神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ノーストリリア

2009-11-17 21:58:38 | SF
『ノーストリリア』 コードウェイナー・スミス (ハヤカワ文庫SF)




『世界の中心で愛を叫んだけもの』と同じく、タイトルだけはチョー有名なSF名作シリーズ《人類補完機構》、唯一の長編の新装版。

実は『鼠と竜のゲーム』を読んで、わけがわからなかったので、敬遠していた。ブックオフでの出会いも無かったし(笑)

実際に読んでみたら、これが期待以上の面白さ。人類補完機構シリーズはここから読み始めるべき。

なんというか、これは昔話なわけだ。SFなんだけど、中身は昔話のフォーマット。
もしくは、童話、民話のたぐい。浦島太郎であり、わらしべ長者であり、竹取物語であり、なんであり、かんであり。

そこを少年の成長物語が一本のメインラインとして貫いている。
この少年というのがまた、持たざる者としてのコンプレックスの塊でありながら、逆に、持てる者として妬まれ、狙われる。
これを乗り越えて成長し、少年は赦しをもたらすわけだ。

さらには、人類補完機構が作り出した理想郷を描く、ユートピア/ディストピアの見聞小説でもある。
ある意味、ガリバー旅行記。もしくは、不思議の国へ行って帰ってきた物語。

主人公の少年は、人類補完機構のディストピアを改革、もしくは崩壊させる萌芽としても機能する。
しかし、最後の最後で、主人公が帰ってきた故郷も、別な意味でのディストピアであることが冷酷に描かれる。

赤毛猫のク・メルにはそんなに萌えなかったけど、田舎で主人公を待つラヴィニアや、ちょっとだけ登場する亀人の子供など、萌え要素は十分だぞ。燃え要素はちょっと足りないかもだが。

ところで、カバー折り返しのシリーズ一覧には『鼠と竜のゲーム』と『ノーストリリア』のみでさびしい限り。
残り2巻『シェイヨルという名の星』『第81Q戦争』は絶版なのか?
それとも、新装版で続けるつもりがあるんだろうか?