1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「ドイツ・イデオロギー(抄)」(カール・マルクス)

2008-12-29 23:30:32 | 
 今村仁司らが新訳で進めているマルクス・コレクションの中の、「ドイツ・イデオロギー(抄)」を読みました。以前、「ドイツ・イデオロギー」を読んだのは、大学生の頃だったと思います。「社会主義」という名の下での「制御と意識的な支配」の実験が、大きな悲劇を生んできたことを考えると、さすがにもう、マルクスの未来社会を語る言葉に、直接的に心動かされることがなくなっていました。たとえばマルクスは、次のようにコミュニズム革命を語っています。

「コミュニズム革命によって、(全面的な依存、つまり諸個人の世界史的な協働のこうした自然発生的形態は)、制御と意識的な支配へと変えられる。」

 しかし、マルクスが、「食うこと」、「飲むこと」、「住まうこと」、「着ること」など、生身の人間が生きていくということを、社会と歴史分析の基本に据えようとしたことは、いまもなお有効な視点なのだと思いました。

以下、心に残ったマルクスの文章をメモ。

「食うこと、飲むこと、住まうこと、着ること」について・・・
「われわれはすべての人間の生存、したがってすべての歴史の第一の前提を確認することから始めなくてはならない、すなわちその前提とは、人間は『歴史を作る』ことができるためには、まず生きることができなくてはならない、ということである。ところで生きることの中には、食うこと、飲むこと、住まうこと、着ることのすべてが、そしてなおいくつか他のことも含まれている。」
「われわれが出発点とする前提とは、すなわち現実的な諸個人、諸個人の活動および彼らの物質的な生活条件である。」

人間の本質について・・・
「人間の本質は、その現実的なあり方においては、社会的諸関係の総体である。」
「諸個人がその生を表出する仕方が、彼らの存在の仕方である。」

言語について・・・
「『精神』は当初から物質に『憑かれている』という呪いをもっている。この場合、物質は動きのある空気層、音の響きすなわち言語の形態をとって現われる。言語は意識と同じくらい古いー言語は実践的な意識であり、他の人間たちにとっても実在する、したがってまた私たち自身にとってはじめて実在する現実的意識である。」

幻想の共同性について・・・
「特殊的利害と普遍的利害の矛盾から、普遍的利害は国家として、現実の個別的かつ普遍的利害から分離した自立的な姿を受け取る。また共同の利害は同時に幻想の共同性という姿をとるが、その幻想は常に現実の土台に基づいている。」

来年は、ゆっくりとマルクスを読んでいきたいと思いました。