世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

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見えない空気

2018-08-09 04:16:40 | 黄昏美術館


イワン・クラムスコイ

原題「夫人の肖像」


これは全部を嘘で作り上げた女性である。顔も体つきもすべて人から盗んだものだ。この中にいる本人の本来の姿は、もっと貧相で、これとはまったく違う姿をしているのである。

身分のありそうな服を着て、真に迫って自分をやっているが、それ自体が芝居なのである。本当の自分はこんなものではない。苦い事実がいくつもあるはずである。見かけからは考えられないようなことを、この女性はいくつもしているはずだ。

だからなんとはなしに、まるでキツネが化けているような、胡散臭い空気をまとっているのである。

画家はその空気をもみごとに描き切っている。

嘘でつくりあげた人間には、いつもこの見えない空気がまとわりついているのである。





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