ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

兼題は〝新酒〟です!

2020年10月13日 | 俳句教室・兼題・句会
 今日もこちらは降水確率0%の青空。午後の俳句教室に行こうと車に乗ると、久し振りに車内温度は28度まで上がっていました。でも朝夕の冷え込みで却って気持ちがいいぐらい…まだまだお天気は続きそうです。
 今回の兼題は〝新酒〟。晩秋の季語で、今年とれた新米で造った酒のこと。昔は農家などで自家用として新米の収穫後すぐ醸造したので、新酒は秋のものでした。ところが、現在は寒造りが盛んになり、新酒が出廻るのは二月頃なので、秋の感じは薄れつつあります。しかし、材料は新米ですし、醸造の始まる頃はまだ秋の気配が残っていたりしますので、新酒はそのまま秋季に収められているというわけです。
  とつくんのあととくとくと今年酒      鷹羽狩行
 ウウ~ン、飲み助さんにはきっとこの音がたまらないでしょうね。〈とつくん〉とは恐らく何かの特訓…能力向上のための短期間集中訓練のことでしょうが、俳句の特訓?そんなのあるかしら…なんにしろそれが終わってからの慰労会でしょうか。この句は計算しつくされた〈とくとく〉という擬音語の働きが全てを語ってくれているようです。あえて平仮名で書くことも、5回の「と」と「く」の繰返しを目立たせていますし、それはとっくりの酒を注ぐ音。そして、それを受ける側の「おっとっと」を連想させるというまるでマジックのような技巧的な句ですね。さすがは、知的写生やユーモア、ウィットを持つ句風で知られた鷹羽狩行氏ならばこその作品です。
 ちなみに、「新酒」には、「今年酒」「新走(あらばしり)」「利酒(ききざけ)」などの傍題もありますからね。
 教室の句で最高点を取ったのは、〈下戸なれど新酒ならばと出すお猪口〉でした。よく解るいい句です。飲めもしないのに新酒と聞いて、それなら少し…と。〝お猪口(ちょこ)は家に仕舞っていたものを出したの?〟と聞くと、〝エエッ、違いますよ。宴会の時にあった猪口で…〟〝そこ、そこ。この句の曖昧なところは…〟と。どういうことか分かりますか?
 そこで、それをハッキリさせるために、〈勧められ新酒ならばと承くる猪〉と直しました。原句では〈…なれど〉と〈ならば〉がダブっていますので、理屈っぽく煩わしく感じます。また、言わなくても〈新酒ならば〉と条件を付けているので、作者が酒飲みではないということも分かりますもの。更に〈勧められ〉とすることによって、この場が酒席であるということ。もし上司(先輩?)から頂くのだとすれば〈出す〉では失礼になるでしょう…だから、〈承(う)くる〉とすればいい。おまけに〈お猪口〉と、尊敬の「お」は不要…と。いかがですか?できればこういう所まで考えた上で詠んでほしいものですね。では、またガンバって!
 写真は、先日の義母のお祝の時、主人も誕生祝いだったので、娘夫婦が贈ってくれたお酒とぐい飲み。
 お酒は山口県周南市・男自慢酒造株式会社の純米大吟醸「龍の尾」(たつのお)。〝穏やかな吟醸香 磨きぬいた洗練 天空に昇り雲間に消えゆく「龍」のイメージを繊細な余韻に凝縮しました〟と。全量山田錦4割磨 日本酒度+4 アルコール分16度
 ぐい飲みは伝統工芸の江戸切子、硝子工房彩鳳の一つ一つ丁寧に仕上げた、葡萄文様の上品な紫の酒杯です。
 早速2人で頂きました。江戸切子はなかなかいいですね。萩焼や主人の焼いた手びねりのぐい飲みもいいですが、それとは違った…おしゃれでとてもキレイ、底が厚いので安定感もあって…これはいいね!アリガトウさん。
 酒の方は新酒じゃなかったんですが、一口飲むと…フルーティーでこれは甘口かな?でも深みもあるし…ちょっと獺祭と似ていて飲みやすいお酒でしたよ…なんて何だかツウみたい…でしょ!アハッ…
 
 
 
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兼題は〝爽やか〟で~す!

2020年10月11日 | 俳句教室・兼題・句会

 関東方面では台風14号の影響で雨が降り続いていたようですが、こちらでは、昨日はまさに〝天高く馬肥ゆる秋〟を実感させる、雲一つ無い青空が広がっていました。午後になると少し雲がでてきましたが、それもかえって心を和ませてくれるようなもの。これぞ〝爽やか〟な秋日和といっていいでしょう。

 第2土曜日でしたので、恒例の午後の俳句教室と夜の句会の連チャンでした。午後の部に新会員さんが入られましたので、その分少し時間が延びて、夜の部の人たちの待っている部屋まで話し声が聞こえたようす、部屋を移動すると、〝先生、お疲れさまです〟と、労われてしまいました。

 入会されたのはまだ若いSさん。テレビのプレバトを見て興味を持ったということと、歳を取っても俳句だったらできそうだし、頭のトレーニングにもなるからとは、自己紹介で。やはりテレビの影響は大きいですね。

 さて、その午後の部の兼題が「爽やか」だったんです。〝みなさ~ん、今日のような日を爽やかというんですよ。そんな句を詠んできましたか?〟〝ハ~イ!〟〝それは楽しみなこと〟と、順調に開始。

 この〝爽やか〟というのは、さっぱりとして気分のよいさま、気持よくすがすがしいさま、はっきりしているさまという語意から、秋の澄んだ大気の特色を表す時候の季語です。だから、遠くの山々などもくっきり見えるし、「さわ」は「さわさわ」や「さばさば」という語としても用いられますので、肌の感触などもさらさらとして心地がよいのです。

  爽やかや朝の刻打つ時計台           水原春郎

  爽やかやひと日を父の忌に集ひ         德田千鶴子

 どちらも、わが結社「馬酔木」の主宰の句です。水原春郎先生は前主宰で、これは平成13年(2001)11月号に掲載された句、札幌にて詠まれたもの。後句は現主宰の句で、平成29年(2017年)10月号に掲載されました。

 春郎先生が札幌に行かれたのはきっと10月頃だったのでしょう。あの有名な札幌の時計台を詠まれたのです。朝起きてホテルの窓を開けると、北海道のちょっと冷やっとする空気が時を打つ鐘の音とともにサアッと入ってきた。それを胸一杯に吸って、ああ〝爽やか〟な朝だことよと満足げな…春郎先生の顔が浮かびます。時計台の白さがもう紅葉しはじめた木々の色に美しく映えて…。

 春郎先生は、平成28年(2016)9月25日に、94歳でお亡くなりになりました。その1周忌(水原家は神道ですのできっと式年祭だと思いますが…)を修するためにご親族が集まられたとき、千鶴子先生が詠まれた句。こういう何のてらいも無い句というのは、いいとか悪いとかいう詮議をするものではないと、私は思っています。この忌日が爽やかだったのはもちろんのこと、ここに集まった人たちも爽やか。それはひいては亡くなった人、春郎先生が〝爽やかな〟人だったということでもあるのです。要するに春郎先生が亡くなられたことは悲しいことですが、全身全霊で「馬酔木」を守って、生を全うされた姿、それはみんな分かっていますので…。素直に死を受け入れられたのです。

 まして、春郎先生はめそめそしたりすることが嫌いで、何時も人を笑わせては喜んでおられたのを想い出します。更に〝名前の通り私は晴れ男なんだよ〟といつも仰っていましたもの。だから、私も…

  晴れ男といふが黄泉路(よみじ)の秋時雨

という句を、〝水原春郎先生を悼み〟の前書きを付けて、句集『甘雨』に収めました。春郎先生が出席される新年会や吟行会などはいつも晴れていましたのに、葬儀の日にはどうしたことか秋の時雨が来て…、これはきっとみんなの悲しみが呼んだのに違いないわと思いました。

 今回の教室の高点句は〈爽やかや鼓笛の音の遠くより〉でした。季語がちょっと付き過ぎで、類そうも多いかなとは思いましたが、初心者ならばこれで上等です。ハイ、〝才能あり〟、ガンバってね!(笑)

 夜の部の句会の話は、またにしますね。写真は、先日の台風で葉が枯れてしまって、もうダメかもと思っていた「ニワウメ」に、葉だけでなく花まで咲いていました。もうビックリ!生命力があるんですね。よかった!ついでに「ヒュウガミズキ」と「ボケ」の台風による狂い咲きもどうぞ。

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