今日のうた

思いつくままに書いています

暗い日曜日

2018-01-23 09:11:49 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
BS12で、夏目雅子の映画を特集していた。
借りたものも含め、4本を観た。制作順にならべると
鬼龍院花子の生涯
時代屋の女房
魚影の群れ
瀬戸内少年野球団

私は、『瀬戸内少年野球団』が一番早い時期に作られたものと思っていた。
これが最後の映画になるとは、夏目さんは心残りだったのではないだろうか。
『瀬戸内少年野球団』は、夏目さんの明るさが瀬戸内海とあいまって、
健康的な映画に仕上がっていて、楽しく観ることができる。
だが最後の映画として観ると、物足りなさが残る。
なぜなら、この映画は「夏目雅子」のために作られたように思えるからだ。

これは一般論だが、「スターのための映画」ほどつまらないものはない。
スターのために作られたとあっては、監督にも、他の出演者にも、
そして映画にも失礼だ。

『魚影の群れ』に、彼女の魅力が一番出ていた。
生命がほとばしる、奔放な、力強い、そして愛くるしい女性。
彼女が生きていたら、どんな映画が観られたのだろう。
もしかしたら映画というジャンルに嫌気がさして、舞台女優になっていたかもしれない。
病気で降板した舞台は、どんな芝居だったのだろう。




(画像はお借りしました)




①ドイツ・ハンガリー映画『暗い日曜日』の主人公、イロナを演じたエリカ・マロージャンは
 夏目雅子をほうふつとさせる。
 生命がほとばしり、骨太で、どの場面でも自分の生き方を貫き、キラキラしている。
 周りが傷つくことなど眼中にない。
 そしてひたすら美しい。
 彼女に翻弄され、彼女を見守るしかないラズロ役の「ヨアヒム・クロール」の
 やるせなさがいい。(写真左)
 ピアニストもからみ物語は進行するが、三人の上にナチスの陰が忍び寄る。
 観終わってから、最初のシーンとラストシーンがぴたっと繋がった。
 「やっぱ映画は脚本よね」とつぶやかずにはいられなかった。
 ちなみにこの映画は、ハンガリー楽曲『暗い日曜日』を基にしている。
 参考までに 「Gloomy Sunday -Original, Hungarian Version 」
              ↓
https://www.youtube.com/watch?v=jOqiolytFw4







②史実を声高に訴える映画よりも、知らない間に人々の生活に関わっているような
 映画が好きだ。
 『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島』も、難民問題を声高に叫ぶ映画ではない。
 少年の目を通して、知らない間に人々の生活に入り込み、静かに訴える。
              ↓
http://www.bitters.co.jp/umi/







③親子の関係を描いた作品で、日本の映画はなぜこうも濃密に関係を描くのだろう。
 理想の母親像、母子の絆のすばらしさ、お涙頂戴……。
 『母の身終(みじま)い』を観れば、多くを語らなくても、いや語らないからこそ、
 親子の本質が見えてくる。
              






④タイトルは仰々しいが、『湯を沸かすほどの熱い愛』を観て、宮沢りえの演技に感動した。
 彼女は一作ごとに上手くなっている。
 特に、死の床で口を薄っすらと開けた顔は老醜をさらし、
 私は母の最期を見ているようだった。
 70歳をとうに過ぎても「若さ、美貌、清純さ」を瓶詰にし、永久保存している
 女優もいるが、宮沢りえは100歳の老婆をも演じることができる役者だ。
 これからが楽しみだ。
              






⑤私が死の床で、「これまでに観た映画で一番印象に残っている映画は」と聞かれたら、
 迷うことなく『ニーチェの馬』と答えるだろう。
 高齢の父と娘が粗末な家に暮らしている。
 食事はいつも茹でたジャガイモ一つ。
 ついに井戸が枯れて、ジャガイモを茹でることができなくなる。
 生のジャガイモを前に娘が躊躇していると、父は「食べろ」とだけ言う。
 生きるとは、生きることの根っこを教えてくれた作品だ。
              



(画像はお借りしました)

 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 記憶の澱(おり) | トップ | パートナーズ制度導入へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

④映画、テレビ、ラジオ、動画」カテゴリの最新記事