ちいさなへいたいパウル・ヴェルレプト朔北社このアイテムの詳細を見る |
「あるひ、せんそうは、はじまった。」でこの絵本が始まるのだが、最初のページの絵は、子どもがテーブルの上の戦車のおもちゃを見ているところが描かれている。そばには、犬のぬいぐるみ。次のページでは、犬のぬいぐるみを抱きながら、片方の手には、戦車のおもちゃがつながれたひもを持っている。
この子どもが、銃を持った兵隊になっているところが次に描かれている。同じような子どもたちが軍服を着て敬礼をしている。足元には、それぞれ犬のぬいぐるみ。
よく考えれ見ると、ショッキングな表現である。この小さな兵隊たちには、戦争の意味もよく分からない。原因も分からない。ただし、容赦なく仲間の死が訪れる。やはり、そばには、いつも犬のぬいぐるみが一緒だ。そしていつの間にか戦争が終わっている。喜ぶ戦勝国の人たち。でも、この小さな兵隊には、大勢の人が家をなくし、悲しんでいる人がたくさんいることも、ちゃんと見ているのだ。彼の家も破壊されていた。その後のページには、墓石が並ぶ墓地の風景が描かれている。死んでしまった大勢の友達。彼は、これからも生きたいと思っている。戦争の事は考えたくもない。でも、眠れぬ夜は、あれが何だったのか、一体何が起こったのか考える。
子どもの姿に託した小さな兵隊。
では、何故「ちいさなへいたい」なのか?作者のパウル・ヴェルレプトハは語るのだ。「人は ちっぽけな 存在だから ―戦争が 起きれば なおさら そして 戦争には 勝つものなど いないのだから」と。
この絵本は、JBBY(日本国際児童図書評議会)が主催する平和と寛容の国際絵本展「ハロー・ディア・エネミー!80作品展」の1冊として選ばれ全国を巡回しているという。皆さんのそばでも開催されているかもしれない。