しらない ひと (講談社の翻訳絵本クラシックセレクション)シェル・リンギ講談社このアイテムの詳細を見る |
子どもの絵本も、大人が読んだ場合、そこに大切な寓意を読み取ることができるものが少なくない。
戦争という、生命にとって理不尽な行為も、子ども達がどう理解しているのだろうか。
子ども達の手本となるべき大人達が、まず、戦争を始める。そして、子ども達が犠牲者となる。
恐怖は、相手への無知、無理解から生じるのだろう。相手をよく知ることができず、妄想だけが膨らんでいく。
この絵本に登場する国は、王様が治める平和な国であった。そこへ、ある時、知らない人がやってくる。知らない人の身体は大きかった。ちょうど、ガリバー旅行記の、リリパット王国を訪れたガリバーのような存在であった。その国の人にとっては、知らない人は、足だけの存在のようであった。大使が呼びかけたって、立ち去るように使いの鳥を送った所で、反応は無かった。
王様は、軍隊を集めて、知らない人の足の前で威嚇行動をとった。でも、反応があるはずがない。軍隊の攻撃は、だんだんとエスカレートしていった。しかし、足はびくともしなかった。ついに、王様は、最終兵器を使うことになった。
その時、突然、知らない人が泣き出した。孤独からだったのか、一晩中涙を流し続けた。涙は、海となり、朝になると、国中の誰もが、知らない人と同じ目線の所にいた。王様は、初めて知らない人の目を見た。そして言った。「ようこそ、わが国へ」。
全ての心配事が消え去った。恐怖も消え去った。その後、知らない人は、王国の人たちと、末永く仲良く暮らしたという。
付記:この絵本が出版されたのは、2004年の事である。しかし、ネットでは、高値で取引されている。何故、そうなったのかはよくは分からない。図書館に行けば、読むことができるので、ただで読んだ方が良いだろう。
図書館で早速借りてみようっと…