昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  68

2012年05月20日 | 日記
「ちょうどよかった、思うたんよ、私。小杉君には悪いけど」 伏せていた目を上げ、夏美さんは語り始めた。長くなりそうな予感がした。僕は、もう質問はしないことにした。夏美さんの目を見つめ、首だけを上下させた。 「店が赤字でねえ、困ってたんよ、実は。なんとなく、わかってたでしょ?」 確かに不思議だった。いつもほぼ同じ顔ぶれがカウンターに並び、ただジンライムをあおっているだけの店が続くはずはない。少し . . . 本文を読む