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神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 連環宇宙

2012-06-30 16:29:50 | SF

『連環宇宙』 ロバート・チャールズ・ウィルスン (創元SF文庫)


『時間封鎖』、『無限記憶』に続く3作目にして完結編。

自分のブログでは『無限記憶』は肩すかしだったと感想に書いてあるけど、実はほとんど記憶にない。読み直した方が良かったのかもしれないけれど、これを読むには何の問題もなかった。

舞台は時間封鎖が解かれた後の地球。巨大アーチによって他の惑星世界と次々につながって連環を成す世界。しかし、文明文化水準はほとんど今と変わらない。二、三十年後だしな。

そこに現れた少年が自動筆記で書き記すノートには、数万年未来の世界の様子と、地球の最期が描かれているのであった。

ということで、封鎖解除後に連環世界から新たな石油資源を手に入れて、さらなる温暖化へ驀進する地球と、その数万年後にすべての生命体が死滅した地球の二つの未来が交互に語られる。

この少年は何者なのか、地球は本当に滅びるのか、そして、地球を封鎖し、連環宇宙を創りだした神とはどんな存在なのか。

『時間封鎖』からの数々の謎の答えはちゃんとここにある。


少年が狂人かもしれないという可能性を残すことで、ノートに描かれた地球の最期が真実かどうか、神の意図が真実かどうかは敢えて曖昧にされてしまっている。しかも、たとえ真実だったとしても、タイムパラドックスが発生して未来は変わっていくはず。このあたりの思考実験もおもしろい。

それ以上に、神の正体と、地球を封鎖した目的というのが興味深い。ありがちと言ってしまえばそうなのかもしれないが、おそらくキリスト教文化圏の人たちにとっては、我々日本人よりも衝撃的なんじゃないだろうか。

神の在り方や、エネルギー政策の未来、人類の未来について、著者の皮肉な考え方がいろいろな場面で垣間見えて、ちょっとにやにやしながら読んだところもあった。

壮大で壮絶なことが起こっている割には、落ち着いた静かな語り口調が独特な雰囲気を生んで、ウィルスンならではの雰囲気を作っている。そして、物語の最後に開かれた未来、変わるべき未来を提示することによって、希望がもたらされるラストにはSF的な感動を覚えた。

 



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