神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] エンジン・サマー

2009-01-29 00:01:44 | SF
『エンジン・サマー』 ジョン・クロウリー (扶桑社ミステリー)

長らく待ちわびた人も多い名作の復刊。

破滅後の地球。
銀色の手袋、片足、4つの頭、蛇の手、動けないハエ、タバコのように吸うパン……。
魅力的な小道具と暗喩、寓意に満ちた世界へ、少年は旅に出る。
世界の真実と少女の面影を追って。

なんて、書くと、俺的どストライクなSFに見えるんだが、なぜか乗れなかった作品。
この感じ、初めてじゃないぞ……。そうだ、イアン・ワトソンの『火星夜想曲』だ!

いろいろ見落としはあると思うけど、主人公《しゃべる灯心草》が《ブーツ》に“合う”くだりで、なんとなくカラクリはわかっていたので、最後はそんなに驚かなかった。そのせいだけではないと思うんだけど、喪失感とか、せつなさというのは感想として持てなくて、なんだかモヤモヤする。


そもそも、なんでみんな“それ”を切実に必要としているのかが理解できないんだけど、誰か説明してくれない?


分析してみると、俺的にはたぶん、燃え成分も萌え成分も足りないのだと思う。特に燃え成分の少なさは異常。旅に出る動機や目的が物語の終端を暗示するものであれば、そこにたどり着いたという到達感もあるのだろうけど、これはまさしく“蛇の手”の先まで行って打ち切りになったようなイメージがする。まぁ、“蛇の手”が一番面白いという主張なのかもしれないけど。

ところで、『エンジン・サマー』のヒロイン《一日一度》と、『ハローサマー、グッドバイ』のヒロイン、ブラウンアイズのどちらが魅力的かという論争があるらしい。
とりあえず、ブラウンアイズ圧勝……。
違うよ!
そこじゃないよ!
『エンジン・サマー』の萌え処はワンスアデイじゃなくて、ブロムだよ!

名作と言われればそうなんだろうし、何度再読してもそのたびに再発見のあるスルメイカのような作品だとは思うけど、読み返す気が起こらない。ベストSFが『火星年代記』、『火星夜想曲』、そして、『エンジン・サマー』という人とは、絶対に趣味が合わないんだろうなぁ。


ちょっとネタバレな話。










結局、この物語の語り部はラッシュ本人ではなく、写し取られた記憶、もしくは再生されるデータなわけだが、それってちょっと、『ガンパレードマーチ』や『絢爛舞踏祭』のNPC(AI)に似てない?
そう思ったときに、切なくなったり、喪失感や無常観を感じる?
むー。やっぱり、なんとなく微妙……。