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クラブ経営について73

2017-08-08 00:42:45 | サッカー(J3以下・外国・他カテゴリ)

 リスペクト(事例紹介)コラムです。
 少し前のJ1のサマーブレイク時期にドルトムントが来日してJ1浦和と親善試合をやっています。その時に来日されたのか、ドルトムントCEOのインタビュー記事がNumber Webに載りました。1909年創設、世界一の観客動員数を誇る欧州の有名クラブのCEOの言葉にカリスマ性を感じました。以下、抜粋して紹介。
   
 ヴァツケCEOは経営者というよりも、サッカーとドルトムントを愛する人という印象が強烈。 香川選手で日本で有名なドルトムントは、世界で最も観客数が多いサッカークラブであるが、実は'00年代半ばには破綻の危機に瀕していたクラブ。ヴァツケCEOは、経済的V字回復を果たした敏腕経営者であると同時に、それ以上にサッカーを愛するごく普通のいちサッカー好きの側面も存在。
――ドルトムントのファンは今や世界中にあり、先日も年間チケット保有者の99%以上が更新したというニュースがあるが、人気の理由はどこにあるのか?
「理由は“人と近い”こと。このクラブは、普通の人たちの人生を反映。クラブは成功するために一生懸命働き、重圧と戦う。人々はその働きぶりを見て、このクラブは本物、オーセンティックだと感じる。我々はファンと“人と人”の関係性で接することを大切にしているからこそ、ドルトムントは国内で1,000万人、国外には1,500万人のファンが存在」
――国内での地元密着と国際化、両立する上でどちらがベースになるのでしょう?
「地元こそがクラブの基盤。“自分がどこから来たのか”を知るのは大事なことで、我々にはボルシク・プラッツ(クラブ発祥の地)というルーツがあります。大切なのは、そうしたルーツを去るのではなく“ホーム”にいることを感じること。しかし、同時に今はグローバル化の時代。それはソーシャル・メディアを通して、世界中の人々、日本やアメリカの人々がクラブの中に入って来てくれることを意味し、地元はベース、国際化はチャレンジ。
――ヴァツケCEOに就任してからドルトムントは財政的に安定し、成長を続けているが、何がポイントだったのか?
「近年、クラブの運営コストは上昇。海外からお金が集まり、チームの値段が上がる。その流れについていくためには、成長が必要。そして我々はそれを上手くやってきた。12年前の売り上げは7,500万ユーロだったが、今は4億ユーロで2年間で売上は600%に上昇。
 大切なのは、その資金で次のステップを目指すときに、収入以上のお金を支出しないことがクラブにとって非常に大切な方針。なぜなら、全ての仕事を自分たちでやるから。我々には世界の大富豪の投資家は無く、我々もそれは望まない。だから、収入以上の支出はしない。単純なことだが、難しいことでもある」
――なぜドルトムントはその方法を選ぶのか?
「理由は簡単で、12年前、我々は破産寸前だったから。クラブは過去を振り返ってもバイエルンやレアルほど強かったことも無い。ドルトムントは人口60万人の小さな街でレアルのような基盤は無し。今の状況は十分すぎるほど。現在の売上は4億ユーロが現実。クラブはもう一文無しで無く、1ユーロの負債も無いという意味で、このやり方は正しい」
――Jリーグのクラブは財政的に難しい状況にあります。ドルトムントのようなやり方ができると思いますか?
「多くのクラブがドルトムントの方法を使えると思う。実際、アジアから多くのクラブが我々と提携し、学びたいとやって来る。 このやり方は、我々にとって替えの利かない方法。チェルシー、バイエルンのような方法を採用しているクラブは少なく、それ以外はバルセロナの道を目指しており、彼らは最も成功しているクラブの1つですが、ほとんどの選手は自前」
――Jリーグは何をすべきか。
「若手の育成。良質な環境、つまり練習環境、育成機関、子供や若手が関わるインフラ全体への投資。よい指導者、芝のグラウンドも必要。外国人の監督を連れてくるのは、外国人の選手を連れてくるよりは安いから」
――Jリーグのクラブは企業のサッカー部が母体で、そのカルチャーが色濃く残っている。
「ドイツでは多くのクラブは市民、人々によって設立。ドイツ人は、自分がクラブの一員という意識を強く持っている。ライプツィヒには17人しかクラブ会員がいない」
――日本にはドイツのような、意思決定に参加できるクラブ会員の制度がほとんど無い。多くのチームは企業のサッカー部が母体で、人々はファンとしてクラブを応援。
「ドルトムントにはクラブ会員が15万人所属。スポーツメーカーはスポンサーで、それ以上ではない。その意味で、ドルトムント対ライプツィヒは、文化の衝突」
――日本はドイツのようなサッカー文化を発展させるべきなのか?
「日本人は自らがクラブの一員という思いの重要さをもっと意識すべき」

 という内容でした気になるのが、世界一の観客動員力のクラブの経営姿勢。地域をどう思うのか、ファン・サポーターをどう思っているのか、どこかのように商業主義がどこまで強いのかという部分。
 まずはドルトムントは一度破産危機に陥って、そこからV地回復をしているという点。最初から経営環境に恵まれて観客動員が多いところとは違い、経営環境が悪い中地道に観客動員を伸ばしていったのでしょう。逆に前者は今は良くても、地域を顧みないままやり続けていると、そのうちつけが回ってくるという事か。

 いろいろ注目すべきキーワードが出てきましたね。
「人と近い」「人と人の関係性で接することを大切にしている」「地元こそがクラブの基盤。“自分がどこから来たのか”を知るのは大事なこと」「地元はベース、国際化はチャレンジ」
 やはり、地域密着に重きを置いている事がよくわかります。これらの言葉は「費用対効果」を口実に地域貢献をやりたがらないところでは出てこないでしょう。ホームタウンは基盤。チャレンジはJクラブで言えば全国化でしょうか。読者の皆さんの地元クラブで、ベースをないがしろにして他のところばかり目が向いているところはありませんか? 
 ドルトムントは地域にしっかり根が張れていたから、経営危機に陥っても地域が救ってくれましたが、地域に根が張れていないところは、いつかそういう危機が起こっても、地域から手を差し伸べてくれるシステムが確立できていないから、やはり100年続かずに消えてしまうという事でしょうか。読者の皆さんの地元クラブは、地域にしっかり根が張れていますか?

 あとは、やはり育成型クラブを目指すという点、あと、ファン・サポーターの経営参画ですが、こういう文化は国単位でまだまだ遅れているところ。そういえば、どこだったか忘れましたが、昔「Mユナイテッドのようなクラブになりたい」と言っていた経営者がいた事を思い出しました。これはまさにバイエルンやライプツィヒのような実質「企業チーム」になりたいという事で、ドルトムントやバルサのような「市民クラブ」ではないという事ですね。そういう価値観が今もあれば、長い目で見て、そういう経営者に地域の公共財を託していいのかという事を、個人的に思います。これまでの個人的な主観は、あくまで全般的な話ですので。
Number Web該当記事:http://number.bunshun.jp/articles/-/828505

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