塩の結晶の中に刻まれたハイウェイを走り続け、茶色い結晶がまばらになると同時に雨も止む。
そして、たどり着いたところは、まるで太古に突然放棄された遺跡のような場所だった。
ここは塩ブロックの採掘場。切り出されたブロックが無造作に放置され、切り出し途中と思われる地面に升目状の切り込みが入ったままの場所もある。
採掘は乾季にしか行われないので、雨季には撤収しているのだろうけど、なんと、手袋や工具もそのまま放置されているし、極めつけは、地面に切れ目を入れるカッターと思しきマシンまでも置きっぱなしにされていた。
まるでマリーセレスト号事件のように、人だけが急に掻き消えたような不思議な光景だった。
そこでは放置された塩のブロックで文字を書いたり、塩のブロックを取り出した跡のプールに長靴でちゃぷちゃぷ踏み込んだりして過ごす。
さっきまでの雨が嘘のように、日差しが強くて汗ばむくらい。
予定を変えてここで昼食。どうやら、雨の降っていない地域を探してここを選んだ模様。少し離れた場所に車を一台移動して仮設のトイレを設置。残りの車両を壁にして屋根を張り、即席のテントが完成。
食事を始めたとたんに風が強くなり始め、不穏な空気が流れる。そして、ついに雨。テントと言っても、ランドクルーザーの間に布を張っただけの空間なので、雨も風も直接吹き込む。風に飛ばされるペッパー・アンド・ソルト。
ちょっとやばいかなと思ったけれども、それ以上はひどくなることもなく、なんとか食事を終えて無事に撤収。
次の目的地はどこか。インカワシ島はどうなった……。
インカワシはやっぱり途中の道が水没しているので無理とのこと。そこで、ウユニで最初の塩のホテル“プラヤ・ブランカ”を目指して出発。
プラヤ・ブランカまでは20分程度とのことだったが、着いたところは真っ白な大地。
降りる前に、穴が開いてるから注意(!)とのアナウンスが。
確かにあちこちに直径10~20cm程度の穴が見える。ここは塩の結晶の採取場所。穴の下には大小さまざまな大きさの立方体が重なった塩の結晶が見える。塩の大地は数センチから十数センチの板になっていて、その底側や、穴の周囲では析出した塩の結晶が成長しているようだ。
ドライバーさんたちが手に手に腹ばいになるための台や、塩の大地をかち割るためのハンマーを持ち出してくる。そして、新たな穴をあけ、その穴に手を突っ込んでグリグリ。引き上げた手のひらには、塩の結晶の破片が。
突っ込んでいた腕は肩まで見る間に塩で真っ白に。水と言っても、塩の飽和水溶液であることが良くわかる。
氷の張った湖とは違い、塩の結晶はかなり硬かった。穴の縁を歩くと割れるかと思ったが、まったくなんとも無く、蹴飛ばしてもめったに破片すら飛ばない。
しかし、塩の大地に見えるものが、数センチの薄さの塩の板だというのは、ちょっと信じられない。
穴に向かって塩の破片を落としてみたら、透明度が悪くてよく見えないけれど、底まで数十センチはありそう。もしかしたら、破片が見えなくなるだけで、もっと深いかもしれない。
塩湖というのは底まで塩で固まった死んだ湖だと思っていたのだけれど、湧き水があったり、結晶が育っていたり、なかなかダイナミズムにあふれた場所ではないか。こういう発見は、現地に来ないとわからないものだな。
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