⚪︎山中慎介vsスリヤン・ソールンビサイ⚫︎
山中慎介の7度目の防衛戦は1階級下のスーパーフライ級で世界チャンピオンになったタイのスリヤン。防衛戦を5連続KO勝利している山中には統一戦やビックネームとの対戦も噂されていたので、元世界チャンピオンとはいえ戦前からこの相手では物足りなさを感じていた。
おそらくテレビ局もKO勝利を見込んで番組延長を用意していなかったのだろう(判定勝利の番組最後はバタバタしていた)、自分を含めた多くのボクシングファンも「山中が何ラウンドに倒せるか?」と思って観ていたのではないだろうか。その思いは1ラウンド早々に修正する事になる。
開始早々からスリヤンの思い切り良い右パンチが山中の顔面をはねる。山中の手数も少なく、スリヤンに距離を潰されて山中がクリンチに逃げるシーンが多かった。これではジャッジの印象も悪く、4ラウンドの公開採点では1-0スリヤン有利と出た。
相性の悪さか、調整ミスか、打たれていないので激戦による劣化とは思わなかったがとにかく山中の動きが鈍い。スリヤンは圧力(プレッシャー)が強く、ワイルドなパンチでもキレがあり何度かヒヤリとするシーンもあった。そして頭が低い位置にあるので山中陣営はバッティングや頭を打って拳を痛めないかという心配もあったと思う。
低い頭にアッパーが有効かと思っていたが、この悪いペースを変えたのはやはり左だった。ちょっと強引に攻めてダウンを取った。突然訪れたここ一番のチャンス。すぐに攻めたい山中はレフリーがカウント中にコーナーから飛び出してレフリーから注意を受ける。その間10秒以上スリヤンを休ませてしまったのは残念(レフリーにも問題があったとは思うが)。
結局3度のダウンを奪って文句無しの判定勝利。もっと強引に行けばKO勝利もあったかもしれないが、とにかく勝てたという結果は安心した。内心このレベルの相手に負けるのではないかと終始ハラハラだった。もう7度も防衛していると1番の強敵は自分自身のモチベーションのように思う。安定王者のクリス・ジョンやカバジェロも格下に負けた。だから長谷川穂積がモンティエルを選んだように、西岡利晃がドネアに挑んだように、山中慎介には少しでも早くビックネームと対戦して欲しい。
ボクシングマガジン 2014年 11月号 [雑誌] | |
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そして皆が跳ね返された大きな壁を越えて欲しい。それが出来ると思うから。次戦に期待したい。