けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

「はやぶさ2」と日本の命運

2011-12-09 22:36:44 | 政治
昨日、「はやぶさ2」の予算削減で打ち上げに暗雲が立ち込めているというニュースがあった。詳しいことは分からないが、多分、各惑星の軌道の関係から、打ち上げ可能な時期が2014~2015年に限られており、一方で衛星の開発費用は競争のない世界での「1品もの」の製造なので、50%近い予算削減は開発の断念につながるということのようだ。

昨日の記事「『政治主導』から『官僚主導』へ(官僚の正しい使い方)」では、あたかも政治家なんかいらない!とも読めるようなことを書いたが、良く読んで頂けば分かるように少々意図が違う。官僚と政治家にはおのずと役割分担がある。例えて言うならば、ある程度安定した状況で正論を基準にすれば適切な判断が出来る場合には、有能な官僚が淡々と仕事をこなすと良い結果を導けるのだと思う。もちろん、官僚が性善説に従った行動をとるという前提が必要であるが。しかし、世の中はその様な甘い状況だけではなく、時として「突然変異」的な変革が必要であったり、正論から外れた別の議論が必要になることがある。そんな時は、軌道を逸れまいとする官僚は新しい道を模索することができず、政治家が決断をしなければならないことになる。

少々大げさな言い方だが、言い方を変えると、官僚は「戦術」を論じ、政治家は「戦略」を論じなければならない。それが役割分担である。

例えば、科学技術および宇宙開発に対する考え方である。何処かの現大臣が、「1番じゃなければ駄目ですか?2番じゃいけないのですか?」と言ったシーンを良くテレビで見るが、言い訳などしないで「あれは適切な発言ではなかった」と早く認めてしまえば良いと思っている。費用対効果比であれば、1番を目指すより2番を目指した方が効率的であるが、近年はシェアNo.1の企業だけが黒字でNo.2以降は赤字などという業界は多々あり、真の意味での効率追求になっているのかどうかは真面目に考えた方が良い。

先日も中国からのレアアースの輸入が止まったことが話題となったが、様々な物資は戦略物資となりえるのである。結論から言えば、将来、宇宙空間に資源を中心とした活路を見出さざるを得ない時代が来るかも知れない。地上でさえ、最初に見つけて宣言した国がその土地を領土と主張できるのであるから、宇宙空間にもその様な権益争いが生じるのは目に見えている。有人宇宙飛行に着目すれば、ロシア、米国、中国の3ヶ国が成し得ているのだからNo.4以降に甘んじているのは明らかである。

日本は、海洋資源はそれなりに豊富かもしれないが、陸地で見れば国土が狭く、資源の枯渇は国家の死を意味する。以前も、ある程度の周期で戦争が起きていたし、経済的にも大恐慌を完全に防ぐことは不可能である。そんな時、資源を持つ国はそれを武器にして、他国に対して有意な立場に立とうとする。どれだけの戦略物資を押さえるかは、国家としての生命線である。TPPにおいても農産物を議論する時には、主食の米が戦略物資となりうることを考慮し、自給率100%の維持が叫ばれるが、例えば家畜の飼料などに回されている品質の悪い米であっても戦争となれば皆食べるようになるので、その様な極限状態になった時に何が起きるのかを考えた戦略を立てる必要がある。飼料用の米を転用したとすると、では飼料には何を転用し、さらにその元を何で補うのか・・・という具合に。

農業の話はまだ生産することができる物資だから良いが、資源となるとないものはないのである。これから様々な物資が枯渇するのは、それが早いか遅いかを別にすれば、確実に避けられない状況である。その様な時に、どこに資源を求めるかといえば、ひとつの大きな可能性は宇宙にある。石油などのような化石燃料は別であるし、コスト的に採算が取れるか否かなどの議論はあるが、宇宙空間の権利主張が「早い者勝ち」と仮になった時、1番乗りでなくても上位に入れなければ、その後の世界で大きなハンディキャップを余儀なくされる。だから、宇宙開発に関する予算は言ってみれば「生命保険」のようなものであり、「どうせ早死しないから、保険料は無駄」と考えるか「もし早死したら、家族が路頭に迷うから、掛け捨てで良いから保険料を払う」と考えるか、判断をしなければならない。効率や確率で議論すれば前者であるが、リスクマネージメントの観点では後者だろう。だからこそ、政治的な判断で後者を選択しなければならないのである。しかし、現実は政治家が前者を選ぶという情けない結果となっているのである。

このような判断は、例えば原発問題でもあるかも知れない。例えば、安全の観点から脱原発を進めるのは良いが、現実に各廃棄物は存在するので、それらの管理には今後も長い目で付き合わざるを得ない。しかし、核開発は全て終了と決断してしまえば、今後、残される核物質を管理する技術を伝承することはできない。このような意味でも、ハードランディングではなくソフトランディングをしなければならない。さらに言えば、あまり大きな声で議論するのははばかられるのかも知れないが、これだけ多くの国が核兵器を持つ中日本が核兵器を持たないでいられるのは、必要となれば短時間で開発できる技術を持ち合わせているからである。しかし、日本中から原発がなくなれば、例えば北朝鮮や中国が本格的にヤバイ状態になったときに、核武装するのに要する時間が膨大になる。逆説的であるが、核(兵器)を持たないでいるために(核を利用した)原発が必要であるという裏の事情もあるのである。自民党の石破さんなどは、この様な議論も恐れずに口にしており、ある意味では誠実な政治家だと思う。この様な正論では議論できない論点にも、敢えて目を背けずに向かい合うことが政治家には求められる。

色々書いてきたが、歴史を見れば、時々、突然変異的な変革をもたらす瞬間が訪れて、その変革と変革の間は国々の序列は安定しているが、その変革の時に序列が大きく変わる。その瞬間に、先頭を走ることができるか取り残されるか、戦略的に様々な布石を打っておく必要があり、その様な判断・決断のために政治家は必要なのである。是非ともその様な戦略を語って欲しい。

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