1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動」

2008-12-28 13:13:42 | 映画
昨日の日経新聞の夕刊に、ウガンダの反政府勢力である「神の抵抗軍」が、隣接す
るコンゴやスーダンの村を襲撃し、26人の住民が殺害されたという記事がのってい
ました。

現在、ウガンダ北部にあるパドンゴという難民キャンプには、政府軍と反政府軍と
の戦禍を逃れて60,000人の人たちが、身を寄せ合って生活しています。第七劇場で
上映中の「ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動」は、パドンゴで暮らす子供たちのド
キュメンタリーです。

反政府軍に誘拐された後に、反政府軍の少年兵として「二人の農民を、僕は、殺害
した」と語る少年のまなざし。反政府軍によって、両親を殺害された少女の涙。心
に大きな傷を負った子供たちが、年に一度、20,000校が参加し首都のカンパラで開
かれる「全国音楽大会」に参加するために、音楽や伝統舞踊を練習する姿をカメラ
は追いかけていきます。

子供たちにとって、音楽と伝統舞踏とは、
「歌はキャンプでの嫌なことを忘れさせてくれる。
病気や飢えや人が死んでいくのを。踊っていると故郷に帰った気分になる。」
ことができるたった一つのものなのです。

全国大会にトラックに乗って向かう時の、子供たちの喜びの表情。
はじめて高層ビルを見るときの驚き。
ライバル校を横目で見る時の、ちょっとやばそうな瞳。
大会で伝統舞踏を踊るときの、全身からあふれ出る誇りとアイデンティティー。
賞をもらい、難民キャンプに戻るときの、達成感。

映画を見ながら、何度も胸が熱くなりました。

「音楽家になりたい」「医者になって、キャンプの人たちをたすけたい」
未来の希望を語り始めた子供たちの瞳が、いつまでも、未来をみつめる瞳であってもらいたい・・・・

昨日の新聞記事を読んで、なおいっそうそう思う一作でした。






「全身小説家」(原一男監督)

2008-12-28 11:30:19 | 映画
全身小説家(原一男)を、DVDで見ました。
小説家井上光晴の晩年の姿を追い続けたドキュメンタリーでした。

映画は、61歳で肝臓癌の部分摘出手術をし、
さらに肺に転移した癌と闘う井上光晴の姿を追いかけながら、
井上光晴が書き続けた「井上光晴という作品」の姿を明らかにしていました。
この映画で初めて知ったのだけれど、
井上光晴の自筆の年譜には、ウソがいっぱい書かれていたのですね。

奥さんや文学伝習館の人たち、埴谷 雄高や瀬戸内寂聴に支えながら、
一日でも5時間でも、長く生きていこうとする井上光晴の姿に、
とても心がうたれました。
体がどんどん細くなって、髪の毛もうすくなっていくのに、眼はぎらぎらと
輝やきつづけていました。差別と世の中の不条理を見つめ続けた眼の輝き
なんだろうな、あれは。

「誰にも言えない真実が井上光晴にはあって、それを隠すためにうそをついてきた。
うそをつかなければ、いきてこれなかった」という瀬戸内寂聴の言葉や
「うそつきみっちゃんが小説家になった、文学は彼の天職。ウソでも表現してしまえば勝ち」
という埴谷 雄高の言葉。
自分の年賦でさえ嘘をついてみせ、「小説家としての人生」をつらぬいた
井上光晴への最大の賛辞なんだと思いました。