けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

ジャック・バウアーと吉田所長について思うこと

2011-12-07 23:40:36 | 政治
少し時間が経ってしまったが、先週の月曜日、福島第1原発の吉田所長が入院のため所長職を解かれたとの報道があった。ショックだった。

これまでの一連の報道から、彼がいなければ現在はチェルノブイリを超える惨事に至っていたのではないかと私は信じている。しかし現在、この様に徐々に収束の道を歩んでいられるのは、死と向かい合わせの極限状況の中、彼が現場の指揮官として、そして原子力の専門家として適切な行動をとってきたからであろう。

例えば、菅前総理が海水注入の中止を指示したとされる事件は、菅前総理はその発言を否定していたが、私が最も信じる人の一人である青山繁晴氏が関西ローカルのテレビ番組「スーパーニュース・アンカー」の中で、関係者への詳細な取材の下、何が起きていたのかを明らかにしている。

参考URL:http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid1005.html

非常に緻密な取材であるが、ここでの結論は極めて信ぴょう性が高い内容である。技術者に対し、確率が完全にゼロであることを求めれば、「科学の世界で確率ゼロとは断言できない」と答えが帰ってくるのは理系を豪語する菅氏であればわかるはずだ。しかし「詰めろ!」と言われ、「原子力村の村長」と言われる東電の副社長ですら、反論をせずに受け入れてしまったと言う。それを吉田所長はすべての責任を自分でかぶり、適切な判断を下した。

彼は最近の取材で、「もう死ぬだろう」と何度も感じたことを明らかにしている。責任ある立場の人が、自らも「死の危険」を肌に感じたら、当然ながら部下に対し避難指示をしなければならない。避難の遅れは、部下の死を意味するからである。しかし、あえて「死んでくれ」と言わんとばかりに現地に残り、結果的に日本という「国家の死」を回避した。褒められるべきか、責められるべきかは紙一重であろう。作業員の家族からすれば、恨み節のひとつも出てもおかしくない。しかし、自らも最前線で死の恐怖と戦いながら、原発の暴走を阻止したのだから法律やコンプライアンスとは一線を画したところの出来事である。自らの責任を問われるのを恐れて、自衛隊員に対してヘリコプターでの海水投下を指示せずに、統合幕僚長に責任をなすりつけた何処かの国の元防衛大臣とは訳が違う。

多分、私の予想では彼は沢山の法令違反を犯しているのだろう。総理の海水注入中止指示を無視したことはよく知られているが、多分、明らかになっていないことも多数あるだろう。例えば、4月に入り放射線の線量を測る線量計の数が足りなくて、複数人で1台の線量計を共有していた話があったが、そんなのは全国の原子力機関に問い合わせれば、2日もあれば必要な数を寄せ集めることは出来たはずである。しかし、それをやるとあっという間に法令で規定される被爆限度を超えてしまうので、敢えて線量計を取り寄せなかったのではないかと推察される。あくまでも推察でしかないが・・・。しかし、そうしなければ、あの現場を仕切ることはできなかったのだろう。それほど事態は深刻で、死を覚悟しなければならない究極の状況なのだったのだと思う。

結果的に彼は日本を救った。法令違反と引き換えに救ったのかも知れない。変な話であるが、海外ドラマの「24(Twenty Four)」では主役のジャックバウアーは、膨大な数の法令違反を犯しながら、それと引き換えにアメリカをテロの被害から救うのである。一律に議論する話ではないが、その様な究極の状況に置かれたとき、「法令遵守」は自分の身を守るには非常に都合が良い。しかし、そこに愛すべき家族や友人がいる時、自らの身を捨てて法令違反を犯さなければならない時もあるかも知れない。クリストファー・ウォーケン主演の映画の「デッドゾーン(The Dead Zone)」もその様な映画だった。マイナーな映画かも知れないが、私の好きな映画だ。

そんな彼の努力の下、現在は大分安定状態に近づいてきた。

さて、話は変わって吉田所長の病状である。東電が秘密主義を貫いているので何とも言えないが、実は吉田所長が入院する5日ほど前に、福島第1原発の副長が警察に逮捕されていたニュースをご存知だろうか?話によると、東京ビックサイトで行われた衣料品の販売で、10万円以上の商品のタグを1/10程度の金額に付け替えレジを通過し、逮捕されたそうだ。ただ面白いのは、そのニュースの取り扱いが非常に同情的なのである。関係者(販売員)によれば、いかにもバレバレのタグの付け替えをしており、捕まりたいという気持ちがあったのではないかとことで、精神的に追い詰められていたことが原因と暗にほのめかして記事を終えている。この事件があったのが11/19、吉田所長の検診は11月中旬とあり正確な日付は不明であるが、入院は11/24なので、事件の後に検診を受けたとすれば、相当、メンタル的なチェックを慎重に受けたことが予想される。非常に意思の強い方だから、大して問題はなかったのかも知れないが、少なからずの何らかの精神的なダメージの兆候ぐらいは出てきていたのかも知れない。時系列がこの順番であれば、東電としては、吉田所長がこの様なこと(詐欺・万引き)をしては取り返しが付かないので、先手を打ったということかも知れない。ないしは、放射線の被爆量が250mSvをはるかに超えていることが発覚し、これ以上の勤務は法律違反になるので退役させたのかも知れない。当然、退役させればマスコミが取り巻くだろうから、安全な場所として病院を選んだとも考えられる。

本当のところは全くわからないが、私は吉田元所長にはそろそろ平穏な世界で少しは身を休めて欲しいと願っている。本当に重たい病気ではなく、別の理由であって欲しいと切に願っている。ドラマの「24」の様に、ジャックバウアーがまた舞い戻らなければならない世界が待ち構えていないことを祈る。

←人気ブログランキング応援クリックよろしくお願いいます