今日のうた

思いつくままに書いています

残(のこん)の月

2016-08-09 11:00:59 | ③好きな歌と句と詩とことばと
大道寺将司句集『残(のこん)の月』より、心に残る句を引用させて頂きます。

 きれぎれの一生涯よひこばゆる
                   ※ひこばゆる=切り株や根元から若芽が出る

 花の朝のんどをごきと潰(つぶ)されし
                   ※のんど=喉

 ゆくすゑは土塊(つちくれ)ひとつ穴惑(あなまどい)

                   ※穴惑=晩秋になっても冬眠の穴に入らない蛇

 宵闇の墨色捩(よじ)れそめにけり


 裸木(はだかぎ)の描くいぶせき文字(もんじ)かな
  
                   ※いぶせき=気味が悪い

 被曝せる獣らの眼に寒昴(かんすばる)

 淡雪(あわゆき)の声消ゆるごと海に落つ

                   ※淡雪=降ってもすぐに解ける春の雪

 ひそやかに骨の泣く音(ね)や春の霜(しも)

 九条も螻蛄(けら)の生死(しょうじ)も軽からず

 雲の尻ゆたかに張つて梅雨明けぬ

 息(いき)の緒(お)を奪ひてしるき烏瓜(からすうり)

                  ※しるき=著(いちじる)しい、はっきりしている
                  ※烏瓜=夏にレースのような白い花が咲き、晩秋に
                   真っ赤な実に熟すウリ科の多年草

 いとど跳び指の先から昏(く)れゆけり
                   ※いとど=カマドムシ

 蒼茫(そうぼう)の枯れて国家の屹立(きつりつ)す

                   ※蒼茫=人民

 抗(あらが)はぬ民と侮る春の潮(しお)

 水馬(あめんぼう)描く容(かんばせ)消え残る

                   ※容=顔

追記1
2018年7月22日の「朝日歌壇」に、大道寺将司さんの遺作となった
『最終獄中通信』のことが載っていた。
私は大道寺さんが亡くなられていたことを知らなかった。
2017年5月24日に病死されたそうです。
ご冥福をお祈りいたします。

①「連続企業爆破事件の大道寺将司死刑囚が病死 2017年5月24日 産経新聞」

https://www.sankei.com/affairs/news/170524/afr1705240022-n1.html  
(2018年7月22日 記)                      
                          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする