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■タイに吹く風(3)

2014-10-30 | ●古都チェンマイ

■■■■■■■北方の薔薇に恋い焦がれる天使の都■■■■■■■
阪南大学大学院 企業情報研究科兼経済学部  教授
特定非営利活動法人日タイ国際交流推進機構 理事 
石井  雄二                                            
北方の薔薇チェンマイ
タイの国のキャッチコピーである「微笑みの国」という表現は、いまでは
すっかり
定着した感がある。「微笑みの国」と言っただけで、それはタイの
国のことだと反射的に理解する人が多いと思われるほどに、いまやタイの
国の特徴を一言で表す定番の表現にまでなっている。それと同じように、
チェンマイをシンボリックに表現する言葉として、「北方のバラ」がよく使わ
れる。
頻繁
に使われる「古都チェンマイ」であれば、日本人であれば タイにおけ
る日本の京都的ポジショ
ンの意味で、実になじみやすく 即イメージが湧き
あがるのであるが、「北方のバラ」となると、か
なり違和感を覚える。

チェンマイを訪れた人にとっては、「北方のバラ」という表現は、たしか
理解しがたいかもしれ
ない。山間部の盆地状の古刹の多い素朴な田舎街と
も言いうるようなチェンマイは、「バラ」のイ
メージに、とても似つかわしいとは
思わないはずである。

あの真紅のバラのイメージが、どうして
チェンマイに結びつくのか、誰がこん
なキャッチフレーズを考えたのか、それほど真剣に考えなく
ても、疑問は深
まるばかりである。
タイといえば「ラン」の花、その栽培のメッカでもあるチェンマイ
は当然「北方
のラン」という表現の方が、古都と同様 極めて座りよくフィットするように思わ
 
「北方のバラ」という表現は、さまざまに解釈できるが、タイ人がバラの花を
こよなく愛しているこ
とも、その一つの要因であるにちがい。 タイ人 特に女性
は、プレゼントとしてバラの花束が贈られ
るのを最大の歓びとしている。

タイのバレンタインデイには、女性から男性にチョコレートで愛の告
白をする
日本と違って、タイの場合、逆に男性が,女性にバラの花束をプレゼントする
ことが習慣化
するまでになっている。そのことは、バレンタインデイの日には、
世界でバラの花の値段が最も高
くなるとも言われほど タイの女性のバラ好き
は有名である。

また北半球の温暖地域で栽培されるバラは、標高600メートルにある亜熱帯の
山岳地域でも栽
培適地となり、実際、チェンマイからラオス・ミャンマーさらに中
国雲南省あたりの山間地域では、
バラの切り花栽培の主産地となっているとい
う事実も関係しているかもしれない。

  

しかし、こうした事実からのアプローチによる解釈は、チェンマイの街の本質
的な
特徴を「バラ」で表現することの理由にはならない。それは 傍証資料を集
めて外堀を埋めるような作業であり、な
ぜ「バラ」なのかを明確に説明するもの
ではない。

そこで、次に、「バラの花」の「花言葉」から接近
してみると 自己流の明快なスト
ーリー仕立ての我田引水気味の説明が可能となる。バラの「花言
葉」は、色の
違いによって様々あるようであるが、一般的には、「恋焦がれる」「情熱の恋」「純
粋の
愛」などとなっている。

■「恋焦がれる天使の都チェンマイ
●「北方のバラ」というのは、首都バンコクからみたとらえ方で 中心地・バンコクか
らはるか700キ
ロメートルも遠く離れ 周縁地域・チェンンマイに恋心を寄せ、純粋
意に「恋い焦がれる」という物語を
シンボリックに表現したレトリックと考えることに
したい。

いまやタイの首都でかつ王都、しかも近代
的な世界都市にまで成長したバンコク
ではあるが、その街並の物理的な基本的な編成や構造、そ
れらに反映されたタイ
人の伝統的な心の在り様や「生」と「死」の生き様、 もっと言えばタイ人の
「心の故
郷」ともいえるものが、古都チェンマイの街に純粋な 理念型として持続的に脈打っ
て保存
されていると考えることができる。

 
チェンマイは  第2の都市といわれるが 人口規模では30万人に満たない第
3の都市で、1980年
代後半以降の高度成長の波に乗って、それなりに大きく
成長・発展してきたことは事実であるが、
今のバンコクからみれば、 悠久の歴
史に静かに佇んだ穏やかな田舎の街といっても過言ではない。

しかし、それでもバンコク=タイ民族の始原ともいえるアイデンティティを初めて
大規模な王朝制の
もとで育んだ歴史的蓄積は、中心地の首都バンコクの中に
「変わらないもの」として息づき、それが
世界の近代都市であるバンコクの魅力
にもなっている。

  
バンコクのタイ語名はでクルンテープで、その意味は「天使の都」である。
都会の若い美しい天
使たちが、チェオプラヤ川を遡り、その支流のピン川のほと
りに咲いた片田舎のバラに恋い焦がれ
るというストーリーは、たしかに大いなるロ
マンス物語にはちがいない。 そうだとしてもタイの正史
において、仏教文化が本
格的に勃興したスコータイ王朝は、その始原として位置づけられ、現在に
連なる
王国の理念型と考えられている。


●この意味でタイの正史から外れた「北方のバラ」=チェンマイへ注がれる中央=
バンコクの人々の
まなざしには、同じ「恋い焦がれる」にしても、うら悲しくわびしい「
慈悲」の念が込められている。そう
いう風に感じるところにこそ、隠されたチェンマイ
の魅力が息づいているように思われる。


 

 

 


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