明日元気になれ。―part2

毎日いろいろあるけれど、とりあえずご飯と酒がおいしけりゃ、
明日もなんとかなるんじゃないか?

おばあちゃんのこと

2007-08-03 23:12:42 | 想い
私がこの世で、一番自分の結婚式を見てほしかったのは、
父親でも母親でも友達でもなく、
おばあちゃんだった。

仏様のように朗らかで、私を誰よりも愛してくれたおばあちゃん。
私もかなりの働き者だが、母はそれより10倍働き者だ。
そして、その母が「こんなに働く人を見たことがない」というのが、
この世界でたった一人、おばあちゃんだけなのだ。

昔の人は誰でもそうなのかもしれないが、
夫に仕え、よく働き、質素で贅沢も知らず、ただ与えられたことに感謝して、いつも前向きに生きてきた。

私はそんなおばあちゃんが大好きで、母には話せないことでも、おばあちゃんには話せた。

「こんな可愛くて(←ごめんね、孫だから)、こんな賢い子が(←これまたごめんね。孫はかわいいから)、なんで結婚できないかねぇ」
と、私に会うたびに心配していた。
昔の人だから、女がいつまでも結婚しないことは不幸だと考えていたのだろう。
実際はそれほど不幸でもなかったのだが。

でも、そんなおばあちゃんの気持ちは痛いほどわかっていたので、
早く結婚して、とりあえず安心させてあげたいと、そう思っていた。

おばあちゃんに最後に会ったのは、ちょうど2年前の夏。
従姉妹の結婚式で、香川県に行ったときだった。
姪のひなを連れて(ひなは私から離れない)、おばあちゃんと3人で、家の周りを散歩した。
とても穏やかで幸福な時間だった。

だけど、それから1年のうちに、認知症になり、うちの両親が来てほしいと言ったけれど、他の兄弟の体裁もあり、結局、施設に入った。

施設では、とても穏やかに、まるで子供のように笑顔で楽しく暮らしているという。
身内が顔を見せると、何か思い出そうとして混乱してしまうので、おじいちゃんですら、最近はなかなか行く機会がない。

でも、母が言う。
「ずっと贅沢もせずに、働きづめで生きてきた人だから、心穏やかに過ごせるなら、それが何より」

最近は、そうなのかもしれないな、と思うようになった。
何も心配せず、ただ穏やかな心で余生を過ごしてほしいと思うばかりだ。

結婚前、しばらく実家でお世話になっていたとき、朝起きて髪を整えたり化粧をしたりしようと、母の小さな鏡台の前に座った。
髪をとかしたくて、ブラシを探そうと、手当たり次第に引き出しを開けた。
そうすると、1枚の写真が入っていた。

もう少し若い頃の、まだ元気なおばあちゃんが一人で写っている写真だった。

私はそれを見て、気丈にふるまっている母の強さを想い、涙が止まらなかった。
きっと母は、毎日鏡台に座るたびに、この写真を見ていたのだろう。
母にとっては、「母」なのだ。

私を入れて6人もの孫がいて、みんな結婚しているのに、
誰一人としておじいちゃん・おばあちゃんを結婚式に招待する人はいなかった。
(私の姉のときは、おばあちゃんが体調を崩していて無理だった)

私が誰よりも見せたかった花嫁姿。
でも、もう見せることはできない。
おじいちゃんだけは、なんとか招待できたが、せめてあと1年早かったらと、悔やんでもどうしようもない想いに駆られる。

先日、おじいちゃんに結婚式の写真を送った。
私が一番きれいに写っているものを。
いつもおじいちゃんへの手紙は、おじいちゃんの名前しか宛名に書かないのだけれど、あえておばあちゃんの名前も書いた。

もう誰のこともわからない。
ただ、ニコニコ笑っているだけ。
でも、もしかしたら、私の写真を見て、一瞬でも記憶が戻るのではないかと、そんな願いをこめて送った。
あんなに私の結婚を望んでいたから、見て安心してほしかった。

おばあちゃんのことを想うとき、いつもこう心で言う。
「心配かけたけど、結婚したよ。とっても優しくて素敵なダンナさまだよ。今、とっても幸せだから、安心してね」と。

母は毎月なんとか時間を作って、おじいちゃんに会いにいっている。
身内の恥をさらすようだが、隣に住んでいる(!)弟夫婦は何の面倒もみてくれない。1日に1度の挨拶すらないという。
母が行くたびに、カビ臭い布団に寝て、雑草が生えた家に暮らすおじいちゃん。
何度も大阪に来てと頼んだが、それでも生まれ故郷を捨てられないおじいちゃんがいる。

前に一度、おばあちゃんのことを日記に書いたら、
「あなたは何でも人のせい。あなたはおばあちゃんに何をしてあげた?」
と書き込んできた人がいた。
人がこんなに弱っているのに、まだ攻めてくるなんて、すごいなぁと思った。
また今日もその人が何か言ってくるのかもしれないな(笑

確かに私は何もできていない。
だけど、私にも生活がある。
そんな毎日のようにいけるはずもない。せいぜい年に数回で。
だけど、もし自分が隣に暮らしていたら、毎日顔を見せる。
毎日ご飯を一緒に食べる。
毎日いろんな話をする。
それができる場にいて、しない身内がいる。
母が嘆くのも当たり前で、私たちは自分にできることをするしかないのだ。

今日、おじいちゃんのところへ行って帰ってきた母が電話をしてきて、かなり長い間、嘆いていた。
愚痴とか怒りとかじゃない。本当に「嘆き」だ。
弟の嫁に、
「他人がそばで暮らしてあげているだけ、感謝しろ」
と言われたという。

「最初は腹が立ったけど、本当ね・・・」
と母が言う。
「他人はそういうものなのかもね。びっくりしたけど。今は、感謝してるわ。おかげさまで、餓死することはないと思うしね」
なんて気丈に言っている。

反面教師じゃないけれど、私は彼のご両親を本当に大事にしようと思った。
母にもそれを告げた。
「さとしくんのご両親を本当に大切にするわ。二人とも体が弱いし」
そう言うと、母はにっこりして(電話だけど、そんな気がした)、
「そうね。それがいい。そうしないとだめよ」
と言った。

ちなみに母はもう40年、大阪で暮らしているが、本当にこんなしゃべり方だ。
私と違って、上品なんだよ、あの人は。

彼に「俺を勝手に殺すな」と怒られそうだけど、
例えば、彼が先に死んでも、私は彼の家族を守っていくだろう。
それは、結婚する時に自分自身に誓ったこと。
うちのアホみたいな健康家族と違うから。
極端な話、私は自分の母親が溺れていても、彼の母親を先に救うだろう。
それは、たぶん、母がそうしてほしいだろうと思うから。
あの人はたぶん自力で脱出できる(笑

明日は、彼のご両親の実家、徳島の「まおまお村」へ行く。(←ウソ)
いや、ご両親の実家へ行くのは本当だ。
彼のご両親と私たちと4人で。
お母さんは「かおりさん、私たちと道中一緒でしんどくないかしら?」と気にしてくれているようだが、全く平気。
お母さんが心配するような「気を遣う人」じゃないんだ、私は。
ご両親には全く気を遣わないので(それもどうか?)、楽しくやれる。
それより、あんなに疲れきっている彼が、徳島まで運転できるのか、そのほうが心配だ。(彼のお父さんも病気で運転が無理。私は無免許)

楽しい1日になるといいな。
彼のお父さんが病気になってから、田舎へ帰ることができなかったので、お母さんもとても楽しみにしているとか。(メル友だから)
よかったなー。

家族が増えるというのは、楽しいことだな。
私は自分の家が好きじゃなかったから、とても楽しいことに思える。
私の母も「家族が増えるのは楽しいわね」と笑っていた。
彼のご両親がいい人でよかった。
鬼姑だったら、困ったけどね。(まぁ、戦うまでだが)

お盆には、彼のお兄さん夫婦の家にも遊びに行く予定。
彼のお兄さんという人が、これまた、彼のいいところだけを詰め合わせたような人で・・・(笑
その奥さんも、いつもニコニコ笑って、おしゃべりな楽しい人。
会いにいくのがとっても楽しみだ。

いろいろな人に止められているけれど、やっぱり自己満足でも一度は彼と二人でおばあちゃんの施設を訪ねよう。
もしかしたら、一瞬だけでも、記憶を取り戻してくれるんじゃないか、なんて。
そんな望みを託して。

おばあちゃんが亡くなるまでは、たぶん私に子供はできないだろう。
以前、おばあちゃんが言っていたのだ。
「おばあさん、かおりちゃんの子供に生まれ変わるから」と。
私はなぜか、その言葉を今でも信じてるんだなぁ。
そして、それが本当であってほしいと、そう思っているのだ。

おばあちゃーん!!

最新の画像もっと見る

9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
まおまお村 (ガラ&骨(コツ))
2007-08-04 01:19:31
じっくり読んでて、「なるほど、なるほど」
と思ってた瞬間「まおまお村」という言葉に
爆笑してしまいました!
返信する
ただいま (かおり)
2007-08-05 00:19:57
「まおまお村」から帰宅しました(笑

おちゃめでしょ?
ちょっとしめっぽい話になったので、
笑いを入れました。

「まおまお村」の「まおまお一族」は、
皆いい人たちでした!
返信する
Unknown (ほんちゃん)
2007-08-05 12:18:15
なんとおばあちゃん思いな孫なんだ!!
俺も沖縄のおばあが元気なうちに顔見せたいなぁ。
行こう行こうと思いながらも3年ほど達成できずにいる。

ありがとう、何かすごく大事な事を考えさせてもらいました。
返信する
Unknown (うり)
2007-08-05 12:38:40
私の父方の祖母が認知症で施設に入ってたことがあるけど(3年前に亡くなったけどね)
私も、家族も親戚やイトコも、何度か会いに行ってたよ。
もちろん、私のことなんか全然分かんなかったんだけど、子供も見せたし(もちろん、本人は分かってないけどね)、今でも行っておいてよかった、って思うよ^^

記憶を取り戻して欲しい、というよりは、みんな祖母に会いたかっただけじゃないかな?

かおりさんも、そういう気持ちで会いに行ったらいいと思うよ♪


返信する
Unknown (かおり)
2007-08-05 18:17:46
>ほんちゃん
ほんちゃんとこは、沖縄なのかー。
旅行がてらでも、会いに行ってあげるといいね。
おばあちゃんって、本当に孫がかわいいんだなって思います。

>うりさん
いえいえ、もちろん、私のことがわからなくても、記憶が戻らなくても、ただ会いたいという気持ちだけで会いに行くのですが、行くのを悩んでいるのは、母ですら最近は行くのを止められているのです。

身内が行くと、一生懸命何かを思い出そうとして、混乱するようで、後で決まって調子が悪くなり、施設の人に迷惑をかけてしまうから・・・。
せっかく調子よく、ニコニコと楽しく過ごしているのに、怖い形相になったり、荷物をまとめだしたりと、いろいろあって・・・。

それで、「自己満足だけど、会いたい」と思っているというわけです。
私は会えて嬉しくても、おばあちゃんは後でしんどくなるかもしれないし、施設の人にも迷惑がかかってしまうから・・・。
そうでなければ、何の躊躇もなく行くし、別に私のことがわからなくても構わないのですが・・・
返信する
お忘れでしょうか? (みぷかーか)
2007-08-05 23:58:36
お久しぶりで~す

ご結婚おめでとうございます!
はがきもありがとうございました
勝手に式に参列した気になってました
我が事のようにとっても嬉しかったです

毎日お幸せそうで何より
一日一日に感謝して過ごして下さいね

おばあちゃん、結局施設に入ったんだ
うちも全く同じ
私たちの式にも
体が弱っていて出れませんでした
でもね、新婚旅行から帰ってくるまで
待っていてくれたんだよ
耳元で「もう十分だよ。ありがとう」
と言ったら翌日静かに亡くなりました。
10ヵ月後に生まれたみぷーは、
驚くほど ばあちゃんに似てました
不思議でしょ

ばあちゃんは
今も近くにいてくれると思ってます

今思うと
離れている者が出来るのは
毎日その人を思うこと
簡単そうでなかなか出来ないけど

毎日楽しく暮らす、
これが私に出来る一番の供養かな

また来ます
お幸せに~
返信する
お久しぶりです (かおり)
2007-08-06 01:04:47
>みぷかーかさん
ずっと書き込みなかったので(いつもコンスタントにあったので)、体調でも崩されているんだろうかとか、いろいろ勝手に心配していました(笑

だから、今日、コメント見て嬉しかったです。
ありがとう。

>離れている者が出来るのは
>毎日その人を思うこと

この言葉、じんときました。
そうですね、毎日想っています。

そして、私も毎日楽しく暮らしたいと思います。

みぷーちゃんは、おばあちゃんの生まれ変わりみたいですね。
返信する
Unknown (うり)
2007-08-06 19:07:56
そうでしたか!

知らなかったとはいえ、失礼しました・・・m(__)m

ウチの祖母は思い出そうとすることもなかったので、そういうことは知らなかったです。

でも、会いたいよね。
おばあちゃんだもん。

私も思い出すのは、おばあちゃんが元気でシャキシャキしてた頃の姿と、施設のベッドで寝ている姿を思い出すよ。
返信する
Unknown (かおり)
2007-08-06 23:59:35
そんな!失礼だなんて・・・
私がちゃんと書いてなかったから、知らなくて当たり前なので・・・。

的確なアドバイスをもらったと思ってますよ♪

自分の会いたい気持ちを大事にして、
後悔しないように、
会いに行ってみようと思います。

ありがとう♪
返信する