『老人と宇宙5 戦いの虚空』 ジョン・スコルジー (ハヤカワ文庫SF)
完結したと思っていた《老人と宇宙》シリーズが再開。さらにその続きかと思いきや、今度の主人公はハリー・ウィルスン。すかり忘れていたが『老人と宇宙』において、これまでの主人公だったジョン・ペリーと同時に志願した老人兵だ。タイトルも、これまでの名作もじりではなくなった模様。まさに新たなる出発と言える。
だいたい、地球やコロニー連合がこんなことになっているなんて、まったく覚えていない。背景説明には、そうだったんだっけと思ってしまうが、これまではコロニー連合中枢部の話は出てきてなかったんだっけ。
体裁は長編というより、短編連作。もしかしてと思ったが、やはりTVドラマ風の1クール13回を意識しているのだという。おまけに、電子書籍で毎週1話リリースとのこと。なかなかおもしろい企画だと思った。
そしてもちろん、企画以上に中身も面白い。
ハリーが所属するのは、Bチームの外交団。要するに、二軍。しかし、彼らが機転を利かせて難関を突破していく様は痛快である。ご都合主義な展開が多いとはいえ、これを読むと、外交とはどういうことか、あるいは、営業とは、コミュニケーションとはということを考えさせられる。
大使のアブムウェ、外交船船長のコロマ、そして、CDFからの技術顧問であるハリーの3人が互いに反発し合いながらも、最後は隠された陰謀を暴き、難事件を解決し、コロニー連合のピンチを救っていく。副大使のシュミット、地球の外交官ローウェンも含め、彼らの掛け合いも面白すぎる。
ひとつひとつのエピソードは短くて読みやすいが、それらの背景に流れる大きな陰謀が次第に姿を現してくる。
しかし!
なんと、その陰謀はまったく解明されていない。続くのかよ……。