今日で6月も終り…昨年のこの日のブログには、夏越しの祓の〝茅の輪潜り〟に中津瀬神社へ行ってきたと書いていました。やはり雨が降っていて、その中を行ったようですが、今年もやはり雨。
一日中外へ出ず家に籠って溜まったものの整理をしました。それでやっと落ち着いて、俳句の話が書けそう…さあ~て、何を書きましょうか。では、先日の句会でちょっとビックリした話でも…。
兼題が「蟻」のときでしたが、〈土起こす一鍬蟻の塔崩し〉(つちおこすひとくわありのとうくずす)という句が出ていました。
〝この句なかなか勢いがあっていいと思うんだけど…。でもなぜ〈土起こす〉が必要なの?〟〝エエッ、だって畑の土を耕していたときに蟻の塔を見つけたんです。それで、一鍬でそれを崩したから…〟〝それホント?どこで蟻の塔を見たの?〟〝そりゃあ畑の草の中にありましたから…〟???
さあ、この会話で分かりましたか?作者はどうも〝蟻の巣〟を〝蟻の塔〟と勘違いして詠んだようですね。このような問題は初心者によくあります。歳時記で季語を調べるとき、必ず親季語(主季題)には子季語(傍題)が載せてありますが、それぞれの言い方でみなニュアンスが違いますし、意味そのものも違う場合があります。一応同種のものだからとして一括してまとめてあるものを、時々音数の関係でどれを用いても同じだと思い込んで使う人がいるんです。
この句の場合は、下五に用いようとしたために〝蟻の塔〟となったんでしょう。四音ならば〝蟻塚〟となったかも知れませんね。でも考えてみて下さい。そもそも「塔」とは、〝高くそびえ立つ建造物〟のことで、「塚」も〝土を高く盛った所〟という意味です。だから蟻の塔も蟻塚も、単なる蟻の巣という意味ではなく、〝蟻や白蟻が作った柱状、または円錐状の巣〟のことを言うのです。その大きさは直径10メートル、高さ2メートルに達するものもあるということですので、すぐ目に付くでしょう。私はカンボジアへ行った時に見つけてビックリしましたから…。日本では中部山岳地帯から北海道にかけて見られるらしいのですが、でも高さ60センチメートルほどの塚ということです。だからこの辺りですぐに見られるはずはなく、見るとすればせいぜい普通の〝蟻の巣〟ぐらいでしょうか。
この話をすると、作者本人が一番ビックリしていました。このように季語というものは表現の仕方によっていろいろと変るものなんです。歳時記にあるからと言ってそのまま機械的に当てはめて使わないようにしましょう。俳句にとっての季語というのは、要するに〝心臓〟なんですよ。それによって俳句が〝生きるか死ぬか〟ということ。だから、よくよく考えて季語を選ぶようにしましょうね、みなさん!
写真は、主人の陶芸展に出した作品です。たまには見てやって下さい。(笑) 結構な大作で高さ30㎝はあると思います。