はるかな島ダイアン ホフマイアー光村教育図書このアイテムの詳細を見る |
男は独りになりたかった。そうすることを認められぬ男は、船から飛び降り不毛の島に泳ぎ着いた。岩肌がむき出しの島であった。生きていく為の水はあった。また、寝床と隠れ家となる洞窟もあった。不幸な男であった。
明くる朝、海岸に死にかけた雄鶏と、米のもみが入った袋が流れ着いた。ここから、孤独な男と島の物語がスタートする。米を雄鶏に与え、雄鶏は死を免れた。それから残ったもみを蒔いた。やがて、稲が実る頃、強風に吹き流された船が島に流れ着いた。乗組員たちは洞窟の中の男を読んだが、男はついに姿を現さなかった。乗組員たちは、実った稲を刈り取ると、レモンの木を残して去って行った。男はレモンの木を植えた。それから時間がたち、また、島に強風に吹き寄せられた船があった。乗組員たちは、稲を刈り、レモンの実をとると、バナナやパイナップルの苗を置いて行った。この時も、男は隠れ通した。不毛の島は、段々と緑の島へと変貌していった。
その後も、何回も船が風に弾き寄せられて島にやってきた。その都度、島の収穫物をとると、何らかの苗や家畜を置いていった。そして、島は、さらに緑と生き物が増えていった。
この島のうわさは、ポルトガル女王の耳に入った。強制的に島から、ポルトガルに連れてこられた男は、女王に謁見して望みを聴かれた。しかし、男の望みは、1日も早く島に帰ることであった。島へ帰る日、女王の縫物をしている娘が男についてきた。彼女は、男を通じてはるかな島を夢見たのだろう。男が拒んでも、娘は島についていった。口もきかずに、2人は、島の土地を掘っては植え、掘っては植えて働き続けた。娘は、楽しそうに歌を歌う。
ある日、男は娘の身体に新しい命が宿ったことに気がついた。そう、彼はもう化けものではない、世界一幸福な男であった。
この本を読んでいて、男の本当の孤独な理由は結局はわからずじまいである。
ただ、本書の後書きでこの話が実話に基づいていることが明かされる。
しかし、本書を読むときには、必ずしもこの実話を知らなくても、それは一つの大事な読み方である。
1510年、インドのゴアにポルトガルの総督が艦隊を率いて来航した。その時、乗組員にフェルナンド・ロペスという男がいた。ゴアを占領したアルブケルケ総統は、軍事力補給のために、ロペスを残して帰国した。ロペスは現地の人間を仲良くなりすぎた。このことが、再来航した総督の怒りをかい、要望が変わるほどの拷問を受けることになった。ロペスは逃亡し、別のポルトガル船に乗り込み、セントヘレナ島というさびしい島で船が水を補給している間に、島に姿を隠した。これが、彼の独りで隠れて生活を始めた理由。
不毛の島が、命あふれる島に変わっていく様子に、男の孤独感を重ねながら、その変貌に心が躍る。
久しぶりと言えば、トッペイさんのブログを久しぶりに拝見させて頂いてます。
久しぶりに、生きる事って希望の種を残す事なんだな・・・と、このブログを読んで感じ入ってます。トッペイさんの書かれる概要がうまくまとめられていて、生き様をも感じさせてくれます。
不毛の島を緑に変えていくプロセスは、人のこころに植え付けていく愛のようにも思えますね。
・・・また新たな1日を始めたいと思います。ありがとうございました。
不毛な島が、命に満ちた緑の島になる過程と、不幸な男が幸せな男に変わる経過がとても心に残る作品でした。