明日元気になれ。―part2

毎日いろいろあるけれど、とりあえずご飯と酒がおいしけりゃ、
明日もなんとかなるんじゃないか?

最近読んだ本。吉田修一、三浦しをん、川上弘美

2009-02-09 01:35:21 | 
今日は夜中12時くらいから家で日本酒を飲み始めて、
いい感じになってきたので、
今のうちに今年読んだ本のレビューでも書いておくことにする。

『元職員』吉田修一


吉田修一は伊坂幸太郎と並ぶ、有望な現代の若手作家だと思う。
今回もよかった。
この作家の良さは、いくら作品を発表しても、その質が落ちないことだ。
そこが伊坂幸太郎とも似ている。

タイにやってきた一人の男性。
心に何かを抱えている。
それが最初は何なのかわからない。
わからないまま物語は進んでいく。

タイに住んでいる日本人の若者と知り合う。
その男性の紹介で女性を買う。

物語がどういう方向へ進んでいくのか、検討がつかない。
この女性との恋愛なのか?
でも、「犯罪文学」とのふれこみなので、この女性を殺すのか?
それとも誰かを殺してタイに逃げてきたのか?
いろんな推測が飛び交う。

しかし、徐々にその事情が明らかになってくる。
そこでやっと「元職員」というタイトルの意味がわかる。

「吉田修一の文章は読みやすいけど、流せない」
と言っていた親友の言葉が蘇る。
本当にそうだ。

読みやすいのに流せない。
一文一文が意味をもって重くて。

ネタバレしたくないのであえてあらすじには触れないが、
ラストはハッピーエンドでもないし悲惨でもない。
どうなるのかわからないところで終わっている。

人間の弱さ、特に金に対する弱さをしっかりと描いた作品。
吉田修一はどの作品を読んでもハズレがない。


『光』三浦しをん


息もつけない作品だった。
一気に読み終えた。
だけど、決していい気分になるような作品ではない。
むしろ読まなければよかったと後悔するほど、どろどろしている。
でも、途中で止めることなんて決してできなかった。

ある小さな島で起こった不幸。
津波だ。
この津波によって島に住むほとんどの人が死んだ。
残ったのは、二人の少年とひとりの少女。
そして、生き残った少年の父親と、島の灯台に住むおじさん。

沈んだ島をあとにし、新たな生活を始めた生き残りの人々。
そこに潜んだ犯罪。

目を覆いたくなるようなシーンもあるのだが、
それでも目をそらせないほど引き込ませる。
これが三浦しをんという作家の実力なのだろう。

親から虐待を受け、すがりつく者。
それを疎ましく思う者。
どれだけ疎ましく思われても、わかっていても、すりこみのように
相手に陶酔し、自らの命まで預けてしまう。
その悲しさ。

そして、いろんなものを失って、心をなくした男。

いろんなものを得るために自分の体を差し出す女。

酒に溺れ、暴力をふるい続ける父親。

様々なヘヴィな人間模様。

好きな作品かと問われれば言葉に困るが、
でも、途中でやめることができないほど夢中になって読んだ作品ではある。


『どこから行っても遠い町』川上弘美


いかにも川上弘美らしい、ゆったりとした空気の流れる作品。
読みきり短編のオムニバスといった感じで、
1つの章に脇役として登場した人物が、次の章では主役になったり。
その展開が面白い。

うーんとうなるような場面もあり、文章もありで、
とても面白く読めた。





やっぱり「簡単すぎることはない」。

2009-02-09 00:04:33 | 生活
10日は私立入試。
ちょっと前に、私立専願の生徒が受かっていなくなっても
全然淋しくない……みたいなことを書いていたが、
撤回!!

今日は私の最後の授業だった。
やっぱりいつもと同じ。
もうこの子を教えることはないんだなぁと思うと、なんだか淋しくて。
「この子」というよりは、「この子のいる空間」ではなくなるということかな。

Cクラスは半分くらいが私立専願だから、
本当に淋しくなる。
やっとクラスとして団結し始めたのに、もう終わり。

いつも思う。
まだ15歳の子供は知らないんだ。人との別れを。
何の確証もないけど、塾を辞めてもまた会えると感覚的に思っている。
というか、会えるも会えないも考えていないと思う。
でも、大人は知ってるから。
この生徒のほとんどともう二度と会うことはない。

これまでに見てきた何百人という生徒のうち、
卒業後に会った生徒は数えるほどだ。
今どこで何をしているのかもわからないし、
女の子なんて街で会っても全くわからないだろうなぁと思う。
(化粧とかするし、女の子は変わるから)

人が人生で出会う人の数はあまりに多いから、
繋がっていようと思ったら、お互いに深い情熱を持ち続けなければならない。
そうでないとあっという間に途切れてしまう。
そのことを大人は知っている。
だから、淋しいのだと思う。

ひのきにいると、2月、3月はいつも「愛しい時間」になる。
あんなにやる気のなかった生徒が真剣に問題を解いている。
その姿を見ていると、いつも愛しさでいっぱいになる。
かわいくて、かわいくて……ヤバイ

やっぱり「ひのきの本」を書かないとダメだな。
そして、それを橋下知事に見せたい。
陰山先生の言うように、年々、本当に「読み書きそろばん」の基本的な学力の低下が激しくなっている。
今日でも、3500円の3割引がいくらになるのかがわからない生徒がたくさんいた。
「服買うとき困るやろ~?せっかくセールになってるのに」
と私が言うと、
「うん、だからいつも『いくらですか』って店員に聞くから」と言う。

……いいけどさ

でも、やっぱりそれくらいは知っていてもいいと思うのだ。
そして極めつけに一人が
「勉強しとくわ。俺、服屋で働きたいし」と言った

そりゃ、あんたは絶対知っといたほうがいいな……(笑)

橋下知事は「情報」だけで「大阪府の学力が低い」というけど、
やっぱりこの現状をしっかり見てもらわないと。
知事が感じているよりずっと深刻だと私は思う。
本当に、基本的な漢字の読み書き、小学生レベルの少数・分数の計算ができない生徒がどれほどいることか!
中3で「境内」とか「納屋」とか「家屋」が読めない生徒がたくさんいるんだから。

ひのきには大阪府からちょっとくらいお金が出てもいいんじゃないか?(笑)
かなり学校の先生ができていないことを助けていると思うのだけど。
まあ、学校の先生も大変だとは思うし、自分は死んでもやりたくない職業だから偉いなぁとは思うけど、本当に適当な先生もいるから。
それは生徒もわかっていて、同じ数学の先生でも「お前は○○先生の数学やからいいやん。俺は△△やで」みたいな話が出る。
生徒の評価ってシビアだ。

とにかく入試シーズンだ。気を抜けない。
今日も朝から授業で、家に帰るともう6時前。
授業は3時までだったのだが、その後、自習をみていた。
自分から勉強したいと言ってくれるのだから、それにはなんとか応えたくて。
私立は受かることが決まっているので問題ないが、
公立は本当にガチだから、とても心配

でも、何年やっても、何度教えても、時代が変わっても、生徒の質が変わっても、やっぱり一つだけ不変のものがある。
それは、「わかれば楽しい」ということ。「簡単すぎることはない」のだ。

今まで解こうと思ったこともない古文の問題。
面白い話を選んでゆっくり内容を話してやる。
もうほとんど答えを言っているのだが、考えさせるようにする(これが長年の講師経験で培ったテクニックだな

案の定、「なんや!意外に簡単やん!」と生徒が言い始める。
この言葉を聞くといつも「よっしゃ!!」と心の中でガッツポーズだ。
ほんまはほとんど答えを言ってるんだけど……。
さらに「わりと面白いな」なんて言われたら、嬉しくて舞い上がってしまう。

数学でも一緒。
全部○がつくと嬉しそうな顔をするのは、昔も今も変わらない。
「ほとんど○やったで~」と自慢げに言う。
「そっか!すごいやん!」と言うときの私の満足感といったら!!

こういう日は、堀先生がひのきをたたむまでここにいようかなぁという気持ちにもなる。

なんてね。(ヤバイ、ヤバイ、本気にされる

とりあえずあと少し!
今年も全員受からせたい、どうしても。
たった15歳で挫折なんて感じさせたくないから。

とはいえ、自分の仕事は相変わらずギリギリの毎日で。
来週も取材が2件。
そして、例の冊子はまだ続いている。
もういつから休んでいないのかわからない。
でも、結局のところ、自分はこうやってひたすら仕事をしているのが好きなんだと思う。

そして、1日のうちにこうやって30分でも好きなこと(仕事以外のこと)が書ける時間を作ること、それでなんとか自分を保っているような気がする。
あ、あとは酒と本とBLUESだね。