神なる冬

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[SF] SFマガジン2013年12月号

2013-11-19 22:19:13 | SF

『S-Fマガジン 2013年12月号』 (早川書房)

 

今月号は「ジャック・ヴァンス追悼特集」。

ジャック・ヴァンスといえば、やっぱり『竜を狩る種族』ですかね。記事の中に浅倉久志さん訳の話が出てくるが、そうか、竜の名称は原文から浅倉さんが捻り出したものだったのか。言われてみれば、確かに、青面夜叉とか、原文にあるわけないな。

掲載作を読んでみると、なんというか古き良き時代のSFという気がする。小道具から文体まで、俺が中学生や高校生の頃に読んでいたような図書館の古びたハヤカワ文庫の匂いがする。内容的には新しいわけでも、科学的でもないけれど、寓話として読むにはとても楽しいお話しだと思う。特に、最後に意外とアンチ・ハッピーエンドなところもおもしろい。

そして、もうひとつの追悼特集が「追悼・金子隆一」。サイエンスライターとして、いろいろなところで活躍なさっていたけれど、その名前を直接意識することは少なかったように思う。学研の『恐竜世界のひみつ』も監修しているけれど、俺の愛読書は旧版の『恐竜のひみつ』だったからな。

『中生代のシー・モンスター』は情報整理の第一章だけの掲載で、面白い部分はこれからのようだった。これは今後出版されるかどうかわからないけれど、すでに刊行済みの著作を探してみようか。


○「世界捻出者」 ジャック・ヴァンス
妄想SF。この世界は誰かの見た夢。というありがちな話ではあるが、物語としての起承転結やどんでん返しがしっかりしていて、デビュー作とは思えない。

○「ミス・ユニバース誕生!」 ジャック・ヴァンス
バカSF。それぞれの異星人の“美”とは何かを考えると、ギャグでは終わらない深淵なネタ。とはいえ、やっぱりクスクス笑いながら読むべき。

○「暗黒神降臨」 酒井昭伸訳
天体SF。大気の無い植民惑星における農場消失を巡るミステリーが、ハードな天体SFに化ける瞬間の種明かしが素晴らしい。って、ネタバレ過ぎか。

○「ウンディ」 草上 仁
生物を奏でるという設定がとても詩的で美しい。しかも、それでバンド対決をやってしまうというあたりは、どうやって音楽を描写するかという面白さもある。

○「パリンプセスト〈後篇〉」 チャールズ・ストロス
ただのタイムパラドックスものかと思いきや、これまたスケールの大きな宇宙SFと人類の絶え間ない歴史へと広がっていく。さらにそこからのひっくり返しもすごい。タイムパラドックも含めたすべてのデータを記録した図書館という存在も、発想が飛び過ぎていて、想像もつかない。