碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

2011年の“見初め”は市川亀治郎のドキュメンタリー

2011年01月02日 | テレビ・ラジオ・メディア

今年のテレビ“見初め”は、1日午後、MHK・BSハイビジョン「シリーズ伝統芸能の若き獅子たち/市川亀治郎」だった。

歌舞伎役者の市川亀治郎を追ったドキュメンタリーだ。

以前、やはりNHKのインタビュー番組で話していた亀治郎が実に面白かった。

歌舞伎界における自分の位置や役割を客観的に把握していること。

その上で、世襲だからではなく、自ら歌舞伎を選んだという強い意志を感じた。

今回のドキュメンタリーは、伯父である猿之助の十八番(おはこ)「金幣猿島群(きんのざいさるしまだいり)」への挑戦が軸である。

亀治郎という役者の持ち味というか、その稀有な才能がきっちりと描かれていた。

そこには伝統を守るというより、攻める姿勢がある。

「その心意気やよし」と応援したくなった。




また、歌舞伎座の舞台から見守る猿之助のアドバイスを、ひと言も聞き漏らすまいとする真摯な態度。

こうやって、受け継ぐべきものが、受け継ぐべき人へと渡されていくんだなあと、少し胸が熱くなる。

誰の演出だろうと思ってエンドロールを見ていたら、ドキュメンタリージャパンの五十嵐久美子さんだった。

今、ドキュメンタリーの優れた作り手を何人か挙げるとすれば、必ず入ってくる。

さすがだ。

いや、正月元旦から“いいもの”を見せていただいた。

今年は、昨年以上にBSを見ることが増えるような気がします。