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神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ブレイクの飛翔

2010-04-11 12:30:10 | SF
『ブレイクの飛翔』 レイ・ファラデイ・ネルスン (ハヤカワ文庫 SF)


近代の詩人ウィリアム・ブレイクと妻ケイトが獲得した想像力の翼。

時空を股にかける種族〈ゾア〉の一員であるユリズンは理性の優位性を説き、血塗られた歴史を改変しようと過去へ飛ぶ。
ブレイクはユリズンと行動を共にするが、ケイトは“正しい”歴史へ戻そうと、彼らを追うことになる。
歴史改変合戦の行方は。正しい歴史とは。そして、ウィリアムとケイトは復縁できるのか。
時を翔る大冒険のはじまりはじまり~というお話。

ウィリアム・ブレイクを知らないと理解できないという評判だったので、ずっと敬遠していたのだが、ブックオフにて105円で購入。読んでみたら、これがめちゃくちゃ面白い。むかし懐かしいタイムパトロールの匂いと、トマス・ペインなどの思想家オールスターズの議論で頭がくらくらする。

改変後の世界も魅力的で、ローマ帝国ではなく、クレオパトラのギリシャ系エジプト帝国が強大な帝国と化していたり、恐竜が支配する世界だったり。それも、ユリズンの“理性”を最上位に置いた分析の結果、平和で豊かな社会を作ろうという試みだったというところが考えどころ。

その目的は正しいのか。目的が正しいとして、手段は正しいのか。で、“正しい”ってなんだ?

それに対抗するのが、ケイトの信仰心とウィリアムへの愛というあたりがまたなんというか。光の円錐とか物理学的なものと、神の顔という宗教的なものの融合によって、科学と宗教の統合が描かれたりもする。

SFファン的にツボなのは、サイエンスフィクションの始祖として、ベルヌでもウェルズでもなく、あの人の娘が言及されていること。SFファンはあそこでニヤニヤするように。

結局、作中でウィリアムとケイトが旅した世界が、現実のウィリアム・ブレイクの詩作の原点だったという設定に驚きがあるかどうか、現実のブレイク夫妻が作中のブレイク夫妻にどこまで反映されているのかどうか、というところを読みどころとして捉えるのであれば、たしかに現実(我々の時間線)のブレイクやその作品を知らなければ読み取れないかもしれない。しかし、この作品の中に登場するユリズンや改変世界があまりに魅力的なだけに、ブレイクをまったく知らなくても十分に楽しめる。そして、SFファンならば、もう一人のメアリや、「虎よ! 虎よ!」の登場に震えるのだ。



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