知るを楽しむ・「稲作革命」を観て

　汚染米が全国に流通したことで、色々な事が表面に出てきました。本来輸入する必要のない外国の米を年間７７万トンも輸入しています。そして、問題となっている汚染米の８割が輸入米です。
　一方では、国内での米の減反政策です。日本の食料自給率は４０％を切っています。
　また、外国から米をはじめとした農作物を輸入するということは、バーチャルウォーターとして換算した場合、かなりの水を輸入していることと同じだということになります。地球上に限られた水資源を、農作物の輸入ということを通じて、我が国で大量に消費していることになります。
　国内では、稲作農家の収入を時給に換算すると８７９円にしかならないそうです。農業政策や、食糧政策の歯車が狂っているようです。
　以前は、米は主食であるという観点から、国が食糧管理制度を採用していました。この制度を通じて、食の安全も守られていました。しかし、この制度も１９９５年のWTO（世界貿易機関）協定の発効とともに廃止されてしまいました。１９９４年には米業者が許可制から登録制になっています。「規制緩和」の名の下に行われました。その後、２００４年には、小泉政権の下、登録制も廃止されて、届け出だけで米の売買ができるようになりました。こうしたことが、今回のような悪徳業者の米の流通への参入を招いたわけです。国が米の流通を監督する責任を完全に放棄したのは、小泉さんの「功績」でしょう。どうも、アメリカや多国籍企業や商社の利益のための政策だったようです。
　米の国際取引は、もみの状態ではなく、精米の状態で行われるそうです。そのために劣化しやすく、カビ米が発生するのも当然のことでしょう。
　では、何故外国からわざわざ米を輸入する必要があるのでしょうか。MA（ミニマムアクセス）米と呼んでいる米をです。政府は、WTO農業協定で輸入枠が義務づけられているということを根拠としてきました。しかし、実際は、ミニマム・アクセス制度上では、輸入の義務ではなく、輸入したい業者へ輸入の機会を提供することを意味しているのです。この場合も、通常の関税よりも低い関税で輸入する枠を、国の責任で設けるということだけだということです。よその国がやっているよう、枠は設けたが輸入する民間業者がいなかったと主張もできるそうです。おかしなことに、日本では、食管法で国が輸入することにしてしまっているわけです。（実際は、商社が国から委託を受けて代行しています。）

　１０月１日に、NHK教育テレビで放送した「知るを楽しむ・稲作革命」は、とても示唆に富む番組でした。千葉県香取市で農業を営む、農業技術指導者の岩澤信夫さんの環境にやさしい田んぼ作りの実践を紹介していました。田んぼを耕さない「不耕起栽培」と「冬季湛水（たんすい）」が環境保全農業として注目を集めるようになって、全国から岩澤さんの所に指導を受けに多くの人がやってきます。福島県郡山の冬でも水を張っている田んぼに、白鳥が飛来するようになったことは、環境に優しいことを象徴しているようでした。番組では、東京町田市で、岩澤さんのやり方で３０アールの田んぼを使って稲作を続けている、主婦を中心にしたグループが紹介されていました。当初は、７年前に小学校の先生が、授業の一環として始めた田んぼ作りを引き継いだものだそうです。無農薬で、肥料もおからや米糠を使っていました。そのため、田んぼには色々な生物が育ち、地元の大切なコミュニティの場所になっていました。子供たちも安心して遊ぶことが出来ます。こうした市民による活動も都会に広がっているそうです。
　岩澤さんの言う通り、我々は大地によって生きていることを忘れてはならないでしょう。日本の将来の農業を心配していました。今、国民は真剣に農業の事を考えなくてはならないのでしょう。田んぼは、多くの水をため込む自然のダムの働きもしていましたね。