今日のうた

思いつくままに書いています

雅歌 森雅美写真集 Graceful Flower

2016-08-06 05:57:45 | ③好きな歌と句と詩とことばと
右のページには森雅美さんの写真、左のページには雨宮雅子さんの短歌が載っています。
短歌は英訳されています。

https://www.amazon.co.jp/Graceful-Flower-%E6%A3%AE%E9%9B%85%E7%BE%8E%E5%86%99%E7%9C%9F%E9%9B%86-%E9%9B%85%E8%8A%B1-%E4%B8%80%E8%88%AC%E6%9B%B8/dp/4046520213

この本を前にして、雨宮さんの次の短歌を思い出していました。
 
誇り高く生き終へたしと思へるは父より継ぎしただひとつにて

写真はこれまで見たことのないもので、まるで水彩画のような、優美で気高く、
そして静かに主張しています。
短歌は旧仮名遣いと相まって、こんなに繊細で、こんなに美しく、
こんなに格調高い 歌を、私は知りません。
短歌と写真が、遠くからお互いを尊重しあい、それでいて柔らかなハーモニーを
奏でています。 思わず、姿勢を正して読んでいました。

私は少し前まで、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の跋扈(ばっこ)する政治の世界を
見ていたので、 なおさら心が洗われ、生き返るようでした。
本を通して、誇り高く生きてらっしゃる方を身近に感じることは、
かけがえのない経験でした。
2019年1月29日の私のブログ【雨宮雅子さんの歌】で引用させて頂いた歌と
重複するものがいくつかありますが、引用させて頂きます。

けふひと日ひかりによりて耐へさせよ昼顔のうへ夏のきてをり

萎えてなほ匂ひしるけき供花(くげ)のため狭められゆく夜の空間

息ざしの深くなる春 花の息に曇れる花舗(くわほ)の前をよぎりつ

眼窩(がんくわ)ふかくなりて老いゆく懼(おそ)れあり黄に耀(て)る花のかたへに坐せば

赤ワインくだりしのみどしづまりて花ひらくやうに夜が来てゐる

冬ばれのあした陶器の触れ合へば神経の花ひらきけり

葉蘭(えふらん)はかすかに震ふうつし世にはじめて緑(りょく)享(う)けたるごとく

見し花に花を重ねておもふさへ悪(あ)しき増殖をなすにあらずや

なにの火をもて浄(きよ)むべき一束の薔薇さかさまに風へ吊せり

いくたびも薔薇の真紅(しんく)にゆく視線花を疲らせゐるにあらずや

つひにはぐれてしまひし人と思ふまで忌(き)の日の百合ははげしく匂ふ

百合の香(か)のつよく漂ふ室内に白きブラウス乾きゆく雨季(うき)

くぐりぬけくぐりぬけきし夜なれや白木蓮は賑(にぎ)はしく咲き

さくらばな見てきたる眼をうすずみの死より甦(かへ)りしごとくみひらく

四照花(やまぼふし)咲く一山の油(ゆ)のごときちからに搦(から)めとられつつ往(ゆ)く

列島を春の潮(うしほ)のめぐるあさ木木はちからを引き合ひて立つ

髪梳(す)けるちからこもりてひたぶるに春の潮(うしほ)をひきしぼるなり

きさらぎはひかりの林 みなゆきて光の創(きず)を負ひてかへれよ

たんぽぽの綿毛流れて遠き世にをとめらが羊飼ひゐし五月

かなしみは瞼(まぶた)に触れて宿るらしうすく日の差す窓にむかへば

一日をみひらきし瞳(め)よゆふぐれはうすら明りの水に近づく

やはらかく髪に入りきて消えゆきぬ人のやうなる夜の呼吸は

たましひといふ不確(ふたし)かなもの包む夜餐(やさん)のための白きブラウス

コメント
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