トッペイのみんなちがってみんないい

透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

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加藤周一氏死去

2008-12-06 20:24:27 | 社会
 憲法九条の会の呼びかけ人の一人である評論家の加藤周一氏が亡くなられた。小田実氏に続き、大きな存在を失うことになった。しかし、九条の会は草の根の運動として全国に拡大している。しっかりと、国民の間に根付こうとしている。しかし、油断をするといつか来た日のように、逆流の波がこの国を襲う可能性がある。

 各新聞でも、死去の報道がなされているが、憲法改正法案を発表している改憲派の読売新聞の今日の記事には、9条の会についての言及がなされていない。右派の産経新聞でも触れられているのだが。

「羊の歌」作家で評論家の加藤周一さんが死去(読売新聞) - goo ニュース

加藤周一さん死去=文化から政治まで幅広く評論(時事通信) - goo ニュース

加藤周一氏が死去 戦後を代表する知識人(共同通信) - goo ニュース

加藤周一氏講演会(1/7)老人と学生の未来-戦争か平和か-


加藤周一氏講演会(2/7)老人と学生の未来-戦争か平和か-


加藤周一氏講演会(3/7)老人と学生の未来-戦争か平和か-


  2006年12月8日(金)東京大学駒場キャンパス

マイノリティと文学 「謡曲・松虫」

2008-12-06 01:51:53 | 文学
 古今和歌集に「秋の野に人松蟲の聲すなりわれかと行きていざとむらはん」という読人知らずの歌がある。松虫の「まつ」は「待つ」の掛け言葉になっている。この和歌をベースに、男性の同性愛を描いたのが、謡曲「松虫」である。この和歌の「とむらはん」は、尋ね訪う意味の他に、本曲では「弔う」の意味も持っている。

 話は、大阪市の南の阿倍野の地が舞台となる。阿倍野の市で酒を売る店へ、いつも仲間を伴い飲みに来る男がいた。ある時、その男が酒屋の主人の前で「松虫の音に友をしのぶ」と語ったことから、主人は男にその次第を尋ねる。

 男が語った事、「昔、この阿倍野の松原を仲のよい二人の友が連れ立って通った。その折に、松虫の鳴く声が面白く聞こえるので、一人が秋の野にその声を慕って入っていった。もう一人は、暫く友を待っていたが、なかなか帰ってこなかったので、心配して野に探しに行った。すると、友は露の置いた草の上に倒れて死んでいた。『死なば一所とこそ思ひしに。こはそも何といひたる事ぞとて。泣き悲しめどかひぞなき』(死ぬ時は、必ず一緒に死のうと思っていたのに、これはもうどうしたら良いのだろうと泣き悲しんだが、今はどうする事もできない)。仕方なく、友の亡骸をそこに埋めたのです。実は、私は今でもその友の事が懐かしく思われて、松虫の声に誘われて、このように人の姿で現れてきた亡霊なのです。」

 間狂言の里人の語りで、男は友の後を追って、その場で自害したことが判明する。主人は、この男のために、阿倍野の原で一夜を過ごし、夜通し経を読み回向をした。そこへ男の亡霊が現れ、回向を感謝するとともに、虫の音に興じて舞を舞った後、姿を消した。その後は、ただ朝の野に鳴く虫の音だけが残っているばかりであった。

『面白や。千草にすだく。虫の音の機織る音の きりはたりちよう きりはたりちよう。つづりさせてふきりぎりすひぐらし。いろいろの色音のなかにわきてわが忍ぶ。松虫の声。りんりんりんりんとして。夜の声めいめいたり』

 この作品で松虫とは、現在の鈴虫の事であろう。なお、キリギリスはコオロギの事である。友情を超えた恋愛感情からの男の執念が阿倍野の野に留まっている。

 現在、この話にちなんだ「松虫塚」が阿倍野に残っている。

上町線 松虫駅・松虫塚


 参考文献 佐成謙太郎「謡曲大観第五巻」(明治書院)
      野上豊一郎編 解注 謡曲全集巻四 (中央公論新社)