けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

私の考えるデフレの原因(後編)

2012-06-03 23:36:55 | 政治
昨日のブログの続きて、「私の考えるデフレの原因(後編)」と題して残りについて書かせていただく。最初から弁解であるが、経済音痴のボヤキとでも理解していただければそれで結構である。

昨日のブログの最後には、革命的なIT技術の進歩による『競争のための強力なツール』を手にしたことが、現在のデフレの最大のA級戦犯でないかと結論づけた。それでは、その『競争のための強力なツール』の詳細をひとつずつ見ていこうと思う。

まず最初に、最近のPCや家電製品のライフサイクルについて考えてみる。例えば、何らかの技術を開発して商品化につなげる場合を考えてみる。技術開発のためには、昔であれば技術論文を調べるために何らかの国際会議の予稿集(Proceedings)を読みあさり、鍵を握りそうな技術を探し出す。次にその論文の参考文献(Reference)を探し出し、さらにその論文の参考文献へと順番に孫引きを繰り返す。その様なことを繰り返しながら、有益な情報を探し出して個人的な(ないしは組織の中で共有化された)技術データベースを構築し、それを活用しながら新たな技術革新を目指すことになる。何らかの技術を提案したら、その提案方式の有効性をC言語やFortranなどの計算機言語でシミュレーションプログラムを自分で1から作り、その有益性を評価する。しかし、とても複雑な現象の全てをシミュレーションすることはできないから、その有効性を検証するための試作装置を開発し、実機での有効性検証を行う。この様なプロセスを順番に踏んで、やっと商品化やサービス導入に至るのである。リスクが大きければスモールスタートから始め、様子を見ながら徐々に規模を大きくする。この様なサイクルを順番に繰り返せば、必然的にそれなりの時間を要するのである。
しかし、現在はその殆どをアッと言う間に実行することが可能である。文献検索など、適当な検索エンジンを用いれば、幾らでも見つけることができる。場合によっては、ご丁寧に大学の先生などが体型的に注目すべき技術に関連した文献のリストを作り、その文献にリンクまで貼ってあるような場合もある。条件を変えながら出てくる文献を斜め読みしながら、本当に欲しかった文献を絞り込むことができる。特許検索にしても、特許データベースを用いて簡単に見つけることができる。その様にして関連技術を抽出し、それを改良したような提案方式を作り上げたとして、その検証のためのシミュレーションツールなども非常に充実している。ある分野に関して言えば、それを構成する要素技術が仮に10ほどあったとしよう。私が企業に就職した20年ほど前は、シミュレーションはC言語やFortranなどを用いて行なっていた。一部のライブラリ化されている数学的な関数に相当する機能を除けば、個々の要素技術を実現するサブルーチンなどは、(社内で共有化されている独自のプログラムがない限り)先程の10の要素技術を全て知った上でシミュレーションプログラムを作る必要があった。しかし、今では殆どブラックボックス化されたモジュール状のプログラム(関数)を呼び出し、その引数を指定してやれば自動でその要素技術を実行してくれる。昔ならスペシャリストが1年がかりで計算していたことが、新入社員や大学院生レベルで簡単に実施することができる。場合によっては、細かなプログラムを書かずに、図形状のブロックを並べるだけでシミュレーションが作れたりもする。より複雑な条件の計算も、オモチャの様に簡単に条件さえ決めればシミュレーションツールが勝手にやってくれる。

さらには、シミュレーションで有効性が確認できれば、実際のLSIなど開発しなくても、DSPなどの上でハードウエアと等価な処理を実施し、半ばソフトウエア的制御で実機上の検証が可能になる。粗方の評価であれば、装置の開発ではなくて評価用の測定装置をレンタルし、その装置上で実際の何かをシミュレートできたりもする。最終的にはLSIの開発を行うにしても、その設計にしても高度なツールが複雑なことを簡単に実現してしまったりする。以前であれば、3年かかることが3ヵ月もかからずに出来てしまったりもするのである。全ての分野がこうだとは言わないが、家電業界などの場合には概ねこんな感じなのだろう。

実際、PCやスマートフォンなどの業界ではiPhone/iPadが世に出てから類似製品が出るまでの期間は非常に短かった。OSが別物である点や、Appleならではのヒューマンインターへースの上質さなど、差別化があるからAppleの一人勝ちであるが、Android陣営の競争は熾烈を極める。今日の勝者が明日の勝者とは限らないし、勝つための投資を何処まで回収できるかは分からない。しかし、戦わないわけにも行かず、留まるも地獄、進むも地獄なのである。かくして競争は激化して、差別化ができなければ価格は下げなければ売れなくなり、気が付けば叩き売りとなる。

また、消費者の観点から見ても、「価格.com」などを用いれば、世の中の最安値が幾らか容易に知ることが出来る。クチコミを活用すれば、お店でモノを直接見なくても、ある程度の良し悪しは見切ることが出来る。老舗のデパートなどでは、昔であれば一種のステイタス的に街の中心部に君臨し、じっとしていても多くの人が集まってきた。個々の商品以上に、そのデパートのブランドイメージが商品を高く売る効果をもたらした。しかし、今ではスマートフォンで最安値検索を行うアプリまで登場しているから、デパートの売り場で直接ネットを検索しながらショッピングすることも可能になってしまった。IT技術に弱い高齢者は未だにデパートのブランド意識を評価しているのかも知れないが、それも時間の問題だろう。少なくとも価格をネットで比較可能な商品などは、デパートなどの店舗で買うメリットはなくなり、その最安値に漸近して商売が繰り返される。

ここまでは、技術的、物理的、論理的な意味での解り易い『競争のための強力なツール』について説明してきた。しかし、これら以外にも別の意味での競争を加速させるツール、すなわち『競争を抑制するブレーキ』を弱める効果も実感されるようになってきた。

以前であれば、ビジネスの世界では人それぞれ自分の持ち場をわきまえていたかも知れないが、現在は生き馬の目を抜く時代であり、ビジネス的に儲かる何かを誰かが見つけると、自分の持ち場か否かに係わらず大勢で寄って集って一気に食い潰す傾向がある。誰が何処で儲けているかを知るツールが進化しているから、みすみす儲かるものを逃したりはしない。だから決して儲けを度返しして、末永くその分野を育て上げようとはしない。株式の売買が一般人の間にも広まり、更には組織的で大規模なヘッジファンドの登場により、投機的目的での金が移動するようになり、ハイエナの様にマーケットが食い尽くされるに至っている。この様な時代の流れはビジネスにおける「モラル」をも破壊してしまい、既に自分の持ち場などないから、さらにブレーキがかからなくなってしまう。

この『競争を抑制するブレーキ』を弱める効果については他にもある。これまた少し話が逸れたように思われるかもしれないが、小泉政権時代には規制緩和による経済活動の活性化が進められた。規制緩和とは、競争を阻害する独占的な既得権益を開放することにあり、結果的に新規参入者により競争が激化し、価格の低下とサービスの向上がもたらされる。しかし、民主党議員を始め、マスコミはこぞってこの規制緩和を叩こうとする。最近の関越自動車道のバスの事故の話にしても、規制緩和がもたらした過剰競争が原因だという。しかし、経済活動において競争があるから企業はより良い製品、より良いサービスを提供しようとし、結果的に消費者はその恩恵を受けることが出来るようになる。だから、今後も大局的には規制緩和の傾向は進むのだろう。となれば、やはり競争を阻害する要因が減り、競争は激化することになる。

以上、色々と書いてきたが、多分、多くの方々がこの『競争のための強力なツール』(ないしは『競争を抑制するブレーキ』を弱める効果)を実感しているのではないかと思う。これらは、政治の世界で議論されているようなテクニックでどうにかできる代物ではない。しかも、この傾向はますます加速しそうな感がある。だから、政治家が「デフレからの脱却」という時には、単に20年前だったら効果があった方法では不十分であり、その処方箋までは示さないまでも、この様な効果があることを意識しながら策を練らねばならないのだと思う。そして、この様な前提に立った上で、野田総理の考える消費税増税路線と、小沢元代表の考える増税先送り路線と、どちらの方が現実味があるのかを考えるべきである。

様々なツッコミが入ることは覚悟の上で、長々と個人的な感想だけで好き勝手なことを書かせて頂いた。私は多分、幸せな時代に生きているのだと思う。しかし、子供の時代はそうはいかないと感じている。ほんのひと握りの優秀な人材がいれば、残りは言われたままに行動すれば良いソルジャー的な人材で何とかなってしまう社会かも知れない。貧富の格差はさらに進み、社会保障制度も現在とは全く異質なものが求められるようになってしまうかも知れない。我々が思っている以上に、事態は深刻で複雑なのかも知れない。この辺のことを意識して、政治が動かなくては世界から取り残されてしまう。最近、つくづくその様に感じている。

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