世界チャンピオンになれる実力を持ちながら。誰もが世界チャンピオンになるだろうと思っていた。しかしあと一歩のところで穫れなかった選手、続いてはこの3人を挙げてみたい。
ロッキーリン(28戦26勝11KO2敗)
台湾出身初のプロボクサー。7戦目で日本ストロー級チャンピオンを獲得し7度防衛している選手。パンチ力は無かったがアウトボクシングを得意とするテクニックを持った選手だった。世界初挑戦失敗後には攻撃的なスタイルに変貌し、ボクシングの幅が広がった。世界挑戦は2回。1回目は『超』安定王者「リカルド・ロペス(メキシコ)」に2RTKOの完敗、何も出来ず涙にくれた。2回目は「ワンデイ・チョー・チャレオン(タイ)」と接戦を演じるも2-0の判定で敗戦となった。1回目の世界挑戦失敗から見事に復帰したが、外国人ボクサーということもあってか、2度目の世界まで少し時間(約6年)が掛かってしまったのが痛かった。
・ロペス(2階級制覇チャンピオン、ミニマム級(22度防衛)、ライトフライ級(2度防衛)、敗戦なしのまま引退)
・ワンデイ(2階級制覇チャンピオン、ミニマム級(1度防衛)、ライトフライ級(防衛なし))
坂本博之(47戦39勝29KO7敗1引き分け)
東日本新人王、全日本新人王、日本チャンピオン、東洋太平洋チャンピオンを獲得している選手。豪快なKO勝利が多く、「平成のKOキング」というニックネームは有名。安定日本王者だった「リック吉村」、1階級上の日本王者「桑田弘」などから快勝し、中量級ながらも世界を期待される選手となった。世界挑戦は4回。1回目は技巧派チャンピオン「スティーブ・ジョンストン(米国)」のテクニックに自慢の強打を空転させられ惜敗。2回目はハードパンチャー「セサール・バサン(メキシコ)」と打ち合うも有効打(手数)の差で惜敗。3回目は比較的攻略しやすい「ヒルベルト・セラノ(ベネズエラ)」から序盤に2度のダウンを奪うも、その後パンチで受けた傷による負傷TKO負け。4回目はあの有名な「畑山隆則」との激闘、殴り合いの末リングに墜ちた。結果的には3回目のセラノを攻略出来なかったのが痛かった。
・ジョンストン(ライト級2回獲得(3度防衛、4度防衛))
・バサン(ライト級(2度防衛))
・畑山隆則(2階級制覇チャンピオン、スーパーフェザー級(1度防衛)、ライト級(2度防衛))
名護明彦(37戦29勝15KO7敗1引き分け)
日本チャンピオンを獲得し2度防衛している。特に日本タイトル挑戦の「松倉義明」戦で見せた豪快な倒しっぷり。その強さに「具志堅2世」とニックネームが付くほどだった。世界挑戦は2回。1回目は日本の「戸高秀樹」と対戦、名護はパワフルなスイングを見せるも、大きなパンチは戸高にことごとく外され、逆に細かなパンチを当てられ内容は完敗だった。2回目も日本の「徳山昌守」と対戦、この試合は名護のパンチで徳山からダウンを奪うシーンもあった。しかしそれが徳山の警戒心を強め、その後は徳山の巧みなアウトボクシングに翻弄されまたもや完敗だった。世界戦はともに完敗。しかしボクシングセンスは世界チャンピオンになってもおかしくないほど高かった。松倉戦で見せた豪快KO勝利がボクシングスタイル(大振り)を間違った方向に向わせたのではないかという思いはある。
・戸高(2階級制覇チャンピオン、スーパーフライ級(2度防衛)、バンタム級(防衛なし))
・徳山(スーパーフライ級2回獲得(8度防衛、1度防衛)))
こうして見ていくと世界チャンピオンレベルでありながら穫れなかった選手は多い(今回あげた6人以外にも何人も思い浮かぶ)。その選手のスタイルにがっちり合えば世界チャンピオンになれたのだろうが、残念ながら世界チャンピオンとの相性が悪かったということも多かった。逆に言うとボクシングスタイルにもっと幅があれば穫れていたかもしれない。ただやはり世界チャンピオンの戦績を見てみると強いチャンピオンが多かった。運が無かったと言っても誰も文句は言わないだろう。
ボクシングマガジン 2013年 02月号 [雑誌] | |
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