野球をやっている少年達を観て、ふと懐かしいことを思い出した。
小学生の頃、学校から帰ってきてランドセルを部屋に投げ入れ、友人の家の隣にあるちょうど一軒家四つ分の広さの草っぱらで野球をするのが僕らの日課だった。一人はバッター、一人はピッチャー、最後の一人は守備、たった三人だったが僕らは立派に野球をしていた。
そんなある日僕らにとって重要な事件が起こった。
おちゃらけてアンダースローで投げた本当に「スロー」な一投を、巨人の淡口の真似して尻を振った友人がフルスイングすると、「パキッ」っと枯れた音がなった。そう、皆で共同で使っていたバットが折れてしまったのだ。僕等は青空に向かって小さくなっていくボールは忘れ、まるで空手選手が足で折ろうとして完全に折きれなかったような半分だけ折れたバットに集まった。
「どうしよう」
「バットが無いと野球出来ないね」
三人は途方に暮れた。
それから数日が経った。僕等は野球ではなく家の中でボードゲームなんかをして遊んでいた。そんな時、折れたバットを持っていた友人が「バットが手に入りそう」と話しをしだした。聞いてみるとそれは三人が野球と同様夢中になっていたプロ野球チップス(野球選手のカードがおまけに付いたポテトチップス)で「当たりカード」が出て、ミニバットが当たるというのだ。僕等が使っていたのは一回り小さいバット、しかもプレゼント説明には「木製」と書いてある。全く問題無い。僕等はまた野球ができることを思い喜んだ。
それからまた数日が経ち、友達が「一応、バット届いたよ」と話した。「一応って何だよ」と意味もなく頭を一回叩いて、「じゃあ今日から野球再開、広場集合」と声をあげた。広場に着いてキャッチボールなどしてバットの登場を待っていた。友人の家のドアが開き「待ってました」と声をあげると、友人はちょうど両手に納まるほどの箱を持っていた。
そう、それはバットだった。ミニバット。大きさ20㎝。
僕等は大きな勘違いをしていたのだ。たかが30円のお菓子に大きな期待をしていたのだ。三人は顔を見合わせ笑った。大きな声で笑った。
その後またしばらくは野球が出来なかったが、一人がバットを買ったことで再開出来た。ミニバットはと言うとその後もう一本当たり二本になっていた。その後はよくわからない。
あの空き地はもう家が建って無くなったが、横を通ると今も思い出し、あの頃のように笑いそうになる。
小学生の頃、学校から帰ってきてランドセルを部屋に投げ入れ、友人の家の隣にあるちょうど一軒家四つ分の広さの草っぱらで野球をするのが僕らの日課だった。一人はバッター、一人はピッチャー、最後の一人は守備、たった三人だったが僕らは立派に野球をしていた。
そんなある日僕らにとって重要な事件が起こった。
おちゃらけてアンダースローで投げた本当に「スロー」な一投を、巨人の淡口の真似して尻を振った友人がフルスイングすると、「パキッ」っと枯れた音がなった。そう、皆で共同で使っていたバットが折れてしまったのだ。僕等は青空に向かって小さくなっていくボールは忘れ、まるで空手選手が足で折ろうとして完全に折きれなかったような半分だけ折れたバットに集まった。
「どうしよう」
「バットが無いと野球出来ないね」
三人は途方に暮れた。
それから数日が経った。僕等は野球ではなく家の中でボードゲームなんかをして遊んでいた。そんな時、折れたバットを持っていた友人が「バットが手に入りそう」と話しをしだした。聞いてみるとそれは三人が野球と同様夢中になっていたプロ野球チップス(野球選手のカードがおまけに付いたポテトチップス)で「当たりカード」が出て、ミニバットが当たるというのだ。僕等が使っていたのは一回り小さいバット、しかもプレゼント説明には「木製」と書いてある。全く問題無い。僕等はまた野球ができることを思い喜んだ。
それからまた数日が経ち、友達が「一応、バット届いたよ」と話した。「一応って何だよ」と意味もなく頭を一回叩いて、「じゃあ今日から野球再開、広場集合」と声をあげた。広場に着いてキャッチボールなどしてバットの登場を待っていた。友人の家のドアが開き「待ってました」と声をあげると、友人はちょうど両手に納まるほどの箱を持っていた。
そう、それはバットだった。ミニバット。大きさ20㎝。
僕等は大きな勘違いをしていたのだ。たかが30円のお菓子に大きな期待をしていたのだ。三人は顔を見合わせ笑った。大きな声で笑った。
その後またしばらくは野球が出来なかったが、一人がバットを買ったことで再開出来た。ミニバットはと言うとその後もう一本当たり二本になっていた。その後はよくわからない。
あの空き地はもう家が建って無くなったが、横を通ると今も思い出し、あの頃のように笑いそうになる。