神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 神林長平トリビュート

2009-11-27 23:18:56 | SF
『神林長平トリビュート』 (早川書房)




新世代作家八人が神林SFを代表する長短篇を独自に解釈、豪華競演を果たした傑作アンソロジー。
へんな意味ではなく、神林長平は本当に大物になったなぁと思う。

○○トリビュートなんていう企画が成り立つのは、クラーク、アシモフ、ハインラインの御三家並。
日本だったら、小松左京クラスぐらいだろう。

そうは言っても、“SF冬の時代”の筆頭戦犯とも言われるだけあって、SFファン以外での知名度は高くないようだ。
それだけ、ワンアンドオンリー、世界にひとつだけの花なのだよ。

神林長平よりも知名度のある収録作家のファンにも、神林長平は知っているけど最近の作家は知らない人にもオススメの一冊。

神林長平ファンの作家が描く、神林長平のための、神林長平の世界。100人読めば、100通りの影響を受けそうな神林長平だけあって、収録8作品はバラエティに富んでおり、飽きることが無い。
それぞれの作品に、神林の影響を探すのも楽しい。

本当に作品は粒ぞろいで、来年の星雲賞短編部門は、この収録作の中から出るに違いない。



『狐と踊れ』 桜坂洋
ノリノリな感じが伝わってくる。ちょっとフザケすぎだろ、と突っ込みながら読むのもまた楽しい。

『七胴落とし』 辻村深月
一読すると、ほのぼのとした猫小説なのだが、大人になることへの戸惑いと不安感がじわじわと伝わってくる。

『完璧な涙』 仁木稔
神林の初期の短編にイメージが近い作風。『完璧な涙』の枝編なだけに、固有名詞なども懐かしい。

『死して咲く花、実のある夢』 円城塔
これはどう読んでも円城作品(笑)。円城塔は神林長平の個性を越えた!?

『魂の駆動体』 森深紅
これも神林っぽくないか。良く考えたら、原著もあんまり好きじゃないや。

『敵は海賊』 虚淵玄
紹介文でネタバレしているにもかかわらず、その紹介文の通りツボを押さえた秀作。

『我語りて世界あり』 元長柾木
ぶっ飛びすぎて理解不能。ゼロ年代的決断主義ブンガクなのか?

『言葉使い師』 海猫沢めろん
物語の伝播。詩的な短編。神林長平よりも、言葉の持つ力に対する信頼が見える。

『過負荷都市』 伊藤計劃
……書かれなかった作品。永遠に書かれない作品。