故か理由がイマイチ不明瞭ながら、事実としては価格が非常に高騰し、ガソリン代の値上げなどでモルシ大統領に対する国民の不満が高まっていたという。先のフィーフィーさんの主張によれば、軍部が何処かでモルシ政権の転覆を狙うとすれば、この様な国民の不満を募らせる施策が効果的であり、裏で隠れてこの様な事を頻繁に行っていたという。そして、適当な所でムバラク政権時代を懐かしむ人たちを中心に軍が裏で糸を引き、あたかも民衆によるデモが頻発したと世界にアピールしているのであるが、その民衆というのもどの民衆(政治的な偏りのない一般的な民衆なのか、政治的に偏った人たちによる民衆なのか)なのかが怪しいという見方が出来る。

さらに怪しさを増幅するのは、この様なクーデターとして大統領を拘束するところまでは良いのだが、ムスリム同胞団までをも300名程度合わせて拘束しているというから、民衆が統治能力のないと判断したモルシ大統領というトップの交代を意図したというよりも、イスラム原理主義者という勢力の掃討作戦を行ったように見えてしまう。これは、平和的なデモを行う一般大衆の総意と考えるのは不自然で、何処かで政治的な思惑をもって軍部が暴走したと考えた方が自然なのである。

ただ、ではイスラム原理主義者の排除がアメリカにとって好都合かと言えば話はそう単純ではなく、折角、穏健で対話が出来るイスラム原理主義者勢力が政権を握っていたのに、それらを掃討することにより穏健派勢力が過激派勢力と共闘する流れに繋がるのは目に見えており、そうなるとますます中東が不安定化するということになる。この様に、様々な思惑が思いっきり絡み合っており、そこに不純な動機が見え隠れしすぎているから、同じ西側諸国でも1枚岩とは言えないし、中東諸国も自分のポジション次第で評価が180度異なることになっている。

損得で考えるとどの様に評価するのが好ましいかとか、心に疾しいものをもって見ると話は訳が分からなくなってくる。でも、ニュートラルであり続けようとすると、その様な報道も良く分からない。さきのフィーフィーさんによれば、モルシ大統領はここまで足を引っ張られ続けられ、自分なりの改革路線を自由に進めることを封じられ、軍部が力を持つ不安定な砂上の楼閣の上でもがいていたという。たった1年ばかりで評価できるような状況でもなく、にもかかわらずあれだけの勢力で大々的なデモというのは本当に民衆の声なのかということらしい。ただ、菅、鳩山という超無能な総理を二人も連続的に輩出した日本としては、1年あれば本当に無能であれば簡単に見分けることなどできるだろうという主張も納得できる。

以下は私の単なる戯言ではあるが、ひとつエジプト国民に提案してみたい。本当に民衆の声を聞きたいのなら、モルシ(前?)大統領に対して「もう一度選挙すること」を条件に釈放を許し、現在の暫定大統領のもとで、もう一度国民の審判を受けて白黒をはっきりさせてみてはどうか?もちろん、暫定大統領や軍部がその様なことを呑むとは思えないが、ダメもとで言ってみれば何か見えて来るものがあるかも知れない。国連を中心として世界中の国々が、この様にエジプトに要求することを私は願う。

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