『グイン・サーガ・ワールド 5』 天狼プロダクション監修 (ハヤカワ文庫 JA)
〈グイン・サーガ〉続編プロジェクトが第2期に突入。なんと、やらないはずの本篇が再開だ!
リンダをさらいに還ってきたイシュトヴァーンを描くパロ篇を五代ゆう、黒死病に揺れるケイロニア篇を宵野ゆめが執筆。
五代ゆうの描くイシュトヴァーンは、ちょっとアクが強すぎるような気がするが、まぁ、こっちが本性か。宵野ゆめは主要人物の描写を微妙に避け(短くし)ているせいか、まったく違和感が無い。宵野ゆめには栗本薫が憑りついているんじゃないだろうか。
図子慧はなぜか外伝ではなくて“トリビュート”。外伝とどこが違うのかいまひとつよくわかりませんが、グイン・サーガをシェアワールド化した作品ということなんでしょうか。しかもなんと、「グイン・サーガ トリビュート・コンテスト」として作品を公募までしてしまうという展開。
ここまでやるとは思っていなかっただけに、ちょっとびっくりした。
しかしながら、最大の問題である、「“豹頭の花嫁”ってだれー?」まで最終的に行き着けるのかどうか、まだまだ不安な感じ。
やっぱり創作ノートの原本を公開してほしいような気が。
「パロの暗黒」 五代ゆう
イシュトヴァーンの傍若無人っぷりが目立つ上に、マルコがそれを言っちゃおしまいよ的な感慨を漏らすあたりがちょっと違和感。
「サイロンの挽歌」 宵野ゆめ
こちらはグインや主要人物の登場人物が少ないせいで、返って違和感が少なかった。しかし、時系列がいまいちわからずに混乱したり。栗本版本篇との間に『七人の魔導師』があるってことでいいんだっけ。
「タイスのたずね人」 図子慧
本篇との関連は“白い人”くらいだが、世界観は完全にグイン・ワールド。これがトリビュートの意味か。しかし、例題がこれだとハードル高いな。もっとパロディみたいなおかしなものも“トリビュート”ならあってもいいかも。
「現実の軛、夢への飛翔」 八巻大樹
栗本薫が中島梓より先に存在していたとは知らなかった。完全に後付の歴史を信じていたよ。
「いちばん不幸で、いちばん幸福な少女」 今岡清
毎回驚かされることが多いエッセイだけれど、今回の『真夜中の天使』あたりの記述にはなんとなく納得がいった。
「スペードの女王 第二章」 栗本薫
あ、続きあったんだ。でも完結してないんでしょ、これ。解決篇だけ無いとか、勘弁して欲しい。これも誰かに完結させてもらう?