稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

No.17(昭和60年9月20日)箏曲「六段の調べ」の初段による少年剣道の基本動作

2018年08月22日 | 長井長正範士の遺文


○箏曲「六段の調べ」の初段による少年剣道の基本動作

着眼の趣旨
初めて剣道に入る少年に対して最も力を入れて指導しなければならないのは足の運用である。之が為、木刀又は竹刀を持たす前に、時間をかけて前進後退、さばき足を指導しなくてはならない。これをおろそかにして、すぐ竹刀を持たせて打つことを教えるのは望ましくない。故に先ず素手で、次に帯刀のまま、中段の構えのまま、一足一刀へと導入してゆくのである。そこでこの大切な足の運用を長時間かけて指導するに当り、少年に飽きがこないように、音感教育を兼ね、リズムに乗って、無理の無い自然体の正しい動作をさせる為、箏曲「六段の調べ」の初段を採用した。「六段の調べ」は日本民族独自から生れた名曲であり、日本人の誰しもが心にひびく優雅なテンポであるからである。そもそも世の中はすべて数字から成り立っている。数字から離れたものは何一つとしてないのである。従って剣道も亦、数字を無視してはならない。即ち剣道の拍子は一二、一二の拍子である。一二三の三拍子ではないのである。これに着眼して選んだ。但し二段以上は徐々にテンポが早くなるので、初心者にはむずかしいため、初段を繰返し反覆して行うことにした。要するに六段の調べにも合うような剣道でありたい。剣道に最も大切な呼吸をこの曲に合わせ、体得することが望ましい。尚、六段の調べの各段の拍子は四分の二拍子の五十二小節から成り立っている。

指導要領
1)この指導は足の運用、構え方、納め刀、中段の構え、正面打、小手打、小手面の連続打、左右の打がひと通り出来た頃より、リズムに乗せて反ぷく指導するのがよい。
2)最初拍子に馴れるまでは、指導者は曲に合わせて拍子木などの補助手段で導入したほうがよい。

指導順序
1)テーンと鳴れば立礼十五度以下同じ
2)トン、シャンで心を落つけ待つ
3)次の鳴り始めから動作を開始する
 四分の二拍子の動き方は、前進の時は一で右足左足、二でそのまま待ち、三で右足左足と前へ、
 四で待つ。後退はこれに準ずる。右前進後退を一回とし、十三回行うと、丁度五十二節の初段
 の曲が終る。所要時間は1分38秒である。
4)終れば直ちに前後左右の列を正しく整頓し、気をつけの姿勢で待つ。(素手の時は両手を腰にあ
 てる方がふらつかないでよい)
第二回)素手のままで前後左右
第三回)中段の構えのまま前進後退
第四回)中段のまま前後左右
第五回)正面打、前進後退

この場合、動作の仕方を説明すると
1)先ず、さげ刀の姿勢で待つ
2)テーンと鳴ればさげ刀のまま礼
3)トン、シャンで帯刀、直ちに構え刀
4)次の鳴り始めから前進後退し乍ら正面打を行う。第三回も初めの動作はこれと同じ。
 以下すべてこれに準ずる。
(振りかぶって面を打つ動作は一挙動でなければならない。)
5)終れば中段の構えになり、納め刀をする。以下前回同様。

以上、習熟するに従っていろいろ工夫してやって貰うこと。要はこのリズムに乗って形のくずれないよう、自然体で知らずして剣道の大切な呼吸をおぼえさすことにある。終り。

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【粕井注記】

この箏曲(そうきょく)「六段の調べ」の初段による少年剣道の基本動作は、
私が長正館に入館した平成10年には影も形もありませんでした。

おそらく普通に基本動作を練習したほうが効率的だったのだろうと想像します。
コメント
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