今日は梅雨ということを全く忘れさせるような晴天…というより〝もう梅雨が明けたんじゃないの?〟というような暑さでした。これはやっぱり夏至が過ぎたからだ…なんて主人は言いますが、それはないですよね。新聞の天気予報を見ると、明日までは晴天ですが、明後日の午後からは段々と崩れ、しばらくの間雨と曇りが続くんですって。やっぱり梅雨明けはまだまだなんです。
車に乗ると30度を超す暑さを、主人とF俳句教室へ。ここも4ヶ月ぶり…。その兼題が2月の時でしたから〝草餅〟。3月も、4月もそのままにして再開を待ちました。やっと6月開催。となればいくら何でも春の季語ではねえ~と言って、夏の〝葛餅〟に変えました。
この〝葛餅〟というのは、葛粉と水を練り合わせ、煮立ったものを箱に流して冷やし固めた菓子です。他に〝葛切〟や〝葛饅頭〟〝葛桜〟なども同じように葛粉をもとにした菓子ですが、葛の涼味とさっぱりとした食感で夏に好まれるものとなったのです。
葛餅や吉野まぶしき空となり 茨木和生
葛切の舌にはかなき午後三時 文挟夫佐恵
宵は灯の美しきとき葛桜 森 澄雄
私もそうなのですが、殆ど句会がないと句を作りません。よく言われるのに、〝先生はすぐに句が出来るんでしょう〟と。とんでもありません。さあ、句会があるから明日までに5句作らないと…、と考えて、やっと出来ることもあれば、一晩考えても1句もできないことだってあるんですから。何と言うこともなく出来るくらいなら苦労はしないのですがね。
それに夜中に朦朧として考えた句なんて碌なものがなく、朝起きてみると、どれも使いようのないものばかり。こんなことなら寝た方が良かったなどと思ったこと、みなさんにはありませんか。
だから4ヶ月もブランクができると、俳句的な頭に切り換えるのが難しくなります。だからせっかく調子を上げていたYさんも苦労して…ではその句を少し見てみましょうか。
潮騒のかすかな座敷葛桜 〈潮騒が座敷へかすか葛桜〉
フルートの音どこからとなく葛桜 〈どこからとなくフルートや葛桜〉
野良猫とちらっと合ふ目草の餠 〈野良猫とちらと目の合ひ草の餠〉
どの句もよく分かりますし、詩情も感じられて、まあまあの句です。やはりここまで来るのに何年か掛かったはずですのに、勿体ないことです。ちょっとのことですがこの推敲が俳句にはとても大事なんです。助詞の1音や語順を変えたことで句ががらっと変わることってよくあるでしょう。それなんですよ。
それでは見てみましょうか。俳句が文語でということはいつも言っていますので、Yさんもそれは分っていて、三句目の「合ふ」というように旧仮名遣いを用いています。それなのに1句目の「かすかな」は口語文法なんですね。文語ならば「かすかなる」と。でも字余りになるのでそうしたのでしょうが、これはやはり大事なところ。また、リズムの上では2句目の上五が字余りだけで問題はないです。なのに今ひとつすっきりしないのでは? それはYさんも気がついていて、…でもどうしていいか分らなくて…と、悩んだ末の結果だそうです。では、ちょっと手を入れてみましょうか。その句を原句の次に並べてみました。見比べて、繰り返して読んでみて下さい。いかがでしたか。何か気がつきましたか?
これはどういうことかというと、要するに中七と下伍の繋がり方の違いなんです。3句ともここで切れが入っているのですが、それを名詞と名詞でぶつけている。更に大抵下伍に季語がきているので、まるで取って付けたように感じられるのです。せっかく切れているのに息が出来ない…即ち息苦しく感じるのです。そこで間を置いて、おもむろに季語へと転換させる、そう説明したら分ってもらえるでしょうか。
特に2句目などは、上五が字余りのため〈どこからとなく〉が〈葛桜〉に掛かるように感じられておかしいと思うのです。
以上で同じ言葉を使ってもその組み立て方次第では句が良くも悪くもなるということが納得できたでしょうか。Yさんも、〝ああ、そうだった!〟と、思い出してくれたようでした。だから、継続しないと、人というものはすぐに忘れてしまいますので、また振り出しに戻ってしまうんですね。
このことは、何にでも言えることでしょう。即ち〝継続は力なり〟ということなんですよ。だから、みなさん休まずにガンバリまっしょ!
写真は、〝ニワウメ〟で、花は春の季語、実は未だ歳時記には載っていませんが、よく似たユスラウメの実が夏ですから使ってもいいかと思います。
この〝ニワウメ〟は、中国の北部を原産とするバラ科の落葉樹で、古い時代に日本へ渡来しており、万葉集にも古名ハネズとして登場します。花や果実の様子をウメに例え、庭に植えやすい小型のウメといった意味合いで名付けられましたが、実際の質感はウメとは異なります。
花期は4月ごろで、葉と同時あるいは葉に先立って小花を枝いっぱいに咲かせ、花弁は5枚でその先端は丸みを帯び、多数のシベがあります。原種はピンク色ですが白花の品種もあり、開花期間は比較的長いです。6月ごろにできる果実は直径8~12ミリの球形。熟すと光沢のある赤色になり、生で食べることができます。中には淡い褐色の種子が一粒入っており、漢方ではこれを「郁李子」と呼んで杏仁などと同様に薬用とするようです。
6月16日と21日に撮ったもの。キレイに色づいていましたので、食べてみるとまだ酸っぱ~い。鉢で枯れそうになっていたので地植えすると生き返って、この通り小さいながらも初めて実を付けました。やっぱり実の生るものはいいなあ。