いつ頃から知られていたのか,数学史の書籍を漁るか,webで検索すれば判明しそうなところであるが,
sn=1+2+...+n,
tn=13+23+...+n3
とおくとき,
tn=sn2
という見事な関係が成り立つ.
何年か前にもこの公式のことを思い出して,なぜこの等式が成り立つのか,理由がスッキリわかるような証明はないかとあれこれ考えを巡らせたことがある.その際は,数検1級か準1級向けの問題集に載っていた,この等式を導く興味深い証明問題だったのだが,そっちについては記事に取り上げたのかどうかすらももはや忘れてしまった。
それはともかくとして,再びこの問題に立ち返ってみたところ,別段画期的な感じはしないものの,意欲的な中学3年生程度なら理解できそうな証明を思いついたので,ここに記しておく.数学Bの問題集を漁れば問題として取り上げられていそうな程度の話であるが.
まず,
sn=n(n+1)/2
であることは既知とする.この点ですでに標準的な中学数学のレベルを超えている気はするが,中学入試の準備のために学習塾に通っている小学生ならばこの公式(そのものというより,具体的な問題設定を通した見出し方や使い方)を叩き込まれているので,「中学3年生程度」の看板に偽り無しといってよいと思う.
一方,そもそもの定義により
sn+1=sn+(n+1)
であるから,この両辺を2乗して
sn+12=(sn+(n+1))2
=sn2+2sn(n+1)+(n+1)2
となる.この展開公式は中学3年の1学期に習うので問題ない.
ところで,
2sn=n(n+1)
であるから,
2sn(n+1)+(n+1)2=n(n+1)2+(n+1)2
となり,この右辺はさらに因数分解して (n+1)(n+1)2,すなわち (n+1)3 になる.
この式変形は超中学級といえるかもしれないが,(n+1)2=A と置き換えると
nA+A=nA+1A=(n+1)A
となる.このようにほぐせばたいていの中学3年生ならば理解できよう.(願望)
以上により,
sn+12-sn2=(n+1)3
という関係が得られたので,s1=1 であることに注意した上で,高校数学風にいえば「階差数列の和の公式」を発動することにより,
sn2=tn
に到達する.この下りは,
sn2-sn-12=n3,
sn-12-sn-22=(n-1)3,
...
s22-s12=23
と並べておいて,これらの等式について
(左辺の和)=(右辺の和)
となり,左辺の和は sn2-1 となるので,-1 を右辺に移項すれば右辺が tn に等しくなる,という説明の仕方で多くの中学生は理解してくれるであろうと信ずる.
なお,この手の公式を「目で理解しよう」という面白い試みは,例えば Roger B. Nelsen の "Proofs without Words" (Mathematical Association of America) の三部作のいずれにも Integer Sums という語句の入った章で美しい図に仕上げられて何通りも紹介されている.
sn=1+2+...+n,
tn=13+23+...+n3
とおくとき,
tn=sn2
という見事な関係が成り立つ.
何年か前にもこの公式のことを思い出して,なぜこの等式が成り立つのか,理由がスッキリわかるような証明はないかとあれこれ考えを巡らせたことがある.その際は,数検1級か準1級向けの問題集に載っていた,この等式を導く興味深い証明問題だったのだが,そっちについては記事に取り上げたのかどうかすらももはや忘れてしまった。
それはともかくとして,再びこの問題に立ち返ってみたところ,別段画期的な感じはしないものの,意欲的な中学3年生程度なら理解できそうな証明を思いついたので,ここに記しておく.数学Bの問題集を漁れば問題として取り上げられていそうな程度の話であるが.
まず,
sn=n(n+1)/2
であることは既知とする.この点ですでに標準的な中学数学のレベルを超えている気はするが,中学入試の準備のために学習塾に通っている小学生ならばこの公式(そのものというより,具体的な問題設定を通した見出し方や使い方)を叩き込まれているので,「中学3年生程度」の看板に偽り無しといってよいと思う.
一方,そもそもの定義により
sn+1=sn+(n+1)
であるから,この両辺を2乗して
sn+12=(sn+(n+1))2
=sn2+2sn(n+1)+(n+1)2
となる.この展開公式は中学3年の1学期に習うので問題ない.
ところで,
2sn=n(n+1)
であるから,
2sn(n+1)+(n+1)2=n(n+1)2+(n+1)2
となり,この右辺はさらに因数分解して (n+1)(n+1)2,すなわち (n+1)3 になる.
この式変形は超中学級といえるかもしれないが,(n+1)2=A と置き換えると
nA+A=nA+1A=(n+1)A
となる.このようにほぐせばたいていの中学3年生ならば理解できよう.(願望)
以上により,
sn+12-sn2=(n+1)3
という関係が得られたので,s1=1 であることに注意した上で,高校数学風にいえば「階差数列の和の公式」を発動することにより,
sn2=tn
に到達する.この下りは,
sn2-sn-12=n3,
sn-12-sn-22=(n-1)3,
...
s22-s12=23
と並べておいて,これらの等式について
(左辺の和)=(右辺の和)
となり,左辺の和は sn2-1 となるので,-1 を右辺に移項すれば右辺が tn に等しくなる,という説明の仕方で多くの中学生は理解してくれるであろうと信ずる.
なお,この手の公式を「目で理解しよう」という面白い試みは,例えば Roger B. Nelsen の "Proofs without Words" (Mathematical Association of America) の三部作のいずれにも Integer Sums という語句の入った章で美しい図に仕上げられて何通りも紹介されている.