神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 宝石世界へ

2011-11-15 23:06:39 | SF
『宝石世界へ』 テッド・ホワイト (ハヤカワ文庫SF)


勝手に名作発掘シリーズ続き。

警察官のアーサーと、少女のキム(後からなんと強姦被害者と判明)は深夜の地下鉄に乗っている間に、現実とは違う別な世界へ紛れ込んでしまう。ちょっと違う世界から、まるっきり違う世界まで、黒服の男たちから逃れながら、元の世界へ戻ろうとしての冒険が始まる。

警官のアーサーは生き延びるための強盗や、黒服から逃げるための破壊活動に心を痛め、犯罪に対して良心の呵責が無くなることに恐怖したり、娘のような歳のキムに誘われてもインポになったりと、カタブツっぷりを発揮するところがおもしろい。

で、結局、この黒幕はなんとあのレオナルド・ダ・ヴィンチであった! アーサーとキムが冒険した世界も、アーサーの故郷である世界も、ダ・ヴィンチが見つけた宝石の中に存在していたのだ!

しかもダ・ヴィンチは宝石の中にいろいろな世界を作って実験したり、未来予測をしたりしていたのだという。これはまさしく仮想世界モノ。

4次元世界とか、並行世界ではなく、人為的に作られた仮想世界としては割と先取りのアイディアだったのかもしれないが、実はこのアイディアは盗作(インスパイア)だったということが解説に書いてある。

そしてまた、内容よりも、解説にある著者、テッド・ホワイトの紹介がおもしろい。

ファン作家で、ファン活動に熱心なBNFで、最後はあのアメージングの編集長にまでなってしまう。しかし、その編集姿勢はSFファンにこそ好評だったものの、雑誌としての売り上げはジリ貧とか。

日本でも、SFマガジンの初代編集長福島正実や、2代目南山宏(森優)も単著があるが、それらはみな、出版社入社後の話。日本じゃ、作家や翻訳家が外から招かれて編集長に就任なんてことがあるんだろうか。戦前にはあったんだっけ?

例えば、山本弘や冲方丁がSF Japan再刊時に編集長に就任とか。……ありそうでなさそうでちょっと想像がつかない。

こういうところにも日本の終身雇用制が影響しているような気がしておもしろい。終身雇用制が崩れつつある現代ではどうか。転職が盛んと言うよりは、首が切られるだけだから無理?

あ、そういえば水嶋ヒロって、作家から編集長になったんだっけ(笑)