神なる冬

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コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ラヴィン・ザ・キューブ

2009-04-13 22:42:14 | SF
『ラヴィン・ザ・キューブ』 森 深紅 (角川春樹事務所)




第9回小松左京賞受賞作品。これまでの受賞作品とは違い、ソフトカバーでの出版なので、見つけるのに手間取った。(笑)

うーん。これはちょっと痛い小説。
痛いといっても、痛いニュース系のイタさではなくて、技術者としてのツボをチクチクされる感じ。
主人公は正論を振りかざす工程管理のスーパウーマンなわけだが……。
まぁ、わかるよ。その通りだよ。でも現場にもいろいろあってだなぁ。
とか、言いたくなるわけですよ。現場の人間としては(笑)
そんなこんなで、前半は居心地の悪い気分で読んでいた。

で、結局、アンドロイド造りとしてはどうなのさというと。
これはアンドロイドを作る小説ではないね。ボディの話は出てくるが、ブレインの話がほとんど出てこない。
ブレインが無いアンドロイドなんて、作中にも出てくるが、まさにラブドールじゃん。
というか、佐原の執着心なんか、明らかにフィギュア職人気質なんじゃないの。あれはエンジニア気質じゃないよ、たぶん。

工業デザインの話も出てくるが、いわゆる工業デザインとか機能美っていうのも、アンドロイドには似合わないと思う。
ホモ・サピエンスの造型が機能美なわけ無いじゃん。いや、そうも断言できないか。
しかし、著者は、たとえば戦闘機の機能美とかを理解できないのではないか。

さらに、セクサロイドに関する言及が酷い。
いや、女性ならではの嫌悪感があるのはいいんだけど、セクサロイドがどんなに難しいか、わかってないだろ。
セクサロイドに必要な機能といえば……あんまり詳しく言及するとヘンタイ扱いされるからやめておくが、アンドロイドの最高峰はセクサロイドに決まっておろうが!

ラストの決め台詞であろう部分もなんとなく納得がいかない。

結局、正しいことは書いてあるし、文章も悪くないし、作り上げることの意味への言及のあたりは感動する人もいるかもしれない。
しかし、オレ個人にはまったく響いてこない作品でした。

まぁ、アンドロイドに対する興味の方向とか、親との関係性とか、政治的信条とか、倫理観とか、すべての面での基本スタンスが違いすぎるように感じる。きっとこの人(著者)とは話が合わないと思うよ。