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[SF] ストレンジ・トイズ

2011-04-17 16:52:57 | SF
『ストレンジ・トイズ』 パトリシア・ギアリー (ストレンジフィクション 河出書房新社)




これはある意味、“裏ナルニア”だと思った。

『ナルニア物語』は映画化されたことでも有名になったが、もともと、洋服ダンスの向こうに不思議な世界が“実在”するという“事実”を明かしたことで、しかも、その秘密を解き明かしたのが、読書好きで妄想好きな少女だということで、夢見がちな少女のバイブルとなった作品である。

『ストレンジ・トイズ』の主人公も、妄想好きな9歳の少女、ペット。三姉妹の末っ子である彼女は、長姉ディーンが引き起こした厄介ごとのおかげで、家族と共に自動車の旅へ出る。

サンディエゴから西海岸を北上し、セコイアの森へ。そして大陸を横断し、東海岸を下り、マイアミ、さらにはメキシコ湾沿いに進んでニューオーリンズへ。

ペットは家を出る間際に、ディーンの離れから魔法のノートを持ち出していた。そこに描かれているのは、呪いか、予言か。ディーンのノートをめぐって、ペカンナッツ色の肌をしたサミーが取引をしようと持ちかける。プードル達のおもちゃをお守りとして身に着けたペットは、家族を守るためにサミーを探して、不思議系博物館をめぐり続ける。

ペットが9歳の時の家族旅行(というか、逃避行?)を描いた第1部が、とにかくすばらしい。ブゥードゥーに嵌った姉が残したノートを手がかりに、ディズニーランドの存在しないアトラクションや、かの有名な〈リプリーのビリーブ・イット・オア・ノット〉などの不思議系博物館で、子供目線の恐怖と驚きに満ちた大冒険が描かれる。

そこにあるのは、現実と表裏一体となった不思議の世界だ。バッヂ、積み木、貝殻、力の腕輪……。大人の目から見れば何でもないおもちゃが、秘密のおまじないになる。それは遊びではなく、自分の身を守るための大真面目な戦いなのだ。

そして、ティーンエイジの第2部、30歳になった第3部。ペットはそれらの呪いを遊びとして卒業するのではなく、さらに深くはまり込んでしまう。そこにいたって、第1部のおまじないが、子供の空想などではなく、事実であったことが明かされていくのだ。

少女の幻想はどこまで現実なのか。それは、少女自身がいつか知ることになる秘密であり、背筋が凍るような恐怖であると同時に、懐かしく温かい安らぎであり、果たされた約束である。

洋服ダンスの向こう側の国が真実であるように、おもちゃのお守りも真実である。そして、夢見がちな少女を、まだ見ぬ不思議の世界へ誘う扉なのである。(セックスはドアよりも窓よりも強い!)

『ナルニア物語』が、少女が12歳までに読むべき本とされるように、『ストレンジ・トイズ』も、少女が12歳までに読むべき本なのかもしれない。たとえ、そこに秘められた力は正反対だったとしても。




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