実は長いことブログをお休みしていた際に、一番書きたかったが時間がなくて書けなかったことを書いてみようと思う。それは、下記の記事に関する話である。
長谷川良 ウィーン発コンフィデンシャル2015年10月1日「朴大統領『南北統一近し』発言の背景」
これは今年の7月、朴槿恵大統領が何の脈略もなく突然「来年にも南北は統一されるかもしれないから、準備するように」と言い出したというニュースを受けての続報記事である。ここでは、その根拠が最近になって明らかになったということで、その理由は
「北朝鮮労働党幹部の一人が脱北し、韓国当局に北国内のホットな情報をもたらした。その内容を聞いた韓国当局者は、『南北統一は案外早いかもしれない』という印象を受けたというのだ。その報告を受けた朴大統領からは『南北再統一が来年にも』といった発言が飛び出したわけだ。」
「それでは、脱北の北幹部は何をもたらしたのか。簡単にいえば、『金正恩政権は崩壊寸前だ』というのだ。北指導部は統治能力を失い、いつ崩壊しても不思議ではないというのだ。」
と説明している。
つまり手短に言えば、金正恩政権の崩壊が避けられなくなったときに、金正恩が素直に失脚する訳がないので、絶対に暴発するはずだから事前に備えをしておきなさいと言うメッセージだったということである。
まあ、分からないでもない話だが、少々笑いを抑えられない内容だ。素人の私でも、自分の次に位置するNo.2、No.3の人材を残虐な殺し方で抹殺しているのを見れば、その政権が長くないのは容易に予想できる。過去に北朝鮮では、黄長(ファン・ジャンヨプ)という朝鮮労働党書記であるNo.2の人材が敵国の韓国に亡命した事件を知っている。No.2程の人材が多くの情報を持って亡命すればいざ知らず、少なくとも名前も役職も分からない、中堅クラスの幹部が亡命したところで、それで事態が変わるとは思えない。少なくともその程度の諜報能力は韓国も持っているだろうから、ドラスティックに何かが変わるほどの決定的な事態の変化が知らされたとは考えにくい。だとすれば、私の様な素人ですら周知の事実を改めて知らされて、それで指揮権を持つ最高権力者が「南北再統一が来年にも」などと言うのであれば、何ともお粗末な国である。
しかし、である。今日はそこには目を瞑ろう。そういう話ではないのである。朝鮮半島には、絶対に統一できない理由があるのである。
それは、中国が韓国主導による朝鮮半島統一を認めないからである。もう少し厳密に言えば、中国主導による金正恩政権からの権力移譲以外に選択肢がないからである。例えて言えば、北朝鮮のクリミア化である。
順番に説明してみたい。まず、韓国が期待する韓国主導による朝鮮半島の統一シナリオを考えてみたい。統一後に何が残るかと言えば、そこには核兵器製造技術が残る。その技術者は金正恩ファミリーではないから、統一後は核兵器開発技術者は追放されたり処刑されたりすることはない。一時的にある程度の核兵器は叩き潰されるかも知れないが、何処かに隠し持っていたり、ないしはその技術を生かして短期間に核兵器が製造できる状況ではあるから、統一後の韓国が核兵器保持を目指すことは容易に予想がつく。その時、アメリカは韓国に制裁を課そうとするが、あれだけアメリカがプレッシャーをかけても中国にひた走った韓国を止めることは出来ない。韓国からすれば、いつまで経ってもアメリカにも中国にも大きな態度が取れない背景には核武装していないからという気持ちがあるから、「ここは踏ん張りどころ」とばかりに、歯を食いしばってその制裁に耐えるだろう。韓国の国民感情も極めて感情的だから、アメリカ嫌いで且つ中国嫌いの国民性から、「ここで妥協したら、孫子の代まで禍根を残す」と思って耐えるに違いない。
では中国はどうか?中国は、韓国人が本心では中国嫌いであることを熟知している。事大主義の韓国が中国に長い長い歴史の中で逆らわなかったのは、中国の力が絶大で、全く逆らう余地がなかったからである。しかし、核兵器を持ちさえすれば、中国とやっと対等の関係になれる・・・と思うであろうから、3000年の歴史の中の積年の恨みをここで晴らそうと韓国が考えるのは痛いほど良く分かっているはずである。しかし、その韓国が核兵器を持ち、そして現在の中朝国境にて韓国の核が中国に向けられる時、今までの北朝鮮という緩衝地帯が無くなり、直接的な脅威がそこにあることを実感することになる。
この様な事を中国が黙って見ている訳がない。もっとも考えられるシナリオは、金正恩ファミリー全員の亡命を中国が受け入れ、その際に臨時で樹立されるクーデター政権にクリミアの様に中国併合を申し出させるのである。ロシア軍がそうであったように、電光石火の如く平壌を中国軍が制圧し、中国軍を背景とした臨時政府が早々に宣言してしまえば、もはや韓国は手が出せない。北朝鮮の核がそのまま中国の核に置き換えられ、一方で、世間知らずの若造の暴発の恐怖は払拭される。しかし、韓国が幾ら異論を唱えても、もはや覆水盆に返らずである。平壌を制圧した中国を追い払う力は、韓国にもアメリカにもない。
この様に書くと、金正恩が亡命提案を呑む訳がないと言われるかも知れないが、軍国主義教育を徹底された者であればどうか知らないが、彼はスイスで多感な時期を過ごし、平和的な生活をすっかり享受してきた経験者である。名誉の為に、一族郎党を全て死に追いやるような選択よりも、金正恩ファミリー全員の命の保証と経済的な保証を優先するはずである。これまで、No.2、No.3の人材を残虐な殺し方で抹殺してきた中で、これが単なるバカヤローであればもっと短期に政権は崩壊しているはずである。にも拘らず、未だに政権を掌握している背景には、優秀なブレーンがいると共に、ギリギリのところで感情を抑えて暴発を踏みとどまる能力位はあるのである。であれば、政権の崩壊が確実視された時点で、中国に亡命を打診するのは目に見えている。中国は中国で、その様なサインがいつ出ても大丈夫なように、非常に注意深く見守っているはずである。
その様な関係が中国と北朝鮮の間にあることに朴槿恵大統領は目をそむけ、先日の中国での抗日70周年の軍事パレードに参加し、世界に「習近平国家主席への忠誠」を示してしまった。仮に金正恩政権の崩壊が真近に迫っているとして、現在の韓国の経済状況は風前の灯である。この経済状況で中国が北朝鮮を併合した際に、韓国が中国と絶縁関係を取ることは経済的な自殺となる。既に、「何処までも、中国様について行きます」と宣誓してしまっているのだから、もう、逃げることは出来ない。クリミアを取り返すことができないアメリカを見ても分かるように、アメリカも北朝鮮を取り返すことは出来ない。韓国は、中国のしたことを追認するしか道が残されていないのである。
少し考えれば明らかなことで、多分、中国もアメリカも、この程度のシミュレーションはしているだろう。しかし、韓国は楽天的な考えしかできない国だから、この様なシナリオは思いもしないかも知れない。しかし、現実は思っているより厳しいのである。
結論として、朝鮮半島は永遠の分断が間もなく確定することになるだろう。
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長谷川良 ウィーン発コンフィデンシャル2015年10月1日「朴大統領『南北統一近し』発言の背景」
これは今年の7月、朴槿恵大統領が何の脈略もなく突然「来年にも南北は統一されるかもしれないから、準備するように」と言い出したというニュースを受けての続報記事である。ここでは、その根拠が最近になって明らかになったということで、その理由は
「北朝鮮労働党幹部の一人が脱北し、韓国当局に北国内のホットな情報をもたらした。その内容を聞いた韓国当局者は、『南北統一は案外早いかもしれない』という印象を受けたというのだ。その報告を受けた朴大統領からは『南北再統一が来年にも』といった発言が飛び出したわけだ。」
「それでは、脱北の北幹部は何をもたらしたのか。簡単にいえば、『金正恩政権は崩壊寸前だ』というのだ。北指導部は統治能力を失い、いつ崩壊しても不思議ではないというのだ。」
と説明している。
つまり手短に言えば、金正恩政権の崩壊が避けられなくなったときに、金正恩が素直に失脚する訳がないので、絶対に暴発するはずだから事前に備えをしておきなさいと言うメッセージだったということである。
まあ、分からないでもない話だが、少々笑いを抑えられない内容だ。素人の私でも、自分の次に位置するNo.2、No.3の人材を残虐な殺し方で抹殺しているのを見れば、その政権が長くないのは容易に予想できる。過去に北朝鮮では、黄長(ファン・ジャンヨプ)という朝鮮労働党書記であるNo.2の人材が敵国の韓国に亡命した事件を知っている。No.2程の人材が多くの情報を持って亡命すればいざ知らず、少なくとも名前も役職も分からない、中堅クラスの幹部が亡命したところで、それで事態が変わるとは思えない。少なくともその程度の諜報能力は韓国も持っているだろうから、ドラスティックに何かが変わるほどの決定的な事態の変化が知らされたとは考えにくい。だとすれば、私の様な素人ですら周知の事実を改めて知らされて、それで指揮権を持つ最高権力者が「南北再統一が来年にも」などと言うのであれば、何ともお粗末な国である。
しかし、である。今日はそこには目を瞑ろう。そういう話ではないのである。朝鮮半島には、絶対に統一できない理由があるのである。
それは、中国が韓国主導による朝鮮半島統一を認めないからである。もう少し厳密に言えば、中国主導による金正恩政権からの権力移譲以外に選択肢がないからである。例えて言えば、北朝鮮のクリミア化である。
順番に説明してみたい。まず、韓国が期待する韓国主導による朝鮮半島の統一シナリオを考えてみたい。統一後に何が残るかと言えば、そこには核兵器製造技術が残る。その技術者は金正恩ファミリーではないから、統一後は核兵器開発技術者は追放されたり処刑されたりすることはない。一時的にある程度の核兵器は叩き潰されるかも知れないが、何処かに隠し持っていたり、ないしはその技術を生かして短期間に核兵器が製造できる状況ではあるから、統一後の韓国が核兵器保持を目指すことは容易に予想がつく。その時、アメリカは韓国に制裁を課そうとするが、あれだけアメリカがプレッシャーをかけても中国にひた走った韓国を止めることは出来ない。韓国からすれば、いつまで経ってもアメリカにも中国にも大きな態度が取れない背景には核武装していないからという気持ちがあるから、「ここは踏ん張りどころ」とばかりに、歯を食いしばってその制裁に耐えるだろう。韓国の国民感情も極めて感情的だから、アメリカ嫌いで且つ中国嫌いの国民性から、「ここで妥協したら、孫子の代まで禍根を残す」と思って耐えるに違いない。
では中国はどうか?中国は、韓国人が本心では中国嫌いであることを熟知している。事大主義の韓国が中国に長い長い歴史の中で逆らわなかったのは、中国の力が絶大で、全く逆らう余地がなかったからである。しかし、核兵器を持ちさえすれば、中国とやっと対等の関係になれる・・・と思うであろうから、3000年の歴史の中の積年の恨みをここで晴らそうと韓国が考えるのは痛いほど良く分かっているはずである。しかし、その韓国が核兵器を持ち、そして現在の中朝国境にて韓国の核が中国に向けられる時、今までの北朝鮮という緩衝地帯が無くなり、直接的な脅威がそこにあることを実感することになる。
この様な事を中国が黙って見ている訳がない。もっとも考えられるシナリオは、金正恩ファミリー全員の亡命を中国が受け入れ、その際に臨時で樹立されるクーデター政権にクリミアの様に中国併合を申し出させるのである。ロシア軍がそうであったように、電光石火の如く平壌を中国軍が制圧し、中国軍を背景とした臨時政府が早々に宣言してしまえば、もはや韓国は手が出せない。北朝鮮の核がそのまま中国の核に置き換えられ、一方で、世間知らずの若造の暴発の恐怖は払拭される。しかし、韓国が幾ら異論を唱えても、もはや覆水盆に返らずである。平壌を制圧した中国を追い払う力は、韓国にもアメリカにもない。
この様に書くと、金正恩が亡命提案を呑む訳がないと言われるかも知れないが、軍国主義教育を徹底された者であればどうか知らないが、彼はスイスで多感な時期を過ごし、平和的な生活をすっかり享受してきた経験者である。名誉の為に、一族郎党を全て死に追いやるような選択よりも、金正恩ファミリー全員の命の保証と経済的な保証を優先するはずである。これまで、No.2、No.3の人材を残虐な殺し方で抹殺してきた中で、これが単なるバカヤローであればもっと短期に政権は崩壊しているはずである。にも拘らず、未だに政権を掌握している背景には、優秀なブレーンがいると共に、ギリギリのところで感情を抑えて暴発を踏みとどまる能力位はあるのである。であれば、政権の崩壊が確実視された時点で、中国に亡命を打診するのは目に見えている。中国は中国で、その様なサインがいつ出ても大丈夫なように、非常に注意深く見守っているはずである。
その様な関係が中国と北朝鮮の間にあることに朴槿恵大統領は目をそむけ、先日の中国での抗日70周年の軍事パレードに参加し、世界に「習近平国家主席への忠誠」を示してしまった。仮に金正恩政権の崩壊が真近に迫っているとして、現在の韓国の経済状況は風前の灯である。この経済状況で中国が北朝鮮を併合した際に、韓国が中国と絶縁関係を取ることは経済的な自殺となる。既に、「何処までも、中国様について行きます」と宣誓してしまっているのだから、もう、逃げることは出来ない。クリミアを取り返すことができないアメリカを見ても分かるように、アメリカも北朝鮮を取り返すことは出来ない。韓国は、中国のしたことを追認するしか道が残されていないのである。
少し考えれば明らかなことで、多分、中国もアメリカも、この程度のシミュレーションはしているだろう。しかし、韓国は楽天的な考えしかできない国だから、この様なシナリオは思いもしないかも知れない。しかし、現実は思っているより厳しいのである。
結論として、朝鮮半島は永遠の分断が間もなく確定することになるだろう。
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