先日、彼と二人で
「シングルモルト探求セミナー ~風土が生み出すモルトの味わい講座」
を受講してきた。
といってもそんな大げさなもんでもない。
サントリー山崎蒸留所で開いている予約制の講座で、
3コースあるがどれも1回きり。
1時間半程度で1000円と安い。
ただ、20名限定なので、いつも数ヶ月先までいっぱい。
やっと空いているところを見つけ、もぐりこんだのだ。
まずはウイスキーができるまでの工場見学。
一般の見学者よりもっと専門的なことを説明してくれるので、非常に勉強になる。
ウイスキーってのは、ロマンだなぁといつも感じる。
ビールみたいにすぐできるわけでもないし、焼酎みたいに1回蒸留でもない。
2回蒸留して、さらに何年も寝かせるわけだ。
あの長い年月を経て、樽の中で色と香り、そして味わいが少しずつ変化していくことを考えるとぞくぞくする。
この寝かせる樽ひとつとっても、蒸留所によってこだわりがあり、かの有名なマッカランは、スペインのシェリーを造っているところへ樽を提供し、そこでシェリーを造ってもらったあと、その樽を引き上げてきて、それを使って貯蔵する。
だからこそ、マッカランのあの味なのだ。
甘い香り、豊潤な深い味わい。
見学が終わると、これまた一般見学者とは違う、特別室へ案内される。
まるでディナーかパーティーのように、テーブルにはウイスキーとおつまみがセッティングされている。
テイスティングの前に、ウイスキーの特徴やテイスティングの仕方、それから、山崎の風土についての講義を受ける。
きれいなお姉さんなので嬉しい。目の保養。

(こういうところがオッサンなのだ)
いろいろ勉強になっておもしろかったけれど、
その講義中、山崎の風土の説明で、上空から撮った写真が映されたのが嬉しかった。
私の町が現れる。
桂川、木津川、宇治川の3つの川が、淀川に注ぎ込む、ちょうどその部分に私の町はある。
3つの細い流れが大きな川に注ぎ込んで1つになる。
その画はドラマティックでとても美しく、いつも胸を揺さぶられる。
後鳥羽上皇が愛して止まず、谷崎が小説に綴った、その意味がわかる。
決して「大自然」というわけではなく、古来から日本人が愛してきた、小さな風情のある自然。
こじんまりと控えめで、なおかつインパクトはあって。
久しぶりに自分の町を上から見て、やっぱり世界で唯一自分が愛せる場所だと実感した。
4年半、大阪市内で生きたけれど、うまく生きられなかった。
この町で見る月がいつも恋しくて。
大阪と京都の境。
大阪でもなければ、京都でもない。
他のどことも違う文化がこの町にはあり、なぜこの広い世界でここにたまたま辿り着いたんだろうかと思うほど、ぴったりと私の感性に馴染む。
この出会いは一つの奇跡的だとすら思う。
まるで、彼との出会いのように。(え?のろけですか?)
そんなことを1枚のスライドから思いながら、きれいなお姉さんを見つめていた(笑)。
講義が終わると、やっとテイスティング。
山崎12年、白州12年、マッカラン、ボウモアの4種類とおつまみが並んでいる。
1つ1つの、色、香り、口に含んだときの味わい、余韻をゆっくりテイスティングしていく。
もっとゴクゴク飲みたいところだが、これはバーではなく講義なので仕方がない。
でも、こうして少量をゆっくり味わってみると、ウイスキーのもつ特徴がはっきりとわかって面白い。
日本酒の利き酒より簡単だろうなぁ。
そして、おつまみを合わせてマリアージュを楽しむ。
山崎12年には、モナカ。
このモナカが「とらや」ので、めちゃくちゃ美味しいのだ。
白州にはアーモンドおかきとドライフルーツ。
これまたおかきが上等でうまい。
マッカランには、初めて知ったけれど、チョコレートケーキが合う。
ナッツやドライフルーツが入った、ちょっとビターなケーキ。
この組み合わせは衝撃の旨さだった。
マッカランは24、5の頃よく飲んでいたが、今は同じスペイサイド系でも、もう少し華やかなリベットやフィディックのほうが好きになり、最近ではほとんど飲まなくなっていたが、こうして飲むとやっぱり美味しいウイスキーだなぁ。
そして、ボウモアはまさにアイラらしい、スモーキーな香り。
昔はこれが正露丸っぽくて苦手だったけど、最近はなかなか美味しいと思えるようになった。
アイラ好きの人こそが、本当のウイスキー好きという気がして、なんとか克服しようとしているのだが、やはりスペイサイドを出されると、そっちに行ってしまう・・・。
たとえるなら、
ビターチョコより、甘いミルクチョコが好き、
辛いカレーより、甘いカレーが好き、
黒麹の焼酎より、白麹の焼酎が好き、
みたいなもんで、どうも「本格派」から一歩劣るようで格好がつかない。
(あくまでも、私の思うイメージだけれど)
いつか、アイラ系のウイスキーをちびちび飲む人になりたいものだ。
(でも、チョコは絶対甘いのが好きだよ!ビターは嫌なの・・・)
このボウモアにはチーズを合わせて(またこれもうまいチーズだ)、あとは美味しいハイボールの作り方を学んで飲み干したら終了。
合わせるとシングル3杯分のウイスキーだった。
もっと飲みたい・・・
今年、彼の休みがとれるか非常に微妙なので、シカゴ行きはまだ五分五分だが、もし無理だった場合は、お金を貯めておいて、やはりスコットランドへ行きたい。
ウイスキーの蒸留所を巡りたいなぁ・・・
これは前から、あやととしくんとも話していて、いつか実現したい旅の一つだ。
あのバイリンガル夫婦と行けば楽しいだけでなく、言葉に困らない。
もしくは、武田信玄好きの彼のために、山梨の白州蒸留所へ行くか。
どうしたって、旅には酒がつきもので(笑)。
昨日から、あれもやりたい、ここにも行きたいと、あれこれ欲望ばかり書き綴っているが、この時間は本当に楽しい。
学生のとき、地図を広げて、JRの時刻表とにらめっこしながら、次はどこへ行こうかと考えていたときに似ている。
今、こんな楽しい欲望と闘えるのも、仕事が充実しているからこそ!
さあ、今日もこれから12時間、原稿を書きまくる。
言葉があふれて、自分を押し上げてくれる、こんな日々が私は好きだ。
この世で、言葉だけが唯一の理解者であるかのように、私の考えも感情もすべてカタチに変えてくれる。
言葉に支配されていく自分が、とても心地良い。