ジョッシュの日記

ジョッシュは好きな映画「big」の主人公の名前からとりました。趣味を大事にしながら長男くんと次男くんの育児に奮闘中です。

ボクシング過去名勝負(ベスト20)1位

2012年12月31日 09時29分07秒 | ボクシング

さてやっと1位の紹介です。1位はもちろんこちらです。

 

畑山隆則 vs 坂本博之(2000年)

「夢の日本人対決」、私が思い続けたのは「辰吉vs鬼塚」や「鬼塚vs川島」最近では「西岡vs長谷川」。でもなかなか(色んな事情があり)実現しないもの。しかし畑山隆則が2階級目のライト級を制したその日のリング上、自信満々の畑山はインタビューで「次は坂本選手とやります」と高らかに宣言をする。そこから「夢の日本人対決」の実現に向けて急ピッチに事が進んだ。畑山隆則はジュニアライト級とライト級の2階級を制覇、途中人気者だった「コウジ有沢」との激戦も制し、スター街道を直走っていた。対する坂本博之は3度の世界挑戦を失敗(ジョンストン、バサン、セラノ)、幼少時期を暮らした養護施設での壮絶な体験(ザリガニを捕っては食べて飢えをしのいだなど)を経験し、自分の為、そして今も養護施設で頑張っている子供達の為、世界に挑み続ける姿勢は誰もの心を熱くした。とにかく2人は人気があった。しかしその2人の印象は失礼ながら「陽と陰」といった感じがする。嫌みのないビックマウスとKOを増産する切れ味鋭いパンチ、ライトアップされたリングで魅せるパフォーマンスは常に観客を魅了し続けてきた、いとも簡単に2階級目のベルトを獲得した姿は、(減量を含む)苦しい生活から解き放たれた「陽」の畑山隆則。平成のKOキングと言われ、新人王、日本タイトル、東洋太平洋タイトルと豪快な倒しっぷりのスタイルも世界戦では不運に見舞われいつも後一歩届かず。それでも「いつか子供達にベルトを見せたい」と戦い続ける姿は、日の目を見ようと土の中でもがき続ける「陰」の坂本博之。とにかく2人に勝たせたい、そして2人に負けて欲しくない。そんな気持ちで会場(横浜アリーナ)で観戦した。

大勢の観客の中、ゴングがなった。坂本はいつも通り前に出て大きなパンチを振るうスタイルを見せる。対する畑山は足を使かうかと思いきや、坂本の攻撃を真っ正面から受け止め、打ち合いを演じる。ハイペースで始った試合も、中盤まで全くペースは落ちず、まるでボクシング、いや「打ち合いを楽しむ」かのように2人は打ち合った。しかし2人の大きな差「ディフェンス技術」が試合の流れを変えていく。坂本は畑山のボディー攻撃を数多く被弾し、終盤になると動きにキレがなくなってきた。明らかに動かなくなってきた身体だが、聞こえてくる子供達の為に弱気な表情は微塵も見せなかった。9Rはダウン寸前までダメージを負った坂本に、ゴング終了後、畑山がグローブで坂本の身体にタッチしている。明らかに一線を越えて立ち続ける姿に、畑山も思わずメッセージを送ったのだろう。そして10Rそれでも前に出続ける坂本に、畑山のワンツーがヒット。それをまともに受けた坂本はまるでスローモーションのように崩れ落ちた。背中を押し続けてくれる子供達、そして応援し続けてくれるファン達への「最後まで倒れない」という気持ちがスローモーションと感じさせたのだろう。

ボクシングの試合でこれほどまでに感動した試合は無い。2人を「陽と陰」という表現を使ったが、両者とも苦労した過去があり、そして努力し続ける姿があるを知っている。9R終了時の無言のメッセージ、お互い根底にある情熱は一緒だから、何らかの共感があったのだと思う。しかし本当に畑山には防衛して欲しかったし、本当に坂本にはベルトを巻いて欲しかった。結果、畑山は防衛し、坂本はベルトを巻く事が出来なかった。畑山が勝利者インタビューを受ける中、リングを降りた坂本が観客に手を合わせた、それはまるで「ごめん、チャンピオンになれなくて」と言っているように。その瞬間に大粒の涙が出た。時には白黒つけて欲しくないことも、白黒がついてしまう、ボクシングは時に非情だ。


そして「ボクシングは最高に面白いのだ」


ボクシング界のぶっちゃけ話
クリエーター情報なし

宝島社

 

「運命」を跳ね返すことば (講談社プラスアルファ新書)
クリエーター情報なし
講談社

 

以上。