ぜつぼうの濁点原田 宗典教育画劇このアイテムの詳細を見る |
小説家原田宗典による絵本。
なんて不思議な話なのだろう。昔、存在したという言葉の世界。その真ん中に穏やかなひらがなの国があったという。
「や」行の町の道端に「〝」と濁点が置き去りにされていた。もともとは、主人の「ぜつぼう」についていた濁点であった。いつも接している主人の絶望の深さが自分のせいではないかと思って、主人の「ぜつぼう」に頼んで、捨ててもらったのだ。濁点は、他のひらがなたちに一緒になってくれるように頼んだが、「ぜつぼう」に付いていた濁点は誰からも嫌われた。
「おせっかい」が、濁点を「し」の沼に放り込んだ。濁った水に中で溶けてしまえばいいと言われて。
濁った水の中に沈みながら、主人だった「ぜつぼう」の気持ちが理解できたような気がした。濁点は、もともと、主人を思って捨てられたのだから、こうして沈んでいく孤独というむなしさの中から、主人を救い出せたのだから、それを喜びとしようと思った。これでいいのだ。これでよかったのだ……というつぶやきが「きほう」の三文字に変わった。「きほう」は、濁点に自分にくっつけと言う。水面に浮かんだ時、「きぼう」という言葉が生まれ、ぱちんとはじけて、あまねくこの世を満たしたという。
不思議な神話的世界。濁点の心意気が希望を生み出したのだ。よだかの星に通じる世界。