神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] グイン・サーガ・ワールド 5

2012-10-13 14:06:55 | SF

『グイン・サーガ・ワールド 5』 天狼プロダクション監修 (ハヤカワ文庫 JA)



〈グイン・サーガ〉続編プロジェクトが第2期に突入。なんと、やらないはずの本篇が再開だ!

リンダをさらいに還ってきたイシュトヴァーンを描くパロ篇を五代ゆう、黒死病に揺れるケイロニア篇を宵野ゆめが執筆。

五代ゆうの描くイシュトヴァーンは、ちょっとアクが強すぎるような気がするが、まぁ、こっちが本性か。宵野ゆめは主要人物の描写を微妙に避け(短くし)ているせいか、まったく違和感が無い。宵野ゆめには栗本薫が憑りついているんじゃないだろうか。

図子慧はなぜか外伝ではなくて“トリビュート”。外伝とどこが違うのかいまひとつよくわかりませんが、グイン・サーガをシェアワールド化した作品ということなんでしょうか。しかもなんと、「グイン・サーガ トリビュート・コンテスト」として作品を公募までしてしまうという展開。

ここまでやるとは思っていなかっただけに、ちょっとびっくりした。

しかしながら、最大の問題である、「“豹頭の花嫁”ってだれー?」まで最終的に行き着けるのかどうか、まだまだ不安な感じ。

やっぱり創作ノートの原本を公開してほしいような気が。

 


 

「パロの暗黒」 五代ゆう
イシュトヴァーンの傍若無人っぷりが目立つ上に、マルコがそれを言っちゃおしまいよ的な感慨を漏らすあたりがちょっと違和感。

「サイロンの挽歌」 宵野ゆめ
こちらはグインや主要人物の登場人物が少ないせいで、返って違和感が少なかった。しかし、時系列がいまいちわからずに混乱したり。栗本版本篇との間に『七人の魔導師』があるってことでいいんだっけ。

「タイスのたずね人」 図子慧
本篇との関連は“白い人”くらいだが、世界観は完全にグイン・ワールド。これがトリビュートの意味か。しかし、例題がこれだとハードル高いな。もっとパロディみたいなおかしなものも“トリビュート”ならあってもいいかも。

「現実の軛、夢への飛翔」 八巻大樹
栗本薫が中島梓より先に存在していたとは知らなかった。完全に後付の歴史を信じていたよ。

「いちばん不幸で、いちばん幸福な少女」 今岡清
毎回驚かされることが多いエッセイだけれど、今回の『真夜中の天使』あたりの記述にはなんとなく納得がいった。

「スペードの女王 第二章」 栗本薫
あ、続きあったんだ。でも完結してないんでしょ、これ。解決篇だけ無いとか、勘弁して欲しい。これも誰かに完結させてもらう?

 

 


[SF] SFマガジン2012年11月号

2012-10-13 14:05:18 | SF

『S-Fマガジン 2012年11月号』 (早川書房)

 

特集「日本SFの夏」。

90年代に冬と言われた日本SFの復権。円城塔の芥川賞受賞、宮内悠介の直木賞候補、さらには高野史緒の江戸川乱歩賞受賞、伊藤計劃は海を越えてディック賞特別賞を受賞し、冲方丁は時代小説が映画化と、最近はいろいろと話題にこと欠かないSF界に、ついにハヤカワSFコンテストが帰ってきた。

円城塔×伊藤計劃の『屍者の帝国』は書店で平積み。池袋のジュンク堂では「SFミュージアム」まで開催という勢い。ついに第6世代と言われる作家群も登場し始め、SF界は大転機を迎えようとしているのかもしれない。

これより前の“日本SFの夏”といえば、スターウォーズと宇宙戦艦ヤマトの70年代だったわけで、20年周期で冬と夏を繰り返しているということか。ちょうどひと世代という感じなんでしょうかね。ファッションの流行ともかぶりそうだ。

読者としては、新作を追い掛けるのが精いっぱいのこの状況が良くもあり、悪くもあり。一時期は、出版されたSF作品をすべて(ラノベは除く)を読んでも足りないくらいだったのに、今では地雷臭作品を避けても読み切れずに積読が溜まる一方だ。


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○「ジャララバードの兵士たち」 宮内悠介
 二重写しの世界。貧者の武器としての少女型アンドロイド。復讐をちかう少女型アンドロイド。
 なんというか、背筋が寒くなる思いがする。

○「マルドゥック・スクランブル 手紙」 冲方丁=原作 大今良時=漫画
 マルドゥック・スクランブルを読んでるから泣ける。たぶん、読んでないと、この思いはわからない。

○「星の鎖」 ジェイ・レイク
 同一設定の話が以前にも掲載されているのだけれど、全く記憶になかった。
 機械仕掛けの天体運動なんて壮大なネタを忘れるくらいだから、あんまり……だったんだろうか。
 今回のは、いわゆる“裏庭ロケット”系の話であり、SFファンのツボにはまる。
 しかし、脳内にイメージが描きずらいのは相変わらずか。