せかいでいちばんつよい国 | |
デビッド マッキー | |
光村教育図書 |
かつての愚かな敗戦の月に、読んでもらいたい絵本。前にも、紹介したことがあったが、良い作品は何度でも語られなくては。人間は、忘れやすいい気もであるから。
絵本に登場する大統領の信じていることは、彼の大きな国の国民の信じていること「自分たちの暮らしほど素敵なものはない」という考えをもっと深くしたものでした。実際は、深いか浅いかは読者の判断で。
大統領は、世界中の人々が自分の国民と同じように幸せになるために、次々と、世界一の軍隊を使ってたくさんの国を征服していきました。多くの人の血が流され、死んでいっても、幸せになるためには仕方のないことでした。
そして、ついに一つの小さな国だけを残すのみとなりました。なんと、その国は軍隊のない平和な国でした。
これから先の展開は、どうぞ、機会がありましたらぜひ読んでみてください。特に汚れちまった大人たちに。
征服した国の文化は否定され、自国の文化が押し付けられます。その時の、正当化する理屈の貧しいことは、歴史を振り返ってみれば理解できることです。
現実は、この絵本の結末のようには進まないでしょう。だからこそ、何度でも語り続けていくことが、私たちに出来ることです。時代は、ますます閉塞感を増しています。そんな時、この絵本のような支配者が登場する危険性を、十分に認識しておいてください。独裁主義やファシズムは、そよ風とともにやってくるのですから。