今日のうた

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精神0

2021-06-09 08:43:21 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
なぜこの国では「選択的夫婦別姓」が認められないのだろう。
別姓にしたい人だけがするのに、なぜ人がすることにすら
反対する人がいるのだろう。
なぜこの国では「LGBTなど性的少数者をめぐる
『理解増進』法案」が、国会に提出されないのだろう。
なぜ人間の存在価値は生殖にあると信じているガラパゴス人間が、
いまだ政治の中枢にいるのだろう。
まるで時間が止まってしまった国のようだ。

「夫婦別姓確認訴訟」で話題になった想田和弘監督の
「精神0」を観る。
82才になる精神科医、山本昌知・芳子夫妻を撮った
ドキュメンタリー映画だ。
山本医師が引退することになり、患者にそのことを伝えることから
映画は始まる。
「ずっと先生に診てもらってきたのに、これからどうすればいいのか」、
という患者の話を、決して急かさず、はしょらず、じっと聞いている。
余計な口出しもしない。そして的確なアドバイスをする。
これほどじっくり人の話を聞いたことが、私にあっただろうか。

認知症の妻に対しても、決して怒らず、急かさず、余計な手出しはせず、
じっと見守っている。そして自分が出来ることをする。
カメラは二人をただ撮り続ける。
妻が自分の家の玄関の戸が開けられない時も、夫の疲れが極限に
達している時も、夫が日本酒の栓を開けられない時も、
カメラは静かに撮り続ける。

植木の陰にエサがそっと置かれ、野良猫がそれを食べる様子を、
駐車場で毛づくろいする様子を、カメラはじっと撮り続ける。

説明は要らない。いろいろな人の言葉や状況から様々なことが分かる。
押しつけがましい感動も要らない。二人の後姿を観ることで
いろいろな感情が心に溜まっていく。

石井裕也監督と鶴瓶さんの対話をYOU TUBEで観た。
その中で石井監督は、「分かりやすい映画は観て楽しかった、
で終わってしまう。そして1週間も経たないうちに忘れてしまう。
今は分かりやすい映画が多すぎる。
だがその時は分からなくても、ずっと心に残る映画がある」
鶴瓶さんは石井監督の「ぼくたちの家族」を絶賛していた。
確かにいい映画だった。

私は「精神0」を観た時に、石井監督の言葉を思い出した。
善意の安売り、感動のオンパレードのような映画は観たくない。
いい映画は多くを語らなくても、ゆっくりと静かに
観客の心に降りてくる。そして留(とど)まる。

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